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続・紫竜の花嫁 ~檸檬の章~  作者: 秋桜
第2章 霊山編
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勘違い

~???~



「さ、さむ!?」



柚子は冷気を感じて悲鳴をあげた。

目を開くと、なんと吹雪の中の雪山にいる!?



あの狼は居なくなっている。

けど、いつの間に外に!?


もう用済みってこと?

いや、だからってひどくない!?


本家から拐われてきた柚子はドレス一枚しか着てないのに!?

このままじゃ凍死する。



「柚子、大丈夫?」


龍陽が上着を柚子に着せて、抱き上げてくれたけど、


「え?いいの?龍陽は寒くない?」


上着を柚子に譲って、龍陽は白い着物と袴しか着てないように見える。



「僕は大丈夫だよ。人は寒さに弱いだろ?

それより嗅覚が戻ってきた。狼の匂いがするからやっぱりここは狼族領の霊山だ。」



龍陽はそう言うけど、柚子には狼の匂いなんて分からない。

だけど、あの不思議な場所から柚子たちの住む世界に戻ってきたのは間違いなさそうだ。


この寒さは本物だもの。



「神の遣いめ。用済みになった途端に追い出しやがって。本家に帰すか、せめて帰り道を教えろよ。」



龍陽も同じことを考えているみたいだ。



「・・・え!?」



ふいに吹雪が止んだ!?



「え?うそだろ!?」


龍陽も驚いて辺りを見回している。



「あ!龍陽、あれ、道じゃない?」


柚子は地面を指差した。

一面雪に覆われているのに、地面の凹凸が道のように見える。



「まじ?ヤバい・・・神と会話しちゃった、のか?」


龍陽は困った顔になっているけど、龍陽の言葉を聞いて神が帰り道を教えてくれたの!?



「ねえ、私もう寒さを感じないかも。」


「僕も。凍死させる気はないみたいだね。」



不思議な現象と言う言葉でも足りないけど、ここの神様はなんでもありらしい。



「私もう自分で歩けるよ。」


柚子はさすがに申し訳ない。

ほぼずっと龍陽に抱き抱えられて移動している。



「ダメだよ。はぐれたら危ないだろ?」


龍陽は離してくれず、柚子を抱えたまま道の上を飛び始めた。




「ごめんね。私、足手まといにしかならなかった。」


「え?何で!?柚子がいないと僕1人じゃあの狼の居場所なんて分からなかったよ。」


「でも・・・私が本家で指輪を拾ったから、ここに連れてこられたのかな?

龍陽まで巻き込んでごめん。」



「なんで柚子が謝るの?神の考えなんて分からないよ。無事に解放されてよかったね。」



龍陽は本当に気にしてないようだ。

なんとも優しい微笑みだ。



「・・・龍陽の微笑んだ顔ってお母さんに似てるのね。」



「え?そう?僕は父上そっくりって言われてるよ。」


「顔は似てるけど、優しい雰囲気はお母さんに似てる。」


「へへ。嬉しいなあ。」


龍陽は本当に嬉しそうな顔だ。

あんなにすごい紫竜なのに、人の母のことが好きなのだろう。



「・・・ごめんね。龍陽のお母さんは素敵な人だと思うけど、私は侍女にはなれないの。」



柚子は申し訳なくなって龍陽に切り出した。


龍陽がこんなにも柚子に優しくしてくれるのは母親の侍女にするためらしいけど、柚子はその思いには答えられない。


柚子の役目は豊さんの後継者になることなのだ。



「へ?母上?侍女?何のはなし?」



龍陽はポカンとしている。



「え?人の侍女が必要だから、龍陽は私を何度も助けてくれたんでしょ?」


「え?侍女は必要だけど、柚子はならないでしょ?豊の部下なんだから。」


「え?じゃあなんで何度も守ってくれて、指輪のプレゼントまでくれたの?」



「そりゃ目の前で見殺しになんてしないよ。指輪は北都を案内してくれたお礼って言わなかったっけ?」



龍陽は困った顔だけど、柚子も困惑していた。


どうやら柚子は大きな勘違いをしていたらしい。



「よ、よかった~」


柚子はほっとした。



「そんな勘違いしてたの?早く言ってよ。

え?てか、待って?柚子は今回、龍久の花嫁候補としてついてきたんじゃなかったの?」



「え!?なんの話!?」


柚子は意味が分からない。



「あれ?だって新年会にすごく綺麗な格好して来たじゃん?」


「そりゃ、豊さんの部下として本家の新年会に参加するならちゃんとした格好はしないとって。でも私は母親と同じ種族だから花嫁候補にはならないんじゃないの?

