第三十話 代償
《転送しますか?》
浮かんだ文字は、ひどく静かだった。
黒樹龍の残骸から流れる樹液の匂いも、メイが喉奥の器官を欲しがる低い音も、マシロが澪の左腕を包んで戻そうとする感触も、遠くなっていく。胸の奥で切れたものだけが、残っていた。
澪は文字を見つめたまま、息を吸った。
喉が動かない。
朱音先輩?
呼ぼうとして、声にならない。さっきまで胸元の端末越しに聞こえていた声。帰ってきたら話があると言った声。怒っていた。心配していた。いつもみたいに、澪の方へ手を伸ばしてくる声だった。
それが、ない。
「……行く」
澪は震える指で、空中の文字へ触れた。
《承認されました》
世界が落ちた。
転移の感覚とは違う。自分で座標を掴んで跳ぶ時の軽さがない。胸の奥で切れた糸ごと引っ張られ、狭い穴へ無理やり通されるような感覚だった。黒い森が白く潰れ、龍の残骸も、根も、花も、黒緑の霞も、すべて背後へ剥がれていく。
次の瞬間、澪は白い墓標の上に立っていた。
第一層第九環《空葬原》。
白い大地。青く割れた空。磨かれた骨のような墓標群。遠くに流れる光の帯。どこまでも美しく、どこまでも冷たい場所。澪が一年近く彷徨い、死にかけ、這い回り、空腹と痛みを覚え、何度も何度も戻れない夜を越えた場所。
目の前に、魔物の群れがいた。
骨の鳥。白い鹿。墓標の影から這う細い獣。胸に鐘を抱いた小さな人型。魔物たちは輪を作るように、ひとつの場所を囲んでいた。
そこに、味方はいなかった。
黒鉄の隊員も、協会職員も、救助対象の探索者たちもいない。帰ったのだと、澪は分かった。朱音が帰した。最後の最後に、押し出した。守った。だから、この白い場所に残っているのは、朱音だけだった。
奥には、白い鯨がいた。
空葬原の上を泳ぐ巨大な影。リポップしたのだろう。白い身体に青白い裂け目をまとい、墓標群の上をゆっくり進んでいる。距離は遠い。けれど、空葬原の距離は信用できない。白鯨の圧だけが、もう近くにあった。
そして、澪のすぐ横に朱音がいた。
倒れてはいなかった。
膝をつき、両手を前へ突き出した姿勢のまま止まっている。細い指先の先には、壊れかけた白い光の壁があった。翼を広げたような形の防壁。薄い羽根のような光が何枚も重なり、朱音の前方に半透明の盾を作っていたのだろう。けれど、その中央には大きな穴が開いていた。
貫かれている。
防壁も、朱音も。
白い光の羽根は、ひび割れたまま空中に残っていた。美しい。あまりにも美しい残骸だった。朱音の背中には、いつもは見えない淡い翼の輪郭がうっすら残り、そこから光の粒が少しずつ剥がれている。両手を突き出したまま、誰かを守る形で、朱音は死んでいた。
白い防護外套の胸元から、赤が流れている。赤はすでに白い地面へ広がり、墓標の欠片を濡らしていた。
朱音は息をしていなかった。
澪は、それを見た。
「……朱音先輩?」
返事はない。
骨の鳥が澪へ飛びかかる。
澪は見ていない。
メイの鎖が動いた。青白い軌跡が空を裂き、骨の鳥を鐘ごと砕く。続けて白い鹿の首が落ちる。墓標の影から伸びた細い獣は、メイの網をすり抜けた瞬間、マシロの白い裾に触れて灰になった。小さな人型が胸の鐘を鳴らす前に、メイの刃が音ごと断つ。
澪は朱音だけを見ていた。
「なんで」
声が落ちる。
「なんで、ひとりなの」
朱音は答えない。
澪は一歩近づいた。膝がうまく動かない。さっきまで黒樹龍と戦っていた身体が、急に重かった。心臓が変な音を立てている。胸の奥で、切れたものが冷たくぶら下がっている。
朱音の前に膝をつく。
触れるのが怖かった。
触れたら、本当に死んでいると分かってしまう気がした。もう分かっているのに。息がない。鼓動もない。熱が抜けている。分かっている。分かっているのに、澪は数秒、手を伸ばせなかった。
魔物がまた来る。
