第8話 楽器(中)
待機スペース。
5 脚の椅子と、小さなテーブルが一つ置かれていた。テーブルの上には、少しのお菓子と飲み物が置かれていた。
今、みんなは夜限が用意してくれたお菓子を食べてお腹を満たしながら、試合開始を待っていた。
スタッフが拡声器で大会のルールを読み上げる声が聞こえる中、時折おしゃべりを交わした。
「そういえば、各ラウンドで1 位になったら10ポイントに加えて、さらに5ポイントもらえるんだって。」
「最後まで生き残ったからだよな。」
「それに2 位は8ポイント、3 位は6ポイント、4 位は4ポイント、5 位は3ポイント。6 位から10 位までは2ポイント、11 位から15 位までは1ポイントだって。」
「そして16 位以降は0ポイント。まあ俺たちが15 位にも入れないなんてことはないだろうけど。」
「毒圏から離れていれば大丈夫だろうけど、本当に一位になれるのかな?」
鈴木蒼と小林陽は時折こんな風におしゃべりしていた。
夜限もそれを聞いて言った。
「蒼くん、絶対大丈夫だよ。響合がルールを説明する時、一位に関する大事な情報ばっかり選んで話してたのに気づかなかった?」
二人は考えてみると頷いた。
確かにそうだった。
そして三人は、お菓子を食べ始めてからずっと黙っている響合の方を向いた。
さっきまでずっと大きなことを言って、俺がみんなを勝たせて一位に連れて行くなんて言ってたあいつだ。
だが今、みんなが気づいたのは、響合の足がずっと震えていて、ビスケットを食べる手も落ち着きがないことだった。
「すごく緊張してるな。」
三人は心の中で思った。
響合の表情は普通だったが、平然を装っているのはみんなにはっきりわかった。
「響合、こういう大会に出るのは初めてなのか?」
夜限の声に、ぼんやりしていた響合は我に返り、慌てて否定した。
「違うに決まってるだろ!こんな小規模な大会なら、百回も千回も出てるぜ。優勝なんて朝飯前だ!」
だが、オレンジジュースを口に運ぶ響合の手が、まだ震えているのはみんなに見えていた。
小林陽は少し意外そうに、響合の肩を叩いて言った。
「大丈夫だ、俺たちは勝つ。一位を取って、ドラムをロック部の部室に持ち帰ろう。」
鈴木蒼も同調した。
「そしてみんなでバンドを組もう。」
夜限は笑って言った。
「負けても大丈夫だよ。ドラムは絶対に用意するから、俺が保証する。」
響合はその言葉を聞いて、少し胸を打たれたようだった。
とりあえず足の震えは止まり、片手で頭のバンダナを下ろすと、静かに頷いた。
「うん、うん。」
それから一気にオレンジジュースを飲み干すと、勢いよく言った。
「俺を甘く見るなよ。俺は誰だと思ってる?」
「FPS 史上最高の天才少年だ!ゲーム史にそびえ立つ最高峰、最長の大河だ!」
「その上ロック部の部長も務めてるんだぜ!こんな小規模な大会なんて、お手の物だ!」
それから振り向いてオレンジジュースをテーブルに置くと、言った。
「ありがとう、みんな。俺たちロック部は勝つ!」
みんなは笑って頷いた。
「各出場選手、試合会場に入場し、バトルホールにお入りください。」
「ご注意ください。各自で持ち込んだ周辺機器はスタッフにお預けください。試合は会場に用意された機器を使用してください。」
「ゲームを妨害したり、不正行為をしたりした場合は、出場資格を取り消し、各ゲーム大会のブラックリストに登録します。」
拡声器の声を聞いて、四人は椅子から立ち上がり、お互いに拳を合わせた。
「頑張ろう!!!!」
試合会場へと歩き出した。
そして、揃いのユニフォームで埋め尽くされた人の波の中に、四人の違う姿が、自然と溶け込んでいった。
......
