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【連載版】人手不足で過労の俺、異世界では”要領の良さ”を活かします。  作者: なまこ


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資金調達

適性検査が終わり、黒田とアリシェラはギルドの椅子で一休みしていた。

「この後はどうするの?」


黒田は腕を組みながら、少し考えるように空を見上げた。

「問題は山積みですが……とりあえず資金問題を解決したいです」


アリシェラは首をかしげる。

「資金なら、今のままで十分だと思うけど?」


黒田はゆっくり首を振った。

「いまのままでは人手が足りません。自分は戦闘力がないので、実質動けるのはアリシェラさんだけ。

最低でもあと一人、動ける人材が欲しいですね」


アリシェラは「あー……」と納得したように頷いた。

「そっか。確かに二人じゃ限界あるよね。一応私は冒険者登録しているから、ギルドの依頼を受けられるよ」


黒田は少しだけ表情を明るくした。

「それなら、戦闘系の依頼を複数受けて、短期で稼ぎましょう。その間に、僕は……頭を使う仕事を探します」


アリシェラは笑った。

「黒田に戦闘は難しいもんね。じゃあ私は依頼票見てくる!」


黒田も笑い返す。

「お願いします。僕はリーネさんに相談してみます」


ギルドに戻ると、受付は静かだった。

しかし、リーネの机の上には依頼票が山のように積まれている。

彼女は一人で書類をめくりながら、忙しそうにペンを走らせていた。


黒田はそっと近づき、声をかけた。

「リーネさん、少し相談したいことがあって来ました」


リーネは手を止め、顔を上げて柔らかく微笑んだ。

「どうされましたか?」


黒田は机の上の依頼票の山を見ながら言った。

「僕は戦闘ができないので、頭を使う仕事を探しているんです」


リーネは一瞬だけ驚いたように目を見開き、胸の前で書類を抱え直した。

「実は、人手不足で……処理が追いつかなくて……黒田さんが良ければギルドで働いてみませんか?もちろん“依頼”としてお願いしたいです」


黒田は思わず身を乗り出した。

「本当ですか!?一応自分は“なんでも屋”なので、ずっと働くことはできませんが……短期間で良ければお願いしたいです!」


リーネは慌てて両手を振った。

「もちろん短期間でも構いません!黒田さんに手伝ってもらえれば百人力です!」


黒田は力強く頷いた。

「では、ぜひお願いします!」


リーネはほっとしたように肩の力を抜き、微笑んだ。

「では、まずは依頼票の整理をお願いできますか?種類ごとに分けて、危険度順に並べたいんです」


黒田は机の山を見て、口元を引き締めた。

「任せてください!」


黒田は依頼票の束を手に取り、静かに息を整えた。

単純作業――分類、仕分け、並べ替え。

会社にいた頃、何度もやってきた仕事だ。


だが、そのたびに思い出すことがある。


(単純作業は、いかに早くこなすかがポイントだ。効率化を求めるあまり、逆に時間がかかったこともあったな……)


プロジェクトリーダーになる前、黒田は“効率厨”だった。

作業を早くするために手順を見直し、道具を変え、並び順を変えるなど改善を図った。


結果――

効率化のための準備に時間を使いすぎて、

本来の作業が遅れるという本末転倒を何度も経験した。


(あの頃は、効率化そのものが目的になっていた……)


黒田は依頼票を一枚めくり、静かに微笑んだ。


(でも今は違う。まずはリーネさんの負担を減らすことだ。効率化はその後でいい。)


その意識の違いが、黒田の手を軽くした。


分類基準は最低限。

並び順は必要なものだけ。

余計な改善はしない。

“今すぐ役に立つこと”だけに集中する。


黒田の手は、まるで流れるように依頼票を仕分けていく。


「……この依頼は危険度が高いのに初心者向け棚に入ってるな」

黒田は小さく呟き、別の束へ移した。


リーネはその様子を見て、目を丸くした。

「黒田さん、手際がいいですね」


「単純作業は、迷わないことが大事なんです。分類基準を決めたら、あとは流れ作業でいけます」


黒田は机の端に簡単な分類表を置いた。

必要最低限の情報だけをまとめた、シンプルな表だ。


リーネはその表を見て、感嘆の声を漏らした。

「すごい……これなら私でも迷わず並べられます」


「迷う時間が一番のロスですからね。単純作業は“迷わない仕組み”を作るのが一番効率的なんです」


黒田は淡々と作業を続ける。

依頼票の山は、みるみるうちに整っていく。


リーネは胸の前でそっと手を組み、嬉しそうに黒田を見つめた。

「黒田さん……本当に助かります。こんなに早く終わるなんて……」


黒田は少し照れたように頬をかきながら笑った。

「いえ、僕がやっているのは“仕組みづくり”だけです。あとは誰でもできますよ」


その日のうちに、黒田は依頼票の整理をすべて終わらせた。


リーネは机の引き出しから小さな袋を取り出し、両手で丁寧に差し出す。

「本日はありがとうございました。こちらが今日の分のお給料になります」


黒田は受け取り、袋の口を少し開いた。

中には銀貨がぎっしりと詰まっている。


「いいんですか!?こんなに!?」


リーネは優しい笑顔を向けた。

「もちろんです。私と同じ働きをしているわけですから。また明日もよろしくお願いしますね!」


黒田は深く頭を下げた。

「こちらこそよろしくお願いします」


ギルドを出ると、夕方の柔らかい光が街を照らしていた。

黒田は銀貨の重みを感じながら、なんでも屋へと足を運ぶ。


なんでも屋へ戻ると、アリシェラが玄関で出迎えてくれた。


「おかえり、黒田。私一人でこなせそうな討伐依頼をいくつか受注したわ」


黒田は頷き、銀貨の袋を軽く持ち上げた。

「ありがとうございます。僕はしばらくギルドで働くことになりました」


アリシェラは目を丸くし、口角を少し上げた。

「へえ~黒田がギルドで仕事ね~。なんでも屋はどうするのかしら?」


黒田は慌てて誤解を解く。

「依頼として働くだけですよ」


アリシェラは満足そうに笑い、黒田の肩を軽く叩いた。

「なら安心ね。黒田らしい働き方じゃない」


二人は、その夜、それぞれの明日の仕事について語り合った。

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