今度は群れだった。白い鹿が三体。骨の鳥が五体。小さな鐘を抱いた人型が墓標の影から走る。澪は聞いていない。見てもいない。
メイが鳴る。
鎖が広がる。
一瞬で、周囲の魔物が消えた。
斬ったというより、空葬原の白い景色から抜き取られたようだった。墓標だけが残り、魔物の形は崩れて光の粒になる。澪は振り向かない。
奥から、白鯨の魔力が降った。
青白い雨のような光だった。墓標を砕き、地面を抉り、空葬原の距離ごと澪を押し潰すはずの魔法。けれど、澪の前までは届かなかった。
メイの鎖が一本、鳴る。
それだけで、降り注いだ光が横へ弾かれた。白い墓標の向こうで、青白い雨が音もなく散る。澪は見ていない。朱音の頬へ伸ばした手を、まだ止めたままだった。
白鯨が、巨体を沈める。
魔法では届かないと悟ったのか、白い影が空を滑った。空葬原の距離が歪み、遠くにいたはずの巨体が、次の瞬間には澪と朱音の真上へ迫っている。純粋な質量。空を泳ぐ山のような白が、墓標ごと二人を潰しに来た。
澪は、それも見なかった。
鎖がもう一本、白い空を横切る。
白鯨の巨体が止まった。
空葬原の空中で、巨大な影が不自然に静止する。鎖一本。たった一本の青白い線が、白鯨の腹へ食い込み、その質量を止めていた。白鯨の裂け目の奥で、青白い光が揺れる。悲鳴にも怒りにもならない低い音が、墓標群を震わせた。
それでも、澪は朱音を見ていた。
朱音の頬へ触れた。
冷たい。
「……やだ、やだ。やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだッ!」
自分の声が、自分のものではないみたいだった。
「朱音先輩、やだよ」
澪の目から涙が落ちた。
一粒では止まらなかった。次々に落ちる。朱音の頬へ落ち、白い防護外套へ落ち、血と混じる。澪は朱音の肩を掴んだ。揺らさないようにしようと思ったのに、指が震えて、朱音の身体が少し揺れた。
朱音の両手は、まだ前へ伸びている。
壊れた光の防壁へ向かって。
何かを守ろうとした形のまま。
「起きて」
声が割れる。
「怒っていいから。ご飯、食べるから。戻れるの隠してたのも、怒っていいから」
朱音は動かない。
「だから、起きて!!」
視界の前に、文字が浮かんだ。
《対象者は死亡しています》
《蘇生条件を確認》
《代償を要求します》
《代償:心臓》
《承認しますか?》
澪は、迷わなかった。
文字を最後まで読む前に触れた。
「使う」
《承認されました》
その瞬間、澪の胸の中で何かが潰れた。
音がした。
骨が折れる音ではない。肉が裂ける音でもない。もっと中心にある、絶対に潰れてはいけないものが、握り潰された音だった。
澪の口から血が噴き出した。
大量の赤が、朱音の白い外套へ降る。澪は目を見開き、胸を押さえた。心臓がない。潰されている。潰れた心臓を、何かがさらに押し潰そうとしている。その一方で、別の力が無理やり戻そうとしていた。砕けた肉を集め、破れた血管を繋ぎ、止まりかけた身体を動かそうとする。
潰す力と、戻す力が、胸の中でぶつかった。
「あ、が……っ」
澪は朱音の前で崩れた。
白い墓標の地面に、血が広がる。喉からまた血が上がる。吐こうとして、呼吸ができない。胸が痙攣する。心臓が破裂し、戻り、また潰される。何度も。何度も。身体の内側で同じ死を繰り返している。
マシロが澪を包もうとする。
だが、胸元へ触れた白い布が赤く染まる。マシロが震える。守ろうとしても、これは外からの攻撃ではない。澪自身が承認した代償だった。メイが低く鳴り、周囲へ鎖を広げる。近づく魔物を許さない。骨の鳥が飛び込んだ瞬間、鎖に砕かれる。白い鹿が踏み込めば、足元ごと切断される。
白鯨も動けない。