各選手がそれぞれの席に着くと。
小林陽は主催側が用意したヘッドセットを装着し、キーボードとマウスを確認して操作してみると、手触りがなかなか良かったので、主催側から提供されたゲームアカウントにログインした。
ロード画面が終了した。
パソコンの画面に、四人のゲームキャラクターが現れた。
「聞こえるか?」
響合の声を聞いて、小林陽はボイスチャットのキーを押し、ヘッドセット越しに答えた。
「大丈夫だ、はっきり聞こえる。」
別の方から声が上がった。
「俺の声、邪魔じゃないだろ?」
「大丈夫だよ、蒼くんの声はちょうどいいから。」
その頃、会場の大型スクリーンは既に点灯しており、アナウンスが流れた。
「各チーム、準備を整えてください。機器の確認が済み次第、ただちに試合を開始します。」
早すぎるだろ、と小林陽は思わずツッコんだ。
「なんだか本当に頼りない雰囲気が漂ってるな!」
「負けたら何か罰則があるのか?」
「蒼、大丈夫だよ。絶対に正式な大会だって俺が保証するから。」
響合の言葉を聞いて、鈴木蒼は隣で興奮しきっている響合を見た。
どうもあいつも同じくらい頼りない気がしたが、心の中は少しだけ落ち着いた。
「響合、そういえば俺たちのチーム名は『U-REE』なんだけど、どういう意味なの?」
夜限の疑問に、響合はマウスの感度を調整しながら答えた。
「あ、それ?適当に打っただけだよ。大会に出るにはチーム名が必要だろ?出場できればそれでいいんだから。」
ゲームのチャット欄に、鈴木蒼からこんな質問が飛んできた。
「読み方は『ユーリー』で、漢字は『遊利』なのか?」
響合はためらった。
「そうだったか?」
それから鈴木蒼の視線を受けると、慌てて言い直した。
「そうそうそうそう、その通りだ!」
一方、小林陽はチーム名の漢字をじっくり噛み締めて言った。
「なら、俺たちの部活のスタイルにすごく合ってるな。」
その後、パソコンの画面がゲームキャラクターのロビーに切り替わった。
「みんな、始まるぞ。エランゲルだ、定番の島マップだ。作戦はどうする?」
夜限の声を聞いて、響合が提案した。
「キルポイントがあるんだから、たくさんキルするのが作戦だ。俺は撃ち合いなら負けないぜ!」
小林陽はマップを見ながら、響合の下手な射撃技術を思い出して提案した。
「第 1 戦は堅実にいこう。順位ポイントも高いし、いい順位を取ろう。ファイナルサークルまで生き残るのを目指そう。それとも、バラバラに動く?」
この作戦案を聞いて、鈴木蒼が不安そうに言った。
「バラバラに動いたら、支援が間に合わないし、一つずつ倒されちゃうんじゃないか。」
「じゃあこうしよう。みんなで固まって、この戦は堅実にいく。一緒に動いて、敵がいたら倒す!」
響合がキャプテンとして最終決定した。
夜限は作戦が決まったのを聞いて、答えた。
「了解。じゃあ俺はみんなの後ろについていくね。」
パソコンの画面にカウントダウンが表示され、3、2、1。
会場全体にアナウンスが流れた。
「第 1 試合、正式に開始します!」
......
各選手が操作するゲームキャラクターは、全員一機の飛行機に乗っていた。
飛行機は、赤白の点滅する直線の航路でマップ全体を横切っていた。
小林陽はパソコン画面右下のマップに現れた白い小さなマーカーを見た。すると、耳元に響合の声が聞こえてきた。
「ここに落ちるぜ!」
「まずいだろ、ここは資源が豊富すぎるから、争う人が多いはずだぞ。」
「あらあ、蒼、怖がってるのか?大丈夫だ、俺がいれば全部倒してやるぜ。」
響合の言葉を聞いて、小林陽はマップの一面に広がる白い建物群を見て、ため息をついた。
「はぁ、こりゃ苦戦だな。」
「苦戦なの?着地して武器を拾えばいいだけじゃない?」
夜限の一言に、こんなにも正式そうな選手たちと同じ舞台で戦うのは初めてだという小林陽は、心の中で思った。
「他のチームは、俺たちみたいに数日しかやってない奴らとはレベルが違うだろうな。」
だが、みんなの闘志を削ぐわけにはいかないので、小林陽はボイスチャットで答えた。
