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第7話 楽器(上・後)

  日曜日。


  「お兄ちゃん、こんな早く出掛けるのは何するんだよ?」


  弟の悠はまだ目が覚めきっていない瞳をこすりながら、玄関で靴を替えている小林陽を見つめた。


  「大会に出るんだ、昼ご飯は俺の分作らなくていいよ。」


  「行ってくる。」


  戸はガシャリと閉まった。


  弟の悠だけが呆然と戸口を見つめていた。


  その後、彼は向きを変えてダイニングへと歩み、空っぽのテーブルを一目見て、つぶやいた。


  「でも朝ご飯も食べてないじゃん、朝食は食べるべきだろ、お兄ちゃんらしくないよ!」


  「それに何の大会なんだよ?」


  弟の悠にとって、お兄ちゃんはいつもだらけて无所事事な様子のイメージが強かった。


  だから、どんな大会が小林陽の興味を引くものなのか、彼には全く想像がつかなかったのだ。


  


  


  


  7 時 00 分。


  三人を前に、響合は頭を下げて謝った。


  「本当にすまない!大会会場が変わったから、こんな早く呼び出しちゃって、本当に申し訳ない!」


  鈴木蒼はスマホを持って、腰を曲げている響合の目の前に画面を見せて言った。


  「だけど大会の受付は9 時からだぜ。別に早くないだろ。」


  小林陽は、まだきちんと整えられていない響合の服を見て、さっき起きて慌てて駆けつけたのだとすぐにわかり、納得して言った。


  「たぶんギリギリに大会が始まる頃に着くのが、響合にとってちょうどいい時間感覚なんだよな。早すぎず遅すぎず。」


  「はいはい、電車が来たよ。」


  夜限は響合を起こして、彼の服を整えながら言った。


  「早く中に入ろう。」


  みんなは頷くと、この一行は新幹線に乗って大会会場へ向かった。


  ......


  道中、元々はガラガラだった電車には、次第に人が増えてきた。


  三人の頭には、次第に疑問が浮かんできた。


  やがて大会会場に着くと、彼らは巨大な倉庫と、同じように参加者と思われる人々が次々と倉庫の中に入っていくのを見て、鈴木蒼が不安そうに言った。


  「俺たち、ユニフォームがないけど、出場できないんじゃないか?」


  小林陽も続けて補足した。


  「そういえば、確か普通のPUBGの民間大会は18 歳以上が条件だったよな。」


  周りを見渡すと、参加者は全員揃いのユニフォームを着ており、年齢層もほとんどが大人だった。


  傍らにはマスクを着けたスタッフたちが、出入りの誘導や大会の進行、秩序の維持をしていた。


  夜限はこの光景を見て、昨日小林陽が来た時から言おうと思っていたことを思い出して言った。


  「そういえば、昨日から言おうと思ってたんだけど、ゲームの大会はたいていユニフォームがあるから、俺が用意しようかって。」


  「でも楽器屋に行って、そのあとゲームセンターに行って、夢中になって忘れちゃったんだ。」


  その後、三人は一斉に、まだ何も言っていない響合の方を向いた。


  響合は頭にない汗を拭いて、気まずそうに笑って言った。


  「あらあ、大丈夫だよ。そのまま入ればいいんだから。」


  「それに、このゲームは少し暴力的だけど、俺たち高校生なら大丈夫だろ。」


  「小学生じゃないんだし、入れるに決まってるだろ。」


  「それにネットでエントリーも済ませてるから、心配しなくていいぜ。」


  響合は二人の目がどんどん疑わしいまなざしに変わってくるのを見ていた。


  その瞬間、夜限が逆にそばから聞きかけてきた。


  「道理で言えば、民間の大会に応募するなら費用を払わなきゃいけないんじゃない?」


  「例えばこれらの費用は、会場の秩序維持だったり、機材のメンテナンス、あるいは機材のレンタルなどに使われるはずだろ?」


  じっと見つめられて肌がゾクゾクする響合は、誰かが自分に質問してくれたことにたちまち感謝し、口を開いた。


  「いやいや、無料だよ!しかも昼食まで用意してくれるんだぜ!」


  「大会は18 時 30 分に終わるんだ。」


  「ちょうど試合終わって帰れば食べられるし...」


  鈴木蒼が話を遮った。


  「よし、では俺たちに出場資格はあるのか?親愛なる響合よ、答えてくれるだろう。」


  「前に俺がついて行った大会みたいに、結局観客で終わるようなことはやめてくれ。」


  響合は冷や汗がじわじわ流れてきた。


  まさにその時、彼の目があるチームの4 人の出場選手の中に留まった——一人だけ服装が異なり、ユニフォームを着ておらず、代わりに軽便なジャージを着ている。


  しかも顔つきは幼く見えた。


  響合はそのジャージ姿の人物を指差し、みんなに見せるように話した。


  「あそこ見ろ!あのチームの中に、俺たちと同じように統一のユニフォームを着ていない人がいるだろ?しかもリーダーらしいやつだよ!」


  「中学生?」


  小林陽は疑問に思って言った。


  小林陽たち四人は、そのチームが倉庫に入っていくのをじっと見つめていた。


  中学生に見えるその人物は、スマホを手に持ち、隣のスタッフが持っていたQRコードの紙にかざしてスキャンすると、そのまま中に入っていった。


  「俺たち、本当に入れるのかな?」


  鈴木蒼がためらいがちに言うと、隣の響合は我慢できなくなってみんなを引っ張って進み、スマホを掲げて言った。


  「絶対入れる!絶対だ!早くQRコードをスキャンして応募情報を確認してくるぜ!」


  響合は入り口に着くと、QRコードをスキャンし、指で素早くスマホを操作してから、応募情報をスタッフに見せた。


  スタッフは淡く一目見て、四人の選手であることを確認すると、頷いて中に入っていいように合図した。


  響合は振り返って嬉しそうに三人に手を振り、入場するように合図して言った。


  「ほら、言っただろ?絶対大丈夫だって。」


  ......


