見え始める
前書き
怖いものには、
二種類ある。
見える怖さと。
見えない怖さ。
そして大抵の場合、
本当に厄介なのは後者だ。
今回は、
少しだけその境界線が曖昧になる。
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Appearing
― 突然、君からのメッセージ ―
第20話
見え始める
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翌日。
午後六時四十分。
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横浜駅西口。
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雨は止んでいた。
だが空は重い。
灰色。
湿気。
夕焼けも見えない。
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黒瀬 悠は、
駅前の人混みから少し外れた場所に立っていた。
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「……」
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眠い。
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三時間しか寝ていない。
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写真。
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知らない番号。
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窓の外の影。
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全部が頭から離れなかった。
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「おーい」
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聞き慣れた声。
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レイだった。
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黒スカジャン。
黒Tシャツ。
ジーンズ。
いつもの格好。
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「お前顔やば」
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「知ってる」
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「ゾンビじゃん」
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「元からだろ」
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「いや今日は上位ゾンビ」
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レイが笑う。
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だが。
今日は少し違った。
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どこか落ち着かない。
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妙に周囲を見ている。
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「……どうした」
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「ん?」
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「いや」
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レイは少し言いにくそうに頭を掻いた。
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「変なこと言うけど」
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「言うな」
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「まだ何も言ってねーだろ」
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悠は少し笑う。
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久しぶりに自然な笑いだった。
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「昨日さ」
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レイが真面目な顔になる。
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「帰り道」
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「なんか見た」
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悠の呼吸が止まる。
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「……何を」
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「分かんね」
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「でもさ」
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「誰か立ってた」
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風が吹く。
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駅前の雑踏。
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人はたくさんいる。
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なのに。
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妙に静かだった。
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「どこ」
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「アパート近く」
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「お前ん家の前」
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悠の背筋が冷える。
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「……」
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「気のせいだと思ったんだけど」
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レイは視線を落とす。
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「今日も見た」
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「は?」
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「さっき」
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「駅の向こう」
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悠は思わず振り返る。
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横断歩道。
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雑居ビル。
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人混み。
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誰もいない。
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「……どんな奴」
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「黒い服」
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「背高い」
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「顔分からん」
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完全に一致していた。
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昨日。
窓の外。
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写真の端。
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同じ。
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「……なぁ」
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レイが小さく言う。
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「なんか知ってる?」
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「……」
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言えるわけがない。
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幽霊が見える。
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死んだ女の子がいる。
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意味不明すぎる。
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「知らね」
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「嘘だろ」
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「知らねぇ」
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レイはしばらく黙る。
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その時。
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「レイちゃん」
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メアリーが呟いた。
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「え?」
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悠が振り返る。
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メアリーが固まっていた。
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「どうした」
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「今」
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「今こっち見た」
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空気が凍る。
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「誰が」
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「……分からん」
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「でも」
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「私のこと見とった」
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悠の喉が鳴る。
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メアリーは震えていた。
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昨日までの恐怖とは違う。
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もっと直接的な。
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獲物が見つかった時みたいな恐怖。
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「……帰るぞ」
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悠が言う。
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「おう」
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レイも珍しく反対しなかった。
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三人は駅前を離れる。
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夕暮れ。
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商店街。
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スーパー。
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パン屋。
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昔ながらの町並み。
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本来なら安心する景色。
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でも今日は違った。
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どこへ行っても。
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誰かに見られている気がする。
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その時だった。
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「あれ?」
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レイが立ち止まる。
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「ん?」
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「今さ」
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「金髪の子いなかった?」
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悠の心臓が止まる。
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「……は?」
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レイは後ろを見る。
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「一瞬だけ」
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「女の子」
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「お前の横」
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メアリーも固まる。
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「……見えた?」
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小さな声。
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レイには聞こえない。
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だが。
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レイは真顔だった。
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「いや」
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「見えたっていうか」
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「なんか居た気がした」
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悠は何も言えなかった。
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メアリーが。
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少しずつ。
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こちら側へ近づいている。
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その代わり。
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何かもまた。
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近づいている。
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夜。
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アパート。
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帰宅した悠は写真を机に置く。
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例の写真。
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高校時代。
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海。
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三人。
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そして。
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写真の端。
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黒い人影。
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その時だった。
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メアリーが小さく呟く。
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「……あ」
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「ん?」
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メアリーの顔色が変わる。
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「この場所」
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「知っとる」
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悠が立ち上がる。
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「どこだ」
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メアリーは写真を指差す。
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防波堤。
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海鳴町の海。
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そして。
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写真の奥。
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立入禁止になっている古い倉庫群。
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「ここ……」
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「私……」
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そこで言葉が止まる。
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頭を押さえる。
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呼吸が乱れる。
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「メアリー!」
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「ごめん……」
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「思い出せん……」
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「でも」
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「ここ」
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「すごく嫌」
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窓の外で雷が鳴った。
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第1章の終わりが。
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少しずつ近づいていた。
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後書き
第20話でした。
今回は
「レイが異変を感じ始める」
回です。
まだ完全には見えていません。
でも、
* 声
* 気配
* 人影
を認識し始めています。
そしてメアリーは初めて、
海鳴町の倉庫群
を思い出しました。
第21話からは、
いよいよ富山の回想が増え始めます。
青春の記憶と、
隠された恐怖。
その両方が少しずつ繋がっていきます。