「連携に気をつけよう。相手は弱くないから、甘く見るな。」
「そういえば、相手にプロ選手がいたりしないのか?」
「あらあ、蒼、そんなこと言うな。たとえプロがいたとしても、俺がヘッドショットで一発倒してやるぜ。」
「はいはい、みんなもういいよ。そろそろ落下する時間だ。俺はみんなの後ろについていくね。」
飛行機が、資材が最も豊富なミリタリーベースの上空を通過しようとした時。
「パチッ」
空に、一斉に無数の黒い点が現れた。
空の黒い点たちは、次々とミリタリーベースに急降下していった。
その時、小林陽は急いで大事なことを思い出し、指揮して言った。
「夜限、お前は響合についていけ。俺と鈴木蒼は少し離れたところで資材と武器を集めてから合流する。」
「了解。俺がずっと響合を守るから。」
鈴木蒼も続けて笑いながら補足した。
「響合が着地即ボックスで、体験感がゼロにならないようにな。」
「おい、お前ら二人、何だよそれ!」
ミリタリーベースの上空に、無数のパラシュートが広がった。
小林陽は無事に着地した。
少ない経験から判断して、資材が豊富なエリアに素早く降り、武器を手に取ると、少し安心した。
ヘッドセットから足音は聞こえなかったが、遠くからは様々な銃声が響いていた。
「人多すぎだけど、着地してすぐ銃拾えたよ。」
「夜限ちゃん、助けて助けて!俺フライパンしかない!」
わずか10 秒の間に、小林陽はパソコン画面の右上に3つのキルログが流れるのを見た。
どれもヘッドショットでダウンさせてから、そのままキルしたものだった。
「大丈夫か?俺がAK 持ってるから、先にこれ持って身を守れ。」
「ありがとう!じゃあお前は何を持つの?」
「ここにリボルバーがあるじゃん。」
夜限と響合のやり取りを聞いて、小林陽はツッコんだ。
「お前ら二人、先に資材集めに行けよ。歩いて数歩のところに武器があるんだから、そこまですることないだろ。」
そう言うと、小林陽はあらゆる資材を探しながら、ヘッドセット越しに周囲のゲーム内の音を聞き耳を立てていた。
小林陽は、なんだか静かすぎると感じていた。
おかしい、上空から見て、何人かが自分のすぐ近くに落ちたのは間違いないのに。
「陽、その通りだ。響合も、できるだけ夜限の近くにいて、勝手に走り回らないように。」
「大丈夫だよ蒼くん。俺がずっと響合についていくから。」
「そこまでする必要あるのかよ?」
そう言いつつも、一分も経たないうちに、小林陽のパソコン画面右上に、また誰かがダウンしたというログが流れた。
「夜限、早く助けて!俺は今家の中に隠れてるんだけど、ドアの横にショットガン持った敵が待ち伏せしてる!」
これを聞いて、小林陽はすぐに注意を促した。
「夜限、気をつけろ。あいつはお前が響合を助けに来るのを待ってる、ベイトかもしれないぞ。」
「大丈夫だ。」
すると、右上のログにまた一人ダウンしたという情報が表示された。
「危険は解消したよ。」
小林陽はヘッドセットから聞こえてきた夜限の自信に満ちた声に、少し笑った。
「いや、まだ三人いる。」
ログが更新され、二人がダウンした。
小林陽は夜限がダウンしたのを見て、慌てて叫んだ。
「やばい、これはベイト戦術だ!」
「そうか、それなら都合がいい。」
耳元に鈴木蒼の笑い声が響いた。
ゲーム画面では、鈴木蒼が高所から98Kを構え、引き金を引いた。
「バンッ」
銃弾が飛び出した。
続いて素早くマウスを動かし、精密に照準を合わせた。
「バンッ」
ヘッドショット。
右上の残り人数が、元の88 人から84 人に減った。
「この四人は同じチームだったらしい。一チームまるごとキルしたな。」
鈴木蒼はそう推測した。
「蒼、そんなこと言ってる場合じゃないだろ!早く俺たち二人を助けに来てくれよ!」
「はいはい。幸い俺が早く資材を集め終わったから、すぐそっちに行く。」
「ありがとう蒼くん。油断しちゃったね。」
鈴木蒼は先に夜限を助け起こすと、すぐにバックパックを開いて資材をいくつか渡した。
