写真
前書き
写真って不思議だ。
写した瞬間はただの記録なのに、
何年も経ってから見ると、
そこにいた人間の気持ちまで
閉じ込められている気がする。
笑顔。
景色。
空気。
そして時々、
写ってはいけないものまで。
今回は、
その写真の話だ。
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Appearing
― 突然、君からのメッセージ ―
第23話
写真
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午前一時二十分。
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雨。
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東神奈川。
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黒瀬悠の部屋。
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エアコンの音。
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窓を叩く雨。
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机の上には、
例の写真が置かれていた。
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海鳴町。
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夏祭りの日。
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悠。
レイ。
メアリー。
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そして。
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写真の端にいる黒い人影。
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「……」
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悠は写真を見つめていた。
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何度見ても。
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違和感がある。
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昨日。
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確かにもっと遠かった。
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気がする。
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「気のせいやろ?」
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メアリーが言う。
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だが声に自信がない。
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本人も分かっている。
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気のせいじゃないかもしれない。
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「……」
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悠はスマホを取り出した。
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写真を撮る。
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保存。
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拡大。
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人影部分。
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荒い。
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昔の写真だから当然だ。
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顔は分からない。
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でも。
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確かに。
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こちらを見ている。
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気がした。
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「やめて」
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メアリーが小さく言う。
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「ん?」
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「なんか嫌」
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「見られとる」
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その言葉に。
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悠も同意した。
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見ているのに。
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見られている。
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そんな感覚だった。
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その時だった。
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ピロン。
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スマホ。
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通知。
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悠の肩が跳ねる。
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知らない番号。
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まただ。
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『写真を捨てろ』
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短い文章。
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『最後の警告だ』
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悠は舌打ちした。
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「うぜぇな」
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「誰なん」
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「知らねぇ」
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本当に知らない。
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でも。
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段々分かってきている。
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この相手は。
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メアリーを知っている。
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海鳴町を知っている。
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そして。
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あの日を知っている。
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翌日
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午後三時。
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曇り。
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悠は珍しく休みだった。
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レイから連絡が来る。
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『暇』
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『出ろ』
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『拒否権なし』
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「なんなんだよ」
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「レイちゃんや」
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「分かる」
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十分後。
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駅前。
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レイが待っていた。
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スカジャン。
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缶コーヒー。
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いつもの顔。
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「お前顔やば」
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第一声がそれだった。
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「知ってる」
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「寝てないだろ」
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「まぁ」
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「アホ」
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レイは缶コーヒーを投げる。
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悠が受け取る。
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「サンキュ」
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「で?」
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「何があった」
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悠は少し迷う。
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だが。
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写真を見せた。
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レイは眉をひそめる。
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「なにこれ」
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「高校ん時」
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「懐かし」
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レイが笑う。
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「うわ」
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「メアリーじゃん」
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その名前が出た瞬間。
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悠は少し驚く。
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レイ自身は。
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まだメアリーがいることを知らない。
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だが。
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最近。
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やたら名前を口にするようになった。
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まるで。
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忘れていた記憶が
戻り始めているみたいに。
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「……なぁ」
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レイが写真を見る。
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「ん?」
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「この人誰?」
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悠の心臓が止まる。
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指差した先。
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黒い人影。
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「知らん」
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「……」
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レイの顔が曇る。
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「なんか」
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「嫌な感じする」
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風が吹く。
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駅前の雑踏。
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人の声。
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車の音。
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なのに。
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その瞬間だけ。
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妙に静かだった。
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「会ったことある気がする」
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レイが呟く。
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「え?」
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「分からんけど」
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「知ってる気がする」
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悠の背筋に冷たいものが走る。
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その時だった。
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「――あ」
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メアリー。
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駅前のベンチで固まっていた。
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顔色が真っ青だった。
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「メアリー!」
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悠が駆け寄る。
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「……写真」
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「え?」
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「写真撮った」
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呼吸が乱れている。
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「誰が」
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「分からん」
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「でも」
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頭を押さえる。
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「花火」
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「祭り」
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「海」
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「写真」
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そして。
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「逃げた」
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静寂。
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初めてだった。
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今までで一番。
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具体的な記憶。
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「誰から逃げた」
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悠が聞く。
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だが。
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メアリーは首を振る。
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「……思い出せん」
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涙が浮かんでいる。
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「ごめん」
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「もう少しやのに」
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その瞬間。
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悠は初めて思った。
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メアリーは。
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思い出したいんじゃない。
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本当は。
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思い出したくないんだ。
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でも。
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忘れたままではいられない。
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それが一番辛いんだ。
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夕暮れ。
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駅前の空は暗くなり始めていた。
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そして。
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遠くの歩道橋の上。
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黒いコート姿の誰かが。
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こちらを見ていた。
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ほんの一瞬。
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瞬きをした時には。
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もう消えていた。
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後書き
第23話でした。
今回は
「写真」
がテーマです。
そして大事なのは、
メアリーが初めて
「逃げた」
ことを思い出した点。
まだ犯人も事件も出てきません。
でも、
* 花火
* 写真
* 海
* 逃走
というピースが揃い始めています。
次回、
第24話「消える日」。
第1章後半の大きな転機になります。




