↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
続・紫竜の花嫁 ~檸檬の章~  作者: 秋桜
第1章 母の種族
40/71

柚子

~狼の町~

龍陽たちは無事に龍算の指定した狼の町にたどり着いた。


結局、道中は何もおきず、約束の時間まではあと一時間ちょっとだ。


ここは街道沿いにある大きめの町らしく、狼以外にも様々な種族がおり、人の商人も何人も見かけたので、龍陽たちが悪目立ちすることはないはずだ。



龍陽がそんなことを考えながら馬車の窓から町中を見ていると、馬車は小さな小屋?の前で止まった。


小屋からは狼が一人出てきて、御者台のショウと代金の話をしているのが聞こえる。


すぐに狼はどこかに行き、トモエが馬車から降りたので、龍陽も続いて降りた。



「ここはどこ?」


龍陽はショウに尋ねた。


「ここは馬車の休憩所だ。馬の飲み物と飼い葉がある。1時間の利用料を払った。」


「へ~」


龍陽は休憩所も知っている。

家族旅行の時に使ったことがあるけど、休憩所は宿くらい大きな建物で、休憩の間は建物内で食事したり、遊んだり、時にはお風呂がついている場所もあった。 


でもここは小屋だけで、馬のための道具が入っているだけだ。



ショウとトモエは馬の世話をし、龍景は・・・どこ行った?


龍陽が辺りを見回しても龍景の姿がない。



「ねえ、ケイ兄ちゃん知らない?」

龍陽は御者台で荷物の整理をしている柚子に問いかけた。


「馬車の中で寝てたわよ。彼だけ徹夜だったから寝かせとけって、ショウさんが。」


「マジ?」


柚子の返事に龍陽は驚いた。

さっきまで龍景にそんな素振りはなかったのに、居眠りなんて龍景らしくない。



「私は買い物行ってくる。リュウは馬車の見張りしてて。」


「え!?一人は危ないよ。一緒に行くよ。」


龍陽はショウに声をかけて、柚子と一緒に買い物に行くことにした。


顔を見られないようにフードを被って柚子の隣を歩いていても、町ゆく獣人たちは龍陽の方を見もしない。

普段とは大違いだ。


獣人たちは紫竜の匂いを嫌うので、行く先々で騒ぎになり、獣人たちは避けて行くのに。



「何買うの?」

龍陽は柚子に尋ねた。


「携帯食とマッチ。雑貨屋探して。」


柚子は目当ての店があるわけではないようで、キョロキョロと店を探している。


龍陽も知らない町なので店の場所なんて分からないけど、匂いで分かるかな!?



「・・・!」


龍陽は柚子の腕を掴んで近くの路地に引っ張り込んだ。



「なに?」


柚子は路地に入ると、怪訝な顔をしながら問いかけてきた。


「熊の匂いだ。尾行されてるかも。」


龍陽は焦っていた。


いつからだ?



「どこ?」


柚子は警戒した顔で路地から往来を見ている。


龍陽が答える前に熊が2人、キョロキョロしながら路地の前を通りすぎて行った。

軍服は着ていないけど、明らかに商人とは顔つきが違う熊たちだ。



「ショウさんに知らせなきゃ。・・・ううん、私たちが戻ったらショウさんたちの居場所もバレる!?」



柚子はぶつぶつ呟きながら親指の爪を噛んでいるけど、


「熊は僕らの匂いを追ってる訳じゃないのか!?」


龍陽はほっとしていた。追跡熊との交戦は避けられないと覚悟したのに、熊が匂いを追ってきたなら龍陽たちの前を通りすぎるわけがない。



「え?熊の血の匂いを追ってきたのよね?」


柚子が尋ねてきたけど、


「僕らに血の匂いはついてないよ。」


龍陽はこれは自信がある。 一族の中では龍陽は鼻はよくない方だけど、熊の獣人に嗅覚が劣ることはない。



「なら尾行じゃなくて、私たちを探してる?」


「みたいだね。でももうやり過ごし・・・いや、熊たちが戻ってくる。」


龍陽は言いかけて気付いた。

通りすぎたはずの熊の匂いがまたこっちに向かっているのだ。



路地に入ったのは失敗だった。

この先はすぐに行き止まりになっていて、隠れられる場所もない。



「・・・リュウ、こっち」


柚子はなぜか龍陽を引っ張って路地の奥に連れていく。


「どこ行くの?行き止まりだよ。」


「司令官の連れじゃないふりをするの。私はそのために居るんだから。」


柚子はそう言ってなぜかコートを脱いで地面に落とした。コートの下は中袖のワンピース姿だ。



「何してるの!?寒いよ」


龍陽は柚子の行動が理解できないのに、柚子は手を伸ばして龍陽のフードをめくるので、龍陽はますます焦った。


龍陽の顔を知る熊だったらマズいのに!!



「ちょっ!フードは困・・・」



フードに手を伸ばした龍陽は口を塞がれて驚きのあまり身体が硬直した。



『え?なんでキスされてんの!?』



龍陽は理解が落ち着かないのに、柚子は龍陽の口をふさいだまま龍陽の右手をとって柚子の腰に回させ身体を密着させた。

柚子の匂いと体温をもろに感じる。



いや、熊が来てるのに!?