「大丈夫だ。メディックキットもたくさん拾ったから、いくつか持っていけ。」
「俺の分は?早くしろ!これ以上だと失血死しちゃうぜ!」
鈴木蒼はゆっくりと響合を助け起こして言った。
「急ぐなよ。」
助かった響合はメディックキットを使って体力を回復させながら言った。
「急がないわけないだろ!まだ実力を発揮してないんだぜ!今の俺なら10 人は相手にできる。」
「マジで?」
小林陽は疑問に思って言った。すると、ヘッドセットからまた声が聞こえた。
「当然だぜ!あらあ、蒼、俺を撃つなよ!銃をどけてくれ。」
鈴木蒼は淡く言った。
「毒圏が縮むぞ。早くしろ。」
「小陽、いつ合流するの?」
夜限の声を聞いて、小林陽はオフロードカーに乗ったままマップを確認し、道路の脇に青いマーカーを打った。
「青いマーカーのところに来い。車を見つけた。」
「俺が運転する!俺が運転する!任せてくれ!俺のゲームでの車の運転技術は超一流だぜ!」
「いらない。お前が俺たちを転ばせなければありがたい。」
「小陽、ガソリン缶はいる?ちょうど持ってるよ。」
三人が道路の脇に着くと、小林陽はピーピーとクラクションを鳴らして乗車を促し、言った。
「夜限、ガソリンを入れてくれ。」
その時、空から飛行機のゴウゴウという轟音が聞こえてきた。
「エアドロだ!絶対取りに行くぜ!」
響合の言葉を聞いて、鈴木蒼は不安そうに言った。
「本当に行くのか?人がたくさんいるぞ。」
小林陽はゲーム内でマップを確認し、さらに8 倍スコープでエアドロの場所を見て言った。
「無理だな。遠すぎる。」
それを聞いて響合はしょうがなさそうに言った。
「わかった。じゃあ堅実にいこう。」
残りの時間、このゲームで彼らはもう一人も敵に会わなかった。ただあちこちを車で走り回っていた。
「なんで走り回ってるんだよ?敵を探せよ。」
もちろんそう思っていたのは響合だけで、他の三人はそうは考えていなかった。
小林陽が運転する車は、いつも資材が豊富な場所に向かっていた。
そしてみんなに、危険と連携に気をつけるように注意を促していた。
車を降りてあらゆる資材を集めたが、結局一人も敵には会わなかった。
響合の提案に対し、鈴木蒼はゲームのバックパックを開いて確認しながら言った。
「堅実にいくんじゃなかったのか?今は車もガソリンもあるし、資材もファイナルサークルまで戦えるだけ十分にあるぞ。」
夜限も言った。
「それに敵を探すのは危ないよ。誰かがギリースーツを着て待ち伏せしてるかもしれないし。」
どうやら夜限は、草むらに隠れて待ち伏せする戦術を使うチームには、少し苦手意識があるらしい。
「今残り23 人だけど、チームはまだ6つあるぞ。」
「4 人 1チームだから、計算すると5チームがフルパーティで、残りの3 人も1チームだけど、既に仲間を1 人失っているな。」
「蒼、その通りだ。」
小林陽は同意し、右上の残り人数を確認してから続けた。
「次に毒圏が縮んだら、車を捨てなきゃいけない。そうしないと標的が大きすぎて、複数のチームから集中砲火を浴びやすくなるぞ。」
そう話している最中、ゲーム内で小林陽たち四人が道路を離れて草原を走っていたところ、坂道に差し掛かり、車が一気に加速した。
車が飛んだ。
正確には、一瞬だけ浮いたのだ。
突然、小林陽は車の目の前に、三人が集まって資材を交換しているのを見た。
よく見なければ気づかないほど、隠れていた。
その三人は飛んできた車に気づいたが、操作が間に合わず、小林陽が運転する車にそのまま轢かれてしまった。
右上の残り人数が20 人に更新され、残りチームは5つになった。
チームボイスチャンネルに一斉に声が上がった。
「陽ちゃん、すごい!俺も運転したい!車を運転させて!」
「陽くん、降りて資材を集めない?」
「だけど今、毒圏が縮んでるぞ。」
正直なところ、小林陽も車でキルしたことはほとんどなかった。
しかも今は大会で、一チームまるごと轢いてしまった。
今はただ一言言いたかった。
