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Appearing ― 突然、君からのメッセージ ―  作者: 和泉發仙


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23/90

夏祭り

前書き


夏祭りって、


終わったあとに思い出す。


花火より。


屋台より。


誰と歩いたかを。


今回は、

まだ平和だった頃の話です。


そして少しだけ、

今の話でもあります。


⸻


Appearing


― 突然、君からのメッセージ ―


第22話


夏祭り


⸻


午前零時過ぎ。


⸻


東神奈川。


⸻


悠のアパート。


⸻


窓の外では雨が降っていた。


⸻


机の上。


⸻


写真。


⸻


知らない番号からのメッセージ。


⸻


『海へ行くな』


⸻


『思い出したら終わる』


⸻


悠は何度も見返していた。


⸻


「……」


⸻


気味が悪い。


⸻


だが。


⸻


それ以上に。


⸻


腹が立っていた。


⸻


「なんなんだよ」


⸻


誰か知らない奴に。


⸻


勝手に指図されるのが。


⸻


妙に腹立たしかった。


⸻


「悠ちゃん」


⸻


メアリーが小さく言う。


⸻


「ん」


⸻


「海鳴町行きたい」


⸻


悠は顔を上げる。


⸻


「今?」


⸻


「ううん」


⸻


少し笑う。


⸻


「いつか」


⸻


その顔は。


⸻


怖がっているようにも。


⸻


覚悟しているようにも見えた。


⸻


そして。


⸻


その瞬間。


⸻


記憶が繋がる。


⸻


⸻


十二年前


海鳴町


⸻


夏祭り当日。


⸻


夕方。


⸻


商店街。


⸻


提灯。


⸻


焼きそば。


⸻


たこ焼き。


⸻


かき氷。


⸻


子供たち。


⸻


浴衣。


⸻


町全体が浮かれていた。


⸻


「遅い!!」


⸻


悠は振り返る。


⸻


メアリーだった。


⸻


浴衣姿。


⸻


白地に青い朝顔。


⸻


髪を少しだけまとめている。


⸻


「……」


⸻


悠が固まる。


⸻


「なにその顔」


⸻


「いや」


⸻


「似合わねぇなって」


⸻


「最低」


⸻


メアリーが頬を膨らませる。


⸻


その後ろ。


⸻


「おー」


⸻


レイが現れる。


⸻


黒い浴衣。


⸻


髪を後ろで束ねている。


⸻


「珍しい」


⸻


悠が言う。


⸻


「なにが」


⸻


「女みたい」


⸻


「殺すぞ」


⸻


レイが即答する。


⸻


メアリーが爆笑する。


⸻


昔から。


⸻


この三人だった。


⸻


騒ぐメアリー。


⸻


口の悪いレイ。


⸻


その真ん中で困る悠。


⸻


変わらない。


⸻


ずっと。


⸻


そう思っていた。


⸻


⸻


現在


⸻


「……」


⸻


メアリーが写真を見つめる。


⸻


「レイちゃん綺麗やった」


⸻


「今もだろ」


⸻


「本人に言ったら殴られるやつや」


⸻


少し笑う。


⸻


だが。


⸻


次の瞬間。


⸻


笑顔が止まる。


⸻


「……あ」


⸻


悠が顔を上げる。


⸻


「どうした」


⸻


「花火」


⸻


「え?」


⸻


「花火見とった」


⸻


メアリーが呟く。


⸻


「祭りの日」


⸻


「海の近く」


⸻


悠の呼吸が止まる。


⸻


「思い出したのか」


⸻


「少しだけ」


⸻


メアリーは頭を押さえる。


⸻


「でも」


⸻


「途中から変なん」


⸻


窓の外。


⸻


雷が鳴る。


⸻


遠くで。


⸻


低く。


⸻


「変?」


⸻


「うん」


⸻


「なんか」


⸻


「誰か見とった」


⸻


部屋が静かになる。


⸻


「誰」


⸻


「分からん」


⸻


「でも」


⸻


メアリーの顔色が変わる。


⸻


「怖かった」


⸻


その時だった。


⸻


ピロン。


⸻


スマホ。


⸻


通知。


⸻


悠は反射的に見る。


⸻


知らない番号。


⸻


また。


⸻


『祭りを思い出すな』


⸻


背筋が凍る。


⸻


『次は止められない』


⸻


「……」


⸻


今までで一番。


⸻


嫌な文面だった。


⸻


メアリーも見ている。


⸻


青い顔。


⸻


震える指。


⸻


「悠ちゃん」


⸻


「ん」


⸻


「私」


⸻


小さく呟く。


⸻


「誰かに追いかけられとった」


⸻


空気が止まる。


⸻


初めてだった。


⸻


記憶が。


⸻


ここまで具体的に出たのは。


⸻


「どこで」


⸻


「分からん」


⸻


「でも」


⸻


「夜」


⸻


「祭りのあと」


⸻


「海の方」


⸻


窓の外で。


⸻


雷が光る。


⸻


その一瞬。


⸻


悠は気づく。


⸻


机の上の写真。


⸻


三人の後ろ。


⸻


黒い人影。


⸻


昨日より。


⸻


少し近づいている。


⸻


「……は?」


⸻


悠が写真を掴む。


⸻


見間違いか。


⸻


光の加減か。


⸻


だが。


⸻


確かに。


⸻


昨日より近い。


⸻


気がした。


⸻


メアリーも気づく。


⸻


顔が青くなる。


⸻


「悠ちゃん」


⸻


「……」


⸻


「これ」


⸻


誰も続きを言えなかった。


⸻


後書き


第22話でした。


今回は


夏祭り編


です。


まだ青春回想です。


でも、


* 花火

* 浴衣

* 海

* 祭りのあと


というキーワードが揃い始めました。


そしてメアリーは初めて、


「追われていた」


ことを思い出します。


ただしまだ、


犯人も事件も出しません。


怖いのは、


“思い出していくこと”


そのものです。


次回、

第23話「写真」。


写真の違和感が、

さらに大きくなっていきます。

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