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続・紫竜の花嫁 ~檸檬の章~  作者: 秋桜
第3章 熊族編
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神獣会議

~紫竜本家~

1月の終わり、龍陽は父と弟と応接室に向かっていた。


妹は母とともに別荘に行った。

母は普段は本家のリュウカの部屋におり、本家から出掛ける際には必ず父が付き添うのだが、今日は本家で特別な会議があるので、父が母を別荘に避難させたのだ。



妹、竜礼、竜冠に加え、補佐官の龍灯、龍緑が母の警護のために別荘に行っている。

父の侍女たちと、龍陽の侍女であるスミレも別荘に避難させた。



龍陽と弟の龍風は会議で報告することがあるので父と本家に残った。



「う~くっさ」


龍風は不快そうだけど、龍陽もかなりキツイ。

こんな面子での会議は初めてだけど、今回ばかりは仕方ないのだ。




~応接室~


応接室の前では筆頭補佐官の龍栄と、龍海(りゅうかい)、龍栄の娘の竜縁が待っていた。

竜縁も報告役だ。



「お待たせしました。」


父を先頭に、補佐官たちに続いて龍陽たちも応接室に入った。


部屋の中の匂いは相当キツイ。



大きなテーブルの正面には、

藍亀(あいき)族長夫婦が座っている。


テーブル右側には朱鳳(しゅほう)族長と、鳳雁(ほうがん)


テーブル左側には黄虎(おうこ)族長と、その息子の虎達(こたつ)


がいる。


四神獣の族長が集まった会議なんて、紫竜の歴史上は初めてらしい。



「早速だが、事前の約束どおり、霊山の神について把握したことは全て共有させてもらう。

龍陽、竜縁、龍風、時系列順に報告しろ。」



父に促され、まずは竜縁と龍風が、龍応が呪われてから、霊山に花を返還するまでの経緯を報告した。



「竜の子も神罰の対象に?しかも花の窃盗には関与してないのに!?」


黄虎族長母子は驚いている。



「神に話しかけ、神の遣いに接触するなんて!?」


藍亀夫婦は龍風たちの行いに驚いている。



「花の欠片に関わった獣人たちは家族もろとも皆殺しで、竜の子だけが助かったということか!?

神が族長息子の願いを聞き入れた?

いや、それとも花を返還したからか!?」


朱鳳の2人も戸惑った顔だ。



やはりここにいる誰も神の考えは分からないらしい。



「いや、花の返還後も、花の欠片を所持していた人族の娘の家族は皆殺しにされた。

それにその娘が死んだ北都と呼ばれる町での神罰はその後2日続き、人族の男が1人殺された。

たが、この男は花の欠片を所持していた娘の親族ではなく、神罰の対象になった原因は人族にも分からないそうだ。」



父が答えた。



「・・・ならば、信じられんが、神が族長息子の願いを聞き入れて、竜の子だけ助命したということか?」



「我が一族はそう考えている。もう一つ、こちらの願いを神が聞き入れたとしか思えない出来事があった。

龍陽、話してやれ。」


父に命じられ、龍陽は先週、柚子とともに本家から霊山に連れ去られた出来事を話した。

ただ、柚子の名前は出さず、北の貴族の部下という呼び方にした。


朱鳳や黄虎が柚子に目を付けられては堪らない。

特に黄虎なんて獣人の誘拐や暗殺に躊躇がない野蛮な連中だ。



「・・・」


連れ去り事件の顛末を聞いて、参加者の誰もが絶句している。




「・・・嘘でしょ?神の遣いが霊山から出てきた?神の方から接触してきた?ありえない。」


普段は父を挑発してばかりの黄虎族長だが、今日の顔はなかなかに面白い。

こんなに驚いた顔が見れるのは最初で最後かも。


隣の息子なんて真っ白な顔だ。



「その人族娘にしか見えなかった神の遣いとやらはもうここにはいませんよね!?」


朱鳳たちも神の遣いが怖いらしい。



「そんなこと分からんが、息子たちが解放されたということは、神の遣いがこの本家までやって来た理由は、たぶん霊山のどこかに閉じ込められていた神の遣いの解放だったんだろうな。」


父が答えた。



「いやいや、神の遣いですよ!?

それが霊山の中で石の下敷きになって身動きとれなかった!?そんなバカな!?」


藍亀族長の言いたいことは分かるが、そんなバカなことが起きたのだ。



「神の遣いも万能じゃないんだろう!?

でなきゃ、神の遣いが自ら霊山から盗まれた花を取り戻したはずだ。

いやそれ以前に、盗んだ狼が霊山を出る前に殺して花を取り戻すだろ?」


「確かに、紫竜族長の説は一理ある。驚くべきことだが、族長息子の話に嘘はないのだろうし・・・霊山の神の願いを叶えた相手を生きて帰すくらいの慈悲はあるということなのか!?」


「しかし、花の窃盗は紫竜の方から霊山に出向いたが、神の遣いが幽閉された件は、なぜ神は竜の子を連れ去ったんだ?