「ごめん、デコボコ道だと思ってた。」
だがそれを言う間もなく、引き返して三人のボックスから資材を集めようとした時。
四方八方から銃声が鳴り響き、小林陽が運転する車に集中砲火が浴びせられた。
しかも恐ろしいことに、4チーム、合計 16 人の火力だった。
「車から降りろ!降りろ!」
響合が慌てて叫んだが、鈴木蒼がすぐに言った。
「待て、降りるな......」
だが言い終わる前に、響合は勢いよく車から飛び降りた。
そして案の定、集中砲火を浴びてダウンし、助ける間もなくそのまま仕上げられてキルされてしまった。
「あらあ!」
響合がキルされてから5 秒後、小林陽はヘッドセットを外し、隣の三人の辛そうな表情を見た。
そしてパソコンの画面に表示された「5 位」「残り16 人」の文字に目を向けた。
小林陽は、まさか16 人が一斉に自分たち一つのチームを攻撃してくるとは思ってもみなかった。
運転していたジープは、ライフル弾 50 発で破壊されて爆発するのだ。
5 秒の爆発遅延はあったものの、恐ろしい交差火力の下では何の役にも立たなかった。
16 人の凄まじい集中砲火の前で、四人は少しも抵抗することもできず、いわゆる射撃技術を発揮するどころではなかった。
「なんであいつらそんなことするんだよ!不正チーミングじゃないのか!16 人、4チームが同時に俺たちを攻撃してくるなんて!」
響合の言葉に、鈴木蒼も不満そうな表情を浮かべつつ、不安そうに言った。
「何か裏があるのかな?」
「実力が負けたのなら認めるけど、今すぐ神の力を使って真相を確かめたいくらいだよ。」
いつもは穏やかな夜限までこう言うのを聞いて、小林陽は小さくため息をついた。
立ち上がって大型スクリーンと、周りでまだ戦っている選手たち、あるいは試合を終えて向こうの休憩スペースで食べ物を食べながらおしゃべりしている選手たちを見渡した。
小林陽は何か思い当たったように推測して言った。
「実況解説が俺たちを過剰に持ち上げすぎたんだろう。生き残っている他のチームはそれを聞いて、当然俺たちを強敵と見なして一斉に攻撃してきたんだ。」
そう言われて、鈴木蒼は考えてみて、裏があるわけではないとわかってほっとし、補足した。
「確かにそうだ。それにさっきは俺たちの標的が大きすぎた。車の音は確かに場内の注目を集めやすいし、毒圏ももうかなり小さくなってたし。」
夜限は黙って聞いていたが、それから言った。
「まあ、待ち伏せして集中砲火するなんて戦術、やっぱり嫌だな。」
「仕方ないことだけどさ。俺たちって本当に強いチームなのかな?」
小林陽はヘッドセットを置いたまま独り言を言った。
すると隣の響合が、テーブルに置いてあったオレンジジュースを一口飲んで、逆に楽観的になって言った。
「そういうことか!」
「道理でだよ。このチームに俺がいるんだから、残りの全部のチームが俺たちを標的にするのも当然だろ。」
「あらあ、こんな大会で強すぎるのも、悪いことだね。」
「ぷっぷっ」
二人が吹き出しそうに笑いをこらえた。夜限はミネラルウォーターを一口飲んで、むしろ大いに同意したように言った。
「響合がまだ実力を発揮してないうちに脱落しちゃったのは残念だよ。俺がちゃんと守れなかったせいだ。そうじゃなければ絶対俺たちの切り札になってたのに。」
響合は厚顔無恥に頷いた。
何か言おうとした時、パソコンの画面がまた更新された。
どうやら彼らが全員脱落した後、あの四つのチームが一斉に交戦し始め、第 1ラウンドの結果が決まったらしい。
「第 2 戦の準備だよ。トイレに行かない?」
夜限が提案すると、みんなは頷いて行くことにした。
ただ小林陽はツッコんだ。
「5 分間の休憩だぞ。目覚ましでもセットしようか?トイレに行ったら絶対遅刻するっていう伝説があるじゃん。」
鈴木蒼は、あの有名な「トイレの5 分間伝説」を聞いて笑いながら答えた。
「大丈夫だろ。少なくとも試合はちゃんとやってるし、チームが一つ欠けたらゲームは始まらないはずだ。」
「そうだね。」