空中で巨体を捻り、白い膜を広げ、青白い魔力を吐き出そうとするたび、メイの鎖が一本ずつ増えた。一本は腹を縫い、一本は尾を止め、一本は空葬原の歪んだ距離そのものに引っかかる。澪は血の中でもがいている。朱音だけを見ている。白鯨など見ていない。
それでも、白鯨は近づけなかった。
澪は血の中でもがいた。
声にならない声を上げる。指が白い地面を掻く。爪が割れ、すぐ戻り、また割れる。喉から泡混じりの血があふれる。肺が空気を求める。だが、胸の中心が何度も潰れるせいで、息が入らない。
死ねない。
死ねないまま、死ぬほど痛い。
数秒では終わらなかった。
十秒。二十秒。もっと。時間の感覚が壊れる。澪の身体は何度も心臓を戻そうとし、そのたびに見えない手が潰す。代償として奪われる心臓と、不老不死として戻る心臓が、互いに譲らない。澪は喉を裂くような音を出し、朱音の足元で丸くなる。
『澪ちゃん!?』
『血、血が』
『何が起きてる』
『胸押さえてる』
『心臓?』
『やめて、見てられない』
『配信切って』
『切るな、状況が分からなくなる』
『朱音さん、動いてる?』
『澪ちゃんが苦しんでる』
『朱音さん、さっきまで息してなかったよな?』
『言うな』
『でも今、画面に死亡って』
『対象者は死亡していますって出た』
『見間違いじゃないのか』
『【アークライン配信管理部】未確認情報の断定投稿を制限します。映像遅延を最大化』
『制限するってことは否定できないのか』
『医療班は!?』
『場所が第一層第九環だぞ』
『【黒鉄旅団公式】現地救助班は帰還済み。七瀬朱音のみ未帰還』
『朱音さんだけ現地に残ったのか』
『なんでだよ』
『白鯨が止まってる』
『メイが止めてる。強すぎる。』
『あんなの、近づけるわけない』
『【アークライン公認解説/Noah Vale】Something is being paid from her body. Regeneration is resisting it.(彼女の身体から何かが支払われています。再生がそれに抵抗しています)』
『【探索者協会緊急観測班】七瀬朱音氏の生命反応、再取得を確認。詳細確認中』
『再取得?』
『それ、途切れてたってこと?』
『【Noah Vale】I cannot call this healing. Something that had stopped has resumed.(治療とは呼べません。止まっていたものが、再び動き始めました)』
『それって』
『言うな』
『世界が変わるぞ、これ』
『おっと、誰か来たようだ』
朱音の指が動いた。
最初は、本当にわずかだった。
突き出したまま止まっていた指先が、血に濡れた白い地面を掴もうとした。次に、胸が小さく上下する。呼吸。浅い。苦しい。だが、息だった。壊れかけた白い防壁が、朱音の前で薄く揺れる。砕けた羽根のような光が、もう一度だけ形を保とうとして、すぐ消えた。
朱音の喉が鳴り、閉じていた目がゆっくり開く。
「……っ、は」
息を吸った瞬間、朱音は自分の前で血まみれになっている澪を見た。
澪はまだもがいていた。
小さな身体を折り曲げ、胸を押さえ、口から血をあふれさせている。マシロは赤く染まり、メイの鎖が周囲を囲んでいる。澪の目は開いているのに、朱音を見ていない。痛みで焦点が合っていない。
「澪……?」
朱音の声は掠れていた。
起き上がろうとして、胸の奥と脇腹の痛みに顔を歪める。傷は塞がり始めている。死んでいたはずの場所に、無理やり命が戻っている。気持ち悪いほど身体が重い。けれど、それどころではなかった。
「澪、なに、これ……」
澪は答えられない。
胸の中で、最後の反発が起きた。
心臓が潰れる。戻る。潰れる。戻る。澪の身体が大きく跳ねた。朱音は咄嗟に手を伸ばす。触れていいのか分からない。だが、手を伸ばさずにいられなかった。
「澪!」
朱音の手が澪の肩へ触れる。
その瞬間、マシロは朱音を弾かなかった。
