新人冒険者研修
二週間後。
朝の光が差し込む草原に、簡易テントと訓練用の魔道具が並べられていた。
ギルドの旗が風に揺れ、周囲には緊張した面持ちの新人冒険者たちが集まっている。
黒田は資料の束を抱えながら、深呼吸した。
(いよいよ今日から新人研修か……)
隣でリーネが明るく微笑む。
「黒田さん、準備は完璧ですね。今日の進行は私が担当しますので、見守っていてください」
「頼りにしてます」
リーネは胸の前で手を組み、草原の中央へ歩み出た。
新人たちの視線が一斉に彼女へ向く。
「皆さん、おはようございます!新人冒険者研修の進行を務めますリーネです。まずはジョブ別講習を行い、その後はチーム講習を予定しています。」
リーネは表情を和らげ、横に立つ黒田へ視線を向けた。
「そしてこちらが、今回の研修をサポートしてくださる黒田さんです」
黒田は前に出て、軽く頭を下げた。
「今回、新人冒険者研修をサポートします黒田です。自分もまだ新人なので、皆さんと同じ立場で学びながら成長できればと思っています。本日はよろしくお願いします」
黒田の挨拶が終わるとリーネは少し表情を引き締めた。
「魔物はもちろんですが、最近は魔物以外の危険も増えています。特に――若い女性の焼死体が見つかる事件が続いています。」
新人たちがざわつく。
「だからこそ新人の皆さんには、外の世界に対応できる基礎力を身に着けてほしいのです!」
真剣なリーネの表情は少し和らいだ。
「皆さんが安心して冒険者として歩き出せるよう、私たちも全力で支えます。それでは、講師の方々をご紹介しますね」
◆
声が草原に響き、空気が引き締まる。
リーネが手を向けると、赤毛の青年が歩いてきた。
爽やかな笑顔、整った顔立ち、背筋の伸びた姿勢。
まるで優秀な若手社員のような雰囲気だ。
「まずはメイジ講師、レオンさんです!」
レオンは軽く杖を掲げ、柔らかく微笑んだ。
「魔力は怖いものではありません。正しく扱えば、皆さんの力になります。今日は“魔力の流れを感じる”ところから始めましょう」
新人たちから感嘆の声が漏れる。
「優しそう……」
「教え方うまそう……」
黒田はその様子を見て、素直に感心した。
(見た目も雰囲気も完璧な講師だな……)
◆
次に、金髪のロングヘアーを揺らしながら女性が歩いてきた。
白いローブをまとい、落ち着いた雰囲気を纏っている。
「ヒーラー講師、セリスさんです!」
セリスは柔らかく微笑み、両手を胸の前で組んだ。
「治癒魔法は“心を落ち着けること”が第一です。焦らず、ゆっくり学んでいきましょうね」
新人たちが安心したように頷く。
「美しい……」
「癒し系だ……」
黒田も思わず頷いた。
(ヒーラーはこういう雰囲気の人が向いてるんだな)
◆
次に、ずんぐりとした体格の男性が歩いてきた。
背は低いが肩幅が広く、筋肉が鎧の上からでも分かる。
髭を蓄え、どこかドワーフのような雰囲気だ。
「タンク講師、ドワンさんです!」
ゴルドは胸を叩き、豪快に笑った。
「タンクは“仲間を守る”のが仕事だ!今日は防御姿勢と踏ん張り方を叩き込んでやるから覚悟しろ!」
新人たちが少し怯えたように笑う。
「こわ……でも頼りになりそう」
「タンクって感じだな……」
黒田は苦笑した。
(見た目も声も説得力がすごい……)
◆
リーネは最後に、草原の奥へ向けて手を広げた。
「そして最後に――アタッカー講師の方です!」
風が吹き抜ける。
銀髪が光を反射し、草原の向こうから一人の女性が歩いてきた。
軽装の鎧、鋭い眼差し、しなやかな動き。
その姿を見た瞬間、黒田は息を呑んだ。
「アリシェラさん……?」
リーネが嬉しそうに頷く。
「はい!アタッカー講師はアリシェラさんです!」
黒田は思わず声を上げた。
「アリシェラさんって……Aランクだったんですか!?」
アリシェラは肩をすくめ、軽く笑った。
「なんでも屋になる前は冒険者活動をしていたの。言ってなかったっけ?」
黒田は呆然とした。
(なんでも屋のアリシェラさんが……Aランク……?そりゃ強いとは思ってたけど……)
アリシェラは剣を軽く掲げ、爽やかに言った。
「新人さんたち、よろしくね!今日は“武器の持ち方”から教えるわ!」
新人たちが歓声を上げる。
「かっこいい……!」
「絶対強い……!」
黒田は胸の奥に小さな誇らしさを感じた。
(すごい人と一緒に仕事してたんだな……)
こうして、頼りになる講師と新人冒険者が揃い、
期待と不安の新人研修が始まった。