それも別の族長息子を?」


「藍亀族長の言うとおりね。族長長男は神に目をつけられるようなことをしたの?」



黄虎族長が龍陽に尋ねてきた。



「心当たりはないです。花の窃盗の時には僕は霊山に行っていません。

ただ、神の遣いが閉じ込められていた岩を退けるために、竜の子の中で一番力の強い僕が選ばれたのかもしれません。」


龍陽は嘘はついてないけど、あんな石の山を退けることは弟の龍風にだって出来た。竜縁の力は知らないけど、さすがに女には難しかったかもしれない。

 だけど、弟の性格的に柚子の話を聞いて動くことはしなかっただろう。


龍陽以外の竜の子は誰も、柚子の話をまともに聞きはしなかったと思う。

だけど、龍陽はこのことは父たちにすら明かしていない。



言えば、分かってしまうからだ。


神に選ばれたのは、柚子だったことが。



龍陽は柚子の補佐役に過ぎなかった。

その証拠に、龍陽には本家で神の遣いの姿は見えなかったし、霊山で閉じ込められた時にも、神は柚子にだけヒントを与えていた。


こんな話はできない。

父が知れば、おそらく龍陽は二度と柚子には会えなくなる。



「ふ~ん。石破壊なら紫竜が適任ねえ。まあ、それ以前に私たちや朱鳳は雪山には近寄れないけど。」


黄虎族長は納得したらしい。


黄虎と朱鳳は寒さに弱いので、年中雪に覆われた霊山に呼ばれたら、力が出ず何もできないのだろう。



「我らの子も、竜の子並みに石破壊はできるかどうか・・・霊山の石なんて想像もつきませんし。」


藍亀族長も疑問には思っていないようだ。


まあ、霊山の中なんて誰も想像できない。



「こちらから報告できることは以上だ。

もう獣人による窃盗は勘弁だが、狼族によれば、霊山への立入りは狼以外でもできることはできるらしい。」


父は本題に入った。



「子どもなら誰でも入って窃盗可能ってこと? 

とはいえ、霊山の警護なんて・・・狼族に言ってもやらないでしょうね。」


「おや?狼は黄虎の眷属ではないのか?随分と支配力が落ちたことだ。」


「うちの眷属じゃないわよ、バカ鳥が。」


朱鳳族長と黄虎族長がにらみ合いを始めた。



「やれやれ。今回の件で、神罰の恐ろしさは獣人たちにも再認識されたでしょうから、獣人たちの知能に期待するしかないですね。

紫竜は・・・竜の子のおもちゃに花の欠片が混入された理由は突き止めたのですか?」


藍亀族長が尋ねてきた。


「まだ調査中だが、何せ花の窃盗に関与した獣人は皆殺しにされてるからな。」


父の言うとおり、もう調べる術がないのだ。



「・・・皆殺しにされたのは獣人の血族全員ですか?」


「いや、白鳥族では花の盗みに関与した白鳥とその妻、子ども、孫、それに白鳥と同居していた使用人たちだ。嫁いだ娘、別居する両親、兄弟も殺されたが、娘の嫁ぎ先は無事だった。

鴨は、花の欠片があった家には居なかった血族たちは皆無事だ。」


朱鳳族長が答えた。


「花を盗んだ狼の娘は、両親、祖父母、兄弟が同居か否かに関係なく殺されてたわ。

ハイエナは欠片を持っていた家にいた者だけが犠牲になり、別居の家族は無事だった。」


黄虎が答える。



「人族は、当の娘は出先の北都で死んだが、実家にいた両親、弟2人、父親の別の妻たち、それに使用人たちが犠牲になったそうだ。

後は、北都で殺された男だが、こいつの親族は誰も死んでいないらしい。

 花の欠片を所持していた熊は旅先の谷底で1人で死んでいて、熊族領にいる家族は全員生きているらしい。」


父が答えた。



「・・・花を霊山から盗んだ狼と白鳥が一番犠牲者が多く、ハイエナや人族たちは、霊山からの窃盗を知らなかったから犠牲者の範囲が狭いのか?

熊は・・・旅行中で神罰時に家に居なかったから、家族は助かった?

いや、それだと人族娘の実家は標的になったことと矛盾する。」


「藍亀族長の説だと、花の欠片は桔梗亭にあったから、龍応のほかに龍栄たちも呪われてるはずだ。だが、龍栄だけでなく、姉の竜縁も使用人獣人たちにも死者はいない。」


父が否定した。



「・・・神の考えは分からんな。法則性があるのかも怪しいな。だが、龍栄殿の息子は回復してきているなら、竜縁殿も神罰の対象外と信じたい。」


朱鳳たちは険しい顔だ。

竜縁は朱鳳に嫁ぐ予定なので、婚姻により朱鳳にまで神罰が及ぶことは避けたいのだろう。


同じ理由で、父は北才一族と雌竜の婚姻を延期してるし。



「竜琴ちゃんは大丈夫なんでしょうね?」


黄虎族長は妹が気になるようだ。


竜琴は、黄虎族長の息子と鳳雁の孫の双方から求婚を受けており、父はまだ婚約相手を決めていない。



「虎には関係ない話でしょう?族長娘もうちに嫁ぐのですから?」


案の定、鳳雁が反応した。


「あはは~あんなガキ、竜琴ちゃんに相手にされてないじゃない!?

まあ、どうしても欲しいなら、うちの虎達と離婚してからにしてね~」


「はあ!?ジョークのセンスもないのか!?

そっちの小僧こそ族長娘に嫌われてるだろう?」


「あんたに竜の気持ちなんて分かんないでしょ~!?

ねえ~龍希殿?そろそろ娘の嫁ぎ先決めてくれない?勘違い鳥がうるさいんだけど~」



「じゃあまともな候補者連れてこいよ。お前の息子じゃ俺の娘に釣り合わん。」



「はあ~!?あんたの娘もらってやるっていってんのよ!?感謝なさいよ。」


今度は父と黄虎族長が睨み合いを始めた。



族長職は大変だなぁ。

どこの族長も厄介だし、うるさいし・・・


龍陽は後継候補になると言われているけど、父の跡を継いで族長になりたいとは思わない。


とはいえ、龍陽が最年長だし、成人になったらすぐに結婚して子ども作れと言われてるし・・・



『やだなぁ。僕のことを嫌いな相手との結婚なんて』



龍陽は心の中でため息をついた。

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