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【連載版】人手不足で過労の俺、異世界では”要領の良さ”を活かします。  作者: なまこ


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ジョブ別講習

黒田がアタッカー講習の様子を見に行くと、

銀髪を揺らしながらアリシェラが新人たちの前で剣を構えていた。


その姿は、いつものなんでも屋の彼女とはまるで違う。

鋭い眼差し、無駄のない動き――まさにAランク冒険者の風格だった。


黒田は思わず声をかけた。


「アリシェラさん……講師として来るなら、前もって教えてくださいよ。心の準備ができてなかったです」


アリシェラは剣を肩に担ぎ、ふっと笑った。


「え〜? 別にいいじゃない。黒田なら驚いてもすぐ慣れるでしょ?」


「いや、慣れますけど……Aランクって聞いてないですし」


「最近は冒険者活動してなかったからね。でも、こういう場ならちょっとは役に立てるかなって思ってさ」


アリシェラは軽く剣を振り、銀髪が朝日にきらめいた。


「ほら、ちゃんと見てなさいよ?私、これでも新人の頃は“銀閃のアリシェラ”って呼ばれてたんだから」


黒田は呆然としたまま頷いた。


(……本当にすごい人だったんだな)


アリシェラは新人たちへ声を張る。

「まずは構え! 剣は振り回すんじゃなくて、扱うものよ!」


新人たちが慌てて姿勢を整える。

黒田はその様子を見守りながら、次の講習へ向かった。


タンク講習の区画では、ドワンが新人たちの前で腕を組んでいた。

ずんぐりした体格、広い肩幅、鎧の上からでも分かる筋肉。

髭を蓄え、まるでドワーフのような雰囲気だ。


「タンクは仲間の盾だ!まずは“踏ん張り”を覚えろ!地面を掴むように立つんだ!」


新人たちは必死に足を広げ、姿勢を整える。


ドワンは黒田に気づくと、豪快に笑った。

「おう、見学か! タンクは地味だが一番大事だぞ!」


黒田は頷いた。

「確かに……守る役割って重要ですよね」


「そうだ!攻撃より防御が先だ!新人にはまず“倒れない体”を作らせる!」


その言葉に新人たちが気合を入れ直す。

黒田はその様子を見て、タンクの重要性を改めて感じた。


次に黒田はヒーラー講習へ向かった。

金髪のロングヘアーを揺らすセリスが、白いローブをまとい、優しい声で新人たちに語りかけていた。


「治癒魔法は焦らず、ゆっくり。心を落ち着けることが一番大切です。魔力は“癒したい”という気持ちに反応しますからね」


新人たちは目を閉じ、深呼吸を繰り返している。


黒田はその穏やかな雰囲気に思わず息を吐いた。

(ヒーラーは本当に癒し系なんだな……)


セリスは黒田に気づき、柔らかく微笑んだ。

「見学ですか? どうぞ、ゆっくり見ていってくださいね」


黒田は軽く会釈した。

「ありがとうございます。とても落ち着く講習ですね」


「ふふ、そう言っていただけると嬉しいです」


最後に黒田はメイジ講習へ向かった。

赤毛の爽やかな青年――レオンが新人たちの前で杖を掲げていた。


「魔力は押し出すのではなく、通すものです。まずは体の中の魔力の流れを感じて“魔弾”を放ってみましょう」


新人たちは目を閉じ、集中している。


その中に、一人の少女がいた。

肩までの赤髪、炎のような瞳。

少女は真剣なまなざしで講師の話を聞いていた。


黒田はその少女の横に立ち、声をかけた。

「調子はどうですか?」


少女は振り向き、少し照れながら微笑んだ。

「まだ少し緊張してますが、楽しいです」


黒田は頷き、少しだけ笑った。

「そうですか。楽しめているなら何よりです」


少女は思い出したように姿勢を正した。

「私、アリサっていいます。炎属性のメイジ志望です」


黒田も軽く会釈した。

「黒田です。よろしくお願いします、アリサさん」


アリサは嬉しそうに微笑んだ。

「こちらこそ、黒田さん」


黒田はふと気になって尋ねた。

「魔弾はもう撃てるんですか?」


アリサは小さく頷き、杖を構えた。

「新人でも魔弾くらいは撃てますよ。ほら、見ててください」


杖の先に赤い光が集まり――


「ファイアーボール!」


小さな炎の弾が草原の的へ飛び、ぱちんと音を立てて弾けた。


黒田は思わず息を呑んだ。

「すごい……」


アリサは照れたように笑い、黒田の腕を指さした。

「黒田さんは、まだ覚醒していないんですよね?」


「ええ。魔弾どころか、魔力の流れもよく分からなくて」


アリサは自分の腕を見せた。

そこには赤い花びらのような紋章が浮かんでいる。


「覚醒すると、こうやって紋章が出るんです。紋章が魔力の通り道になって、魔弾が撃てるようになります。魔法は魔力の流れやすい杖や掌から放つのが一般的です」


黒田は興味深そうに見つめた。

「紋章って……属性ごとに違うんですか?」


「はい。私は炎属性なので赤い紋章です。氷なら青、雷なら黄色……色でだいたい分かります」


アリサは少しだけ声を落とした。

「黒田さんが覚醒したら、どんな紋章が出るんでしょうね。楽しみです」


黒田は苦笑した。

「僕は魔力が高いらしいんですが……魔弾すら撃てないんですよ」


アリサは優しく首を振った。

「覚醒前はそんなものです。紋章が出たら、魔弾は自然に形になりますよ」


アリサは続けた。

「魔弾は“属性の形”がそのまま出るんです。炎ならファイアボール、氷ならアイスランス……黒田さんの属性が分かれば、魔弾の形も分かります」


黒田はふと、自分の胸の奥に重たい何かを感じた。

(もし自分が覚醒したら……どんな魔弾が出るんだろう)


アリサは明るく笑った。

「きっと黒田さんの魔弾、すごいですよ。魔力が高い人は、魔弾も強いですから」


黒田はその言葉に少し勇気づけられた。


アリサは再び集中し始めると、黒田はその横で静かに見守った。

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