第9話 楽器(中・後)
みんながトイレから戻ってくると、響合はヘッドセットを装着し、真剣な顔で言った。
「じゃあ今回のラウンドは絶対一位を取るぞ。堅実にいくのはやめて、資源は全部奪いに行け。」
「ただし、最初は誰も降りてこない場所に着地するのがいい。そうしないと集中砲火を浴びて、俺が支援できなくなるから。」
響合の言葉を聞いて、夜限は頷いた。
鈴木蒼と小林陽は、「支援するのはお前だろ」と心の中で思いつつ、響合がゲームマップに打ったマーカーを見て、頷いてこの計画に同意した。
しばらくして。
パソコンの画面に表示された6 位を見て、響合は叫んだ。
「あいつら一体どうなってるんだよ!また俺たちを狙ってるじゃん!」
第 2 戦では、彼らは全員資材があまり豊富ではない場所に着地した。
安全だったのは良かったが、ギリギリでファイナルサークルに進んだものの、最終的にまた複数のチームと交戦した際、資材不足と弾薬切れで、当然のように全員脱落した。
でも幸い、俺たちは少なくとも11 人キルしたから、ポイントも11 点は確保できてるぞ。
このラウンドの戦果に、鈴木蒼はむしろ楽観的になっていた。
夜限は残念そうな表情で言った。
「最後は弾が切れちゃって、フライパンで一人倒しただけで終わっちゃった。本当に残念だよ。」
小林陽はコーラを一口飲んで、確信めいて言った。
「第 2 戦も最後はこんな包囲される展開だったな。どうやら俺たちがファイナルサークルに進めば、必ず残りのチームから集中砲火を浴びるらしい