倉庫
前書き
人は、
真実を知りたいと言う。
でも本当は違う。
知りたいのは、
自分が耐えられる真実だけだ。
耐えられない真実は、
誰だって見たくない。
今回は、
その扉を開ける話だ。
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Appearing
― 突然、君からのメッセージ ―
第30話
倉庫
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午後三時四十分。
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海鳴町。
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海沿い。
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立入禁止区域。
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錆びたフェンス。
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古い倉庫群。
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潮風。
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曇り空。
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夏の終わりの海は、
妙に静かだった。
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「……」
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誰も喋らない。
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さっきの言葉が。
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頭から離れなかった。
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『殺した人に会った』
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メアリーが言った。
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つまり。
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祭りの夜。
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ここで。
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何かがあった。
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「帰るか?」
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悠が聞く。
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初めてだった。
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本気で。
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引き返した方がいいと思った。
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だが。
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メアリーは首を振る。
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「……行く」
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小さな声。
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でも。
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はっきりしていた。
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「怖いけど」
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「行かなあかん」
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風が吹く。
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フェンスが軋む。
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「はぁ……」
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レイが頭を掻く。
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「完全に不法侵入なんだが」
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「帰る?」
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「今さら?」
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即答だった。
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「ここまで来て帰ったら後悔する」
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「だろうな」
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悠も頷く。
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フェンスの脇。
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昔からある穴。
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子供の頃。
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何度も侵入した。
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秘密基地。
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肝試し。
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冒険。
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そんな感覚だった。
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あの頃は。
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三人は中へ入る。
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草。
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コンクリート。
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錆びたコンテナ。
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崩れた壁。
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誰もいない。
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はずだった。
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「……」
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だが。
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妙だった。
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静かすぎる。
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鳥もいない。
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虫もいない。
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海の音だけ。
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遠くで聞こえる。
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「嫌な感じする」
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レイが呟く。
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珍しく。
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冗談じゃなかった。
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倉庫A棟。
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シャッター半開き。
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暗い。
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中は見えない。
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メアリーが止まる。
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「……ここ」
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震えていた。
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「覚えとる」
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悠の鼓動が速くなる。
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「中か?」
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「うん」
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ギィ……
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シャッターを押し上げる。
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暗闇。
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埃。
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潮の匂い。
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古い木箱。
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錆びた工具。
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何十年も放置された空間。
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そして。
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壁。
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そこに。
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かすかに残っていた。
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『MARY』
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英語。
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スプレー。
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落書き。
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「……」
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メアリーが固まる。
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「私や」
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「え?」
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「私が書いた」
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静寂。
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「なんで」
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「知らん……」
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「でも書いた」
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ゆっくり近づく。
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指でなぞる。
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涙が落ちる。
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そして。
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その瞬間だった。
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パァン!!
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どこかで大きな音。
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金属音。
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三人が振り返る。
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倉庫の奥。
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暗闇。
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誰もいない。
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はずなのに。
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「……」
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レイが顔をしかめる。
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「なぁ」
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「ん」
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「今」
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唾を飲む。
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「誰か走ったよな」
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悠も見た。
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気がした。
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黒い影。
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一瞬だけ。
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奥へ消えた。
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「追うな」
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悠が言う。
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即座に。
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「追わねぇよ」
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レイも同意した。
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当たり前だ。
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ホラー映画なら死ぬやつだ。
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その時。
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メアリーが倉庫の隅を見る。
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そこには。
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古い折り畳み椅子。
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錆びた机。
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そして。
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一冊のノート。
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「……」
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「なんだこれ」
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悠が拾う。
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表紙はボロボロ。
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だが。
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中は読める。
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200X年8月15日
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十二年前。
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祭りの日。
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悠の背筋が凍る。
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「おい……」
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レイも覗き込む。
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ページをめくる。
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そこには。
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何人もの名前。
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落書き。
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日記。
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そして。
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最後のページ。
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そこだけ。
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筆圧が異常に強かった。
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『逃げろ』
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三人が固まる。
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その下。
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さらに文字。
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『あいつはまだいる』
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空気が凍る。
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メアリーの顔色が変わる。
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「……あ」
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「メアリー!」
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頭を押さえる。
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呼吸が乱れる。
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涙。
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震え。
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そして。
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今までで一番鮮明な記憶。
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祭りの夜。
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倉庫。
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暗闇。
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誰かの声。
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『待って』
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振り返る。
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黒い影。
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逃げる。
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走る。
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海へ。
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そして。
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その直前。
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メアリーは。
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初めて顔を見た。
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「……っ!!」
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叫ぶ。
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悠が支える。
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「見えたのか!?」
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メアリーは震える。
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涙を流しながら。
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ゆっくり頷いた。
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「……知っとる人や」
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静寂。
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誰も動けない。
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「誰だ」
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悠が聞く。
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メアリーは唇を震わせる。
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そして。
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絞り出すように言った。
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「……嘘や」
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青ざめる。
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信じられないという顔。
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「そんなはずない」
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「だって」
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メアリーの声が震える。
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「その人……」
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「知り合いやった」
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後書き
第30話でした。
ここで第1章は大きく動きます。
今回のポイントは、
* 倉庫でメアリーの痕跡を発見
* 「逃げろ」という警告
* 犯人は見知らぬ人物ではない
* メアリーは顔を思い出した
という点です。
ただし。
まだ名前は出しません。
ここで名前を出すと早すぎる。
次回、第31話「海」。
メアリーが逃げた場所、
そして第1章最大の衝撃へ向かいます。