  中に入ると、みんなはあちこちを見回した。


  外から見ると古びた倉庫だったが、中はとても広かった。


  真ん中は選手のバトルエリアで、前にはステージがあり、解説用の大型スクリーンが設置されていた。


  奥には選手用の休憩スペースがあった。


  全体のレイアウトをざっと確認した鈴木蒼は、不安そうに言った。


  「なんだかあまり正式じゃないな。」


  小林陽も頷いて同意した。


  「そもそも観客席がないし、この大会を主催しているのは何のためなんだろう?」


  「あらあ、そんなこと気にするなよ。俺たちがここに来たのは大会に出て、一位を取って賞金をもらい、最終的にドラムを手に入れて、部活の点検を無事に通過するためだ。」


  「部が廃止にならなければそれでいいんだ!」


  響合の言葉を聞いて、鈴木蒼と小林陽は確かにそうだと思い、深く考え込むのをやめた。


  そばの夜限が言った。


  「じゃあ大会のルールやタイムスケジュールは?それにどうやったら勝てるの?」


  「このゲームをやったのはまだ二日だから、大会の流れがよくわかってないんだ。」


  三人の疑わしい視線が一斉に響合に向けられた。


  どうやら三人とも知らないらしい。


  響合は平然を装って言った。


  「ちょっと待ってろ。」


  響合がスタッフのところへ走っていき、彼がスタッフに軽く会釈をして何かを話し、最後に小さな冊子を手に皆のところへ戻ってくるのが見えた。


  響合は小さな冊子を開き、それを見ながら試合のルールと流れを紹介し始めた。


  「『PUBG』百人サバイバル競技、二十五チーム、一チーム四人、全九試合。ポイント制で、順位ポイントとキルポイントがあって、最高得点を獲得したチームが優勝だ。」


  「各試合で、一位は十ポイント、一人キルするごとに一ポイント。」


  「そのうち......」


  「あらあ~」


  もったいぶって説明していた響合は、鈴木蒼にチョップを食らった。


  「やっぱり考えたら、どうしても一発入れたくなった。なんだ、お前、ルールを全然読んでなかったのかよ!」


  小林陽も、先ほど夜限から渡されたパンを食べながらツッコミを入れた。


  「しかも試合の要項、流れ、時間、場所とか、何も把握してなかったじゃないか。天然ボケか?」


  「響合が天然ボケだとは思わないよ。むしろ頼りになる。」


  夜限がそう言うのを聞いて、小林陽と鈴木蒼が何か行動を起こす間もなく、まず響合が感激して誇らしげに口を開いた。


  「あらあ、しょうがないだろ。ほら、もうルールは把握したじゃないか?俺ってば、すごく頼りになるんだぜ!」


  鈴木蒼は顔を覆い、小林陽は朝食代わりのパンを食べ続けながら、笑いがこみ上げてむせないように必死に耐えていた。


  夜限が言った。


  「試合の流れをもう少し続けてくれるか?例えば休憩時間とか。」


  「ゴホンゴホン~」


  響合はわざとらしく咳払いをしてから、口を開いた。


  「それじゃあ続けるぞ!」


  「十時十分に第一試合開始、十二時二十分に第三試合終了。各試合の間には五分間の休憩がある。」


  「それから十二時二十分から十三時二十五分までが昼飯タイム。その後は第九試合の決勝までぶっ続けで試合が行われる。」


  「決勝は十七時五十分終了予定。そこから得点を集計して、表彰して、写真撮影。終了予定時刻は十八時三十分ってところだ。」


  その話を聞き終えて、鈴木蒼は周囲を見渡しながら顎に手を当てて言った。


  「こういう大人顔負けのコンテストに参加するのは初めてなんだけど、なんだかずさんな気配が漂ってるな。」


  大体試合の流れを理解した小林陽も言った。


  「試合のスケジュールが詰まりすぎな気もする。まあ、俺は別にそこまで気にしないけど。」


  「まあまあ、安心しろってみんな!ちゃんとした大会だぜ。試合が終わって一位を取ればそれでいいんだよ。」


  小林陽は隣にいる参加者たちの揃いのユニフォームや、様々なスタッフの姿にちらりと視線をやってから口を開いた。


  「まあ、試合の設計には多少問題があるかもしれないけど、全体的にはまあまあってとこだな。必要な人員は一通り揃ってるし。」


  夜限は笑いながら尋ねた。


  「じゃあ、今は何をしようか? パンと牛乳でも食べない?」


  皆が夜限がリュックからそれらを取り出すのを見ると、ちょうど全員が小腹を空かせていたところだったので、素直にそれらを食べながら、行き交う人々の姿をぼんやりと眺めていた。

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