白い布が、むしろ朱音の手を受け入れるように少しだけ緩んだ。朱音は澪の肩を抱いた。血で滑る。熱い。澪の身体が小刻みに震えている。
「どうしたらいいの。ねぇ、どうしたらいいの……!?」
朱音は泣いていた。
自分が死んだことより、澪が目の前で壊れそうになっていることの方が怖かった。
「澪! 澪……澪ッ!」
澪の喉から、最後の血がこぼれた。
胸の中で、潰す力がふっと消えた。
戻す力だけが残る。
心臓が作り直される。破れた血管が繋がる。肺に空気が入る。澪は大きく息を吸い、すぐ咳き込んだ。赤い血がまだ少し唇から垂れる。だが、胸は動いている。
澪は朱音の腕の中で、薄く目を開けた。
「……朱音、先輩?」
朱音は声を出せなかった。
「…起きた?」
澪が小さく言った。
それだけで、朱音は崩れるように澪を抱きしめた。
「ばか……!」
声が震えた。
「ばか、ばか、ばか……! なんで、こんな……なんで……!?」
「朱音先輩、死んでたから」
「だからって!」
朱音は泣きながら怒鳴った。
「だからって、こんなの……!」
澪は朱音に抱きしめられたまま、ぼんやり瞬きをした。泣いている朱音の声。胸の音。息の音。さっきまでなかった音が、戻っている。
澪の目から、また涙が落ちた。
「朱音先輩、大切」
言葉はひどく単純だった。
朱音は歯を食いしばり、澪の背中を抱いた。
「……帰ったら、怒るから」
「うん」
「戻れるのに戻らなかったのも、怒る」
「うん」
「でも、今は……」
朱音は澪の白い髪に顔を伏せた。
「生きて」
「うん」
空中で、白鯨が低く鳴いた。
メイの鎖に縫い止められた巨体が、空葬原の距離を軋ませる。青白い裂け目がいくつも開き、白い膜が膨らむ。白鯨はまだ生きている。まだ終わっていない。けれど、その鳴き声は、さっきまでの圧とは違っていた。
近づけないものの声だった。
朱音が気づいた。
立とうとする。
澪が先に立った。
まだ足元はふらついている。胸元は血で濡れている。マシロは赤く染まり、メイの刃にも血がついている。それでも、澪は朱音の前に立った。
「寝てて」
「澪、待って!」
「待たない」
澪の声は低かった。
泣いた後の声だった。痛みで掠れ、血で濡れて、それでも真っ直ぐだった。
白鯨が身をよじる。
鎖が一本、千切れた。空葬原の距離が跳ね、白い巨体が奥へ逃げようとする。かつて澪を何度も迷わせ、何度も殺しかけ、何度も絶望を叩きつけてきた白い鯨。今は距離を狂わせて遠ざかろうとしていた。
澪は一歩も動かなかった。
メイを持ち上げる。
青白い刃が、白い空を映した。鎌というより、空葬原の冷たい光をそのまま刃にしたようだった。鎖が澪の周囲で静かに垂れる。騒がない。暴れない。もう、追う必要がないと知っているように。
朱音は、膝をついたまま見上げていた。
澪の横顔に笑みはなかった。
楽しい戦いではない。綺麗なものを見る目でもない。そこにあるのは、ただ、自分たちの間に残っている邪魔なものを壊す視線だった。
「お前、あと」
澪の青い目が、白鯨を捉える。
「今じゃない」
メイが一度だけ鳴った。
澪は振った。
大きく踏み込むことも、跳ぶことも、追いかけることもしなかった。ただ、その場で一度、鎌を振った。
青白い軌跡が空をなぞる。
次の瞬間、空葬原の距離が割れた。
逃げようとしていた白鯨の巨体に、細い線が走る。最初はただの光に見えた。白い身体を横切る、青白い一本の線。白鯨はそのまま泳ごうとした。まだ自分が斬られたことを知らないように、膜を揺らし、尾を動かし、空葬原の奥へ進もうとした。
遅れて、巨体がずれた。
白い胴が左右に分かれる。青白い裂け目が内側から広がり、膜がほどけ、骨片がこぼれた。白鯨の低い鳴き声が途中で切れる。澪はもう一度、メイを振った。
二度目の斬撃は、最初の線と交差した。
