↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Appearing ― 突然、君からのメッセージ ―  作者: 和泉發仙


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/90

海鳴町

前書き


思い出って不思議だ。


楽しかったことほど、

細かい部分は忘れていく。


でも。


本当に怖かったことは、

忘れたつもりでも消えてくれない。


匂い。


音。


景色。


心のどこかで、

ずっと残り続ける。


今回は、

少しだけ昔へ戻る話です。


⸻


Appearing


― 突然、君からのメッセージ ―


第21話


海鳴町


⸻


夜。


⸻


雨。


⸻


窓ガラスを叩く音。


⸻


悠は机の前に座っていた。


⸻


写真。


⸻


海。


防波堤。


メアリー。


レイ。


高校時代。


⸻


そして。


⸻


写真の端。


⸻


黒い人影。


⸻


「……」


⸻


部屋は静かだった。


⸻


レイは帰った。


⸻


メアリーも珍しく黙っている。


⸻


写真を見てからずっとだ。


⸻


「……思い出せそうか?」


⸻


悠が聞く。


⸻


メアリーは写真を見つめる。


⸻


「ちょっとだけ」


⸻


小さく答える。


⸻


「でも」


⸻


「飛び飛びなん」


⸻


「夢みたい」


⸻


窓の外で雷が光った。


⸻


その瞬間。


⸻


海の匂いがした。


⸻


気がした。


⸻


「……海鳴町」


⸻


メアリーが呟く。


⸻


「夏やった」


⸻


「うん」


⸻


「高校二年」


⸻


「たぶん」


⸻


悠も覚えている。


⸻


あの頃。


⸻


毎日のように集まっていた。


⸻


海沿い。


⸻


ゲームセンター。


⸻


防波堤。


⸻


コンビニ。


⸻


どこにでもいる高校生だった。


⸻


未来があると思っていた。


⸻


⸻


富山県


海鳴町


十二年前


⸻


夕方。


⸻


海風。


⸻


防波堤。


⸻


高校生の悠が座っている。


⸻


まだ痩せていた。


⸻


髪も少し長い。


⸻


「おーい!!」


⸻


聞き慣れた声。


⸻


振り返る。


⸻


メアリーだった。


⸻


制服。


⸻


金髪。


⸻


リュック。


⸻


全力疾走。


⸻


「遅い!!」


⸻


「お前が早すぎるんだろ」


⸻


「違うもん」


⸻


「悠ちゃんが遅い」


⸻


「理不尽だな」


⸻


笑う。


⸻


その後ろ。


⸻


「暑っ……」


⸻


レイが歩いてくる。


⸻


まだバイク免許もない。


⸻


普通の女子高生。


⸻


「アイス買って」


⸻


「なんで」


⸻


「暑い」


⸻


「自分で買え」


⸻


「ケチ」


⸻


そんな会話。


⸻


今思えば。


⸻


何でもない時間だった。


⸻


でも。


⸻


その何でもない時間が。


⸻


一番大事だった。


⸻


⸻


現在


⸻


メアリーが静かに笑った。


⸻


「レイちゃん昔から変わっとらん」


⸻


「確かにな」


⸻


「アイスばっか食べとった」


⸻


「今もだろ」


⸻


二人が少し笑う。


⸻


だが。


⸻


次の瞬間。


⸻


メアリーの笑顔が止まる。


⸻


「……あれ」


⸻


「ん?」


⸻


「誰か」


⸻


悠の身体が強張る。


⸻


「誰」


⸻


メアリーは写真を見る。


⸻


防波堤。


⸻


海。


⸻


三人。


⸻


そして。


⸻


奥。


⸻


黒い影。


⸻


「この人」


⸻


「見たことある」


⸻


部屋の空気が変わる。


⸻


悠はゆっくり立ち上がる。


⸻


「誰なんだ」


⸻


「分からん」


⸻


「でも」


⸻


メアリーの顔が青くなる。


⸻


「嫌な感じする」


⸻


「すごく」


⸻


「嫌」


⸻


その時。


⸻


ピロン。


⸻


スマホ。


⸻


通知。


⸻


悠の呼吸が止まる。


⸻


知らない番号。


⸻


まただ。


⸻


新しいメッセージ。


⸻


『海へ行くな』


⸻


静寂。


⸻


雨音。


⸻


エアコンの音。


⸻


誰も喋らない。


⸻


『思い出したら終わる』


⸻


悠は画面を見つめる。


⸻


「……ふざけんな」


⸻


小さく呟く。


⸻


だが。


⸻


怒りよりも。


⸻


恐怖よりも。


⸻


別の感情が湧いていた。


⸻


知りたい。


⸻


という感情だった。


⸻


メアリーはなぜ死んだのか。


⸻


なぜ戻ってきたのか。


⸻


誰がメッセージを送っているのか。


⸻


そして。


⸻


写真の端にいる人間は誰なのか。


⸻


「……悠ちゃん」


⸻


メアリーが小さく言う。


⸻


「ん」


⸻


「私」


⸻


少しだけ笑う。


⸻


でも。


⸻


どこか寂しそうだった。


⸻


「思い出したい」


⸻


風が吹く。


⸻


窓が少し揺れる。


⸻


「怖いけど」


⸻


「知りたい」


⸻


悠は何も言わなかった。


⸻


ただ。


⸻


写真を見つめる。


⸻


海鳴町。


⸻


あの夏。


⸻


全部は。


⸻


まだ終わっていなかった。


⸻


後書き


第21話でした。


ここからは


「青春回想編」


が少しずつ始まります。


今はまだホラーですが、


同時に


* 高校時代

* 海鳴町

* 三人の関係

* 夏の思い出


も掘り下げていきます。


そして今回のポイントは、


「海へ行くな」


という新しいメッセージ。


誰が送っているのか。


守ろうとしているのか。


それとも隠そうとしているのか。


まだ分かりません。


次回、

第22話「夏祭り」。


海鳴町の思い出が、

もう少しだけ鮮明になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。