リュウクって誰?」


「龍久の母親は蛇だよ。龍光(りゅうこう)の唯一の息子だから、女たちは人族から妻を迎えても良いって話してたんだ。」


「ええ!?そんな話知らないわ。それに私は北才の親族じゃないのよ!?

縁談は族長筋だけじゃないの!?」



柚子は今度こそ怖くなってきた。

まさかそんな目で見られていたなんて!?


だから、狼は柚子の素性を探ってきたの!?

熊はすでに柚子のことを調べていた!?



「知ってるよ。龍久は後継候補じゃないから、族長筋の縁談に拘らないよ。族長の養女にするって手もあるけど。」


「私はリュウク?に嫁ぐつもりなんてないわよ。豊さんもそんなつもりで連れてきたわけじゃないの。」



「な~んだ。よかった~」



今度は龍陽がほっとしている。



「そんなに?そりゃ私なんかが嫁いできたら迷惑でしかないだろうけど・・・」


柚子は嫁ぐつもりなんて微塵もないけど、ここまで安堵されると複雑だ。



「違うよ。龍久がちょっとな~あいつは理屈っぽいくせに、力加減が下手でさ。人とは相性悪いよ。」


「そうなの?じゃあやっぱり龍陽が凄いんだ。」


「僕もまだまだだよ。父上は厳しいからね。」



「・・・ねえ、龍陽は熊と結婚するの?それとも白鳥か象?」



柚子は綺麗に着飾った娘たちを思い出した。



「縁談は族長命令だから、僕には分からないよ。

でも、新年会に来てた娘たちは嫌だなぁ。」


「え?なんで?」


「皆、僕が嫌いだからね。あんな顔で嫁がれてきても困るというか、可哀想でしかないよ。」


「なんで娘たちはあんなに落ち込んでたの?主要取引先にとっても縁談のメリットって大きいんでしょ?」



「僕には獣人の考えなんて分からないけど、柚子だって、豊や解放軍のメリットになるからうちに嫁げって言われても嫌でしょ?」



「・・・そう、かも。」


柚子は豊さんたちの元に居たいし、会ったこともないリュウクって紫竜との結婚なんてごめんだ。



「・・・ごめん、こんな話嫌だよね?

もうしないから、豊の部下はやめないで欲しいな。

女たちの誤解は僕がといておくから、これからも紫竜(うち)の取引担当でいてほしい。」



「いいの?私、龍陽の邪魔になってないかな?」


柚子は驚いた。

龍陽は本当に豊さんの部下として柚子を必要としてくれてるの!?



「僕は、豊より柚子が好きだよ。豊は両親に信用されてるけど、僕の代までいるか分からないしね。」



「あ、ありがと・・・」



柚子は顔が赤くなった。

龍陽の【好き】はそういう意味じゃないって分かっているのに、心臓がドキドキして、耳まで熱い。



「・・・」



「え?なんでキスするの?」


柚子は驚いたけど、龍陽も同じくらい驚いた顔をしている。



「あれ?ごめん。なんでだろ?なんか可愛い顔してるなって思ったら・・・」



「何それ?」


柚子は笑ってしまった。


普通は怒るか、嫌な気持ちになるものなんだろうけど、どんどん赤くなる龍陽の顔を見てると、笑ってしまった。



『あ~そっか。』



柚子はやっと自分の気持ちに気づいたけど、そっと心の中にしまった。


柚子は人だから、この思いが叶うことはないのだ。



だから、豊さんは私を後継者として選んだのかな?

こっちの嗅覚がやけに鋭いおじさんは、いつから柚子の気持ちに気付いていたのだろう?


豊さんも叶わぬ思いを胸に秘めて、紫竜と人をつなぐために残りの人生をかけるらしい。


柚子も・・・龍陽が必要としてくれるなら、そんな生き方も悪くないかもしれない。



「柚子?ごめん、怒ってるよね?」


「怒ってないよ。」


「なんで?」


龍陽は驚いているので、柚子の気持ちには気付いてないみたいだ。

良かった。



「内緒。でもほかの女の子にはしちゃダメよ。」



「しないよ!ご、ごめんね。・・・げ!?」



龍陽は急に顔を歪めて道の先を見た。



「どうしたの?」


「父上と豊の匂いがする。

・・・さっきのは2人には内緒にしてくれない?」


龍陽は赤かった顔が青くなっている。



「いいよ。約束ね。」


柚子は大切な思い出として心にしまっておくことにした。

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