白鯨の上半分がさらに割れる。距離を歪ませる膜が、布のように裂けた。三度目。四度目。澪は同じ場所から動かない。足元の血も、朱音の手の届く距離も、少しも離れない。ただメイの刃だけが、白い空の向こうへ届き続ける。
白鯨が何枚にも切れていく。
抵抗はなかった。
いや、抵抗しようとしていた。青白い魔力が漏れ、白い膜が膨らみ、空葬原の距離が何度も歪もうとする。だが、そのたびにメイの鎖が先に絡む。歪みの根を押さえ、膜の端を縫い、逃げ道を消す。白鯨は動いているのに、どこにも行けない。
澪は息を吐いた。
「終わり」
メイの刃が、深く青く光った。
最後の一振りは、音がしなかった。
空葬原の空に、青白い光が爆ぜる。白鯨の身体がばらばらになり、膜がほどけ、内部から大量の白い根と淡く光る器官が落ちる。青白い骨片。薄い金を含んだ膜。透明な袋のような臓器。墓標群の間へ、雨のように素材が降った。
澪は一歩も動かなかった。
あれだけ届かなかった白い鯨が、空の上で終わっていく。
その刹那、澪は胸を押さえたまま、少しだけふらついた。
「澪!」
朱音が泣きながら叫んだ。
澪は振り返った。
顔は血で汚れている。目も赤い。けれど、朱音が生きているのを見て、少しだけ息を吐いた。
「素材、いっぱい」
「今それじゃない!」
朱音は泣きながら怒った。
澪は少しだけ首を傾げた。
「あとで、怒る?」
「今も怒ってる!」
「うん」
澪は頷いた。
それから、白鯨の残骸を見た。
大量の素材。白い根。淡く光る器官。青白い骨片。アークラインが確保できるならしてほしいと言っていたものが、墓標の間に散らばっている。メイが低く鳴る。喉奥の器官を欲しがる音。澪の指が少しだけ動いた。
けれど、今は拾わない。
澪は朱音のところへ戻り、そばに膝をついた。
朱音の手を握る。
まだ冷たい。
でも、握り返してくる。
澪はその手を両手で包んだ。
「生きてる」
朱音は泣きながら、澪の手を握り返した。
「……生きてるよ」
配信端末の向こうで、コメントが流れていた。
『白鯨が』
『一歩も動いてない』
『今の、あの場から斬った?』
『距離ごと斬ったのか』
『メイ、逃げ道を押さえてた』
『白鯨が何もできなかった』
『朱音さん、生きてる』
『死亡って出てたよな』
『生命反応、再取得って』
『蘇生?』
『言うな』
『でも見た』
『世界中が見た』
『【アークライン配信管理部】未確認の能力名、推定効果、医療判断の投稿を制限します』
『能力名じゃなくて、現象を見たんだよ』
『【探索者協会】本配信記録は緊急保全対象です。無断転載、改変、誘導目的の切り抜きを禁じます』
『【米国探索者医療局】映像記録の医療解析協力を要請』
『【Noah Vale】She brought back a breath. And then she erased the thing that tried to take it again.(彼女は呼吸を取り戻しました。そして、それをもう一度奪おうとしたものを消しました)』
『ノアさん』
『泣く』
『帰って』
『もう帰って』
空葬原の白い空の下で、二人の周りだけが赤く濡れていた。
白鯨の残骸は、遠くの墓標群へ静かに降り続けている。
澪はその景色を見なかった。
朱音の手だけを握っていた。
第3章完了です。
ここまで見てくれた人ありがとう。
なんかあれだけ苦戦した敵をあっさり倒すの良いですね。
ちなみにここだけの話、澪は死神試練で存在進化した際にユニークスキル3つ獲得してて、そのうち1つが蘇生、もうひとつが一定以上の信頼関係が気付けている人の死を感知して転移する力(離れすぎてるとできません)
もうひとつは内緒です。もし書くなら6章以降に出します。
4章は地上回メインにしようと思ってます。
更新は明日です。
良ければいいねとブクマよろしくお願いします。