龍陽はわけが分からないまま、往来をチラリと見ると、まさに熊たちが戻ってきた。


でも路地にいる龍陽たちをチラリと見ると、不愉快そうな顔になって通りすぎていった。



『なんで!?』



龍陽は理解できない。



「あ・・・」


柚子が離れてくれた。



「なにしてんの!?熊たちこっち見てたよ!?」


龍陽はあわててフードを被った。


「何って・・・カップルのふり。」


柚子は平然として、地面に落としたコートを拾って土ぼこりを落としている。


「なんで!?」


「そんな大きな声出さないでよ。熊をやり過ごせたでしょ。」


「先に説明してよ。びっくりしたよ!」


龍陽は恥ずかしくてまだ柚子の顔を見れない。



「なに赤くなってるの?発情して襲わないでよ?」



柚子はニヤニヤしながら見てくるので、龍陽は今度は背筋が冷たくなった。


「しないよ!連れて帰っちゃうじゃん!」


龍陽は子どもの頃から教えられてきたのだ。

紫竜の男は手をつけた女を自分の巣に連れて帰って妻にしてしまうらしい。

相手が縁談相手じゃなくても、相手が嫌がっていても、紫竜の本能として抗えないそうだ。


だけど、相手の女からしたら誘拐婚でしかない。

なので、龍陽たち男は縁談相手と正式に結婚するまでは決して女に手をつけてはいけないのだ。



「は?なに?どこに?」


龍陽の正体を知らない柚子はポカンとしているけど、龍陽にとっては笑えない冗談だ。


さすがにキスだけで龍陽が柚子を連れ帰りたい衝動に駆られることはなかったけど、柚子の匂いと身体の感触が頭から離れてくれない。



「なんでもないよ。今のうちに行こう」


龍陽は路地から出て往来に戻った。

まだ心臓がドキドキしていて落ち着かない。顔は熱いし。



龍陽と柚子は買い物は諦めて熊の匂いを警戒しながら馬車に戻り、ショウとトモエに熊たちが探していることを報告した。


「もう追い付いてきたのか!?」


ショウは驚き、


「いいえ。別部隊かも。補佐官失踪の連絡を受けて周囲の町を探してるのかもしれないわ。」


トモエは冷静に考察している。



「何にせよ、もうすぐ時間だわ。指定の宿に行きましょう。」


トモエの言うとおりもうすぐ11時になる。

龍算と合流したら熊からもう逃げ回らなくて済む。



「・・・ん!?」



龍陽は頭上から殺気を感じて空を見上げた。

上空空高くにトンビの獣人が一人・・・抱えたなにかを落としてきた。



「なんだ!?」


龍陽に続いて空を見上げてトンビに気付いたショウが声をあげる。



何かが・・・丸く黒い塊が落ちてくる。



「爆弾か!?」


「え?何?」


龍陽にはバクダンが何か分からない。



「地面に落ちて爆発する!」


トモエ、ショウ、柚子は走って逃げ出したけど、黒いバクダンはもう数秒で落ちそうだ。


これが地面に落ちたらトモエたちは危ないらしい。

トンビの殺気からしてもこれは人を殺す武器なのだろう。



龍陽は考えるより先に身体が動いていた。



ボン



龍陽は宙に浮いてバクダンを空に向かって蹴り返した。



バクダンは空中で爆発し、上空のトンビと地上の龍陽たち双方に爆風が来た。

着地していた龍陽も足に力をいれないと吹き飛ばされそうなほどの風圧だ。


トモエたちは大丈夫かな?



「大丈夫?怪我してない?」


爆風がおさまったので、龍陽が振り返ると、トモエ、ショウ、柚子は地面に倒れ込んでいたので、龍陽は慌てて駆け寄ったのだが、

3人とも呆然として龍陽を見ている。



「そ、そっちこそ・・・なんで無傷なの!?」



柚子が一番驚いている。



「え?あ~と・・・」


さすがに怪しまれたようだけど、今から怪我したふりは・・・もう無理かな!?



ドサリ



「ん?」



何か落ちた?



龍陽が振り向くと、なんと先ほどのトンビが地面に落ちている。


なんで?



「わか・・・リュウ!?何があった!?」


龍景が馬車から慌てて降りてきた。

居眠りしていた龍景はさっきの音でさすがに起きたらしい。



「トンビが落ちてきた。」


「いや、すごい音がしたぞ!?」


「大丈夫。大した武器じゃなかったよ。」


「武器!?何があった!?」


寝ていた龍景は上空のトンビの殺気にも気付いていなかったみたいだ。



「えっとね・・・ん!?」



言いかけた龍陽は匂いに気付いて、再度空を見た。


「も~大騒ぎ」



呆れた顔で飛んできたのは竜礼だ。



「は!?え!?人が空を飛んでる!?」


柚子はそこに驚いている。



「な、なんでここに!?」


龍陽と龍景は竜礼が出てきたことに驚いていた。



「迎えにきたの。補佐官がお待ちよ。」


竜礼はそう言って、龍陽たちを龍算の宿に連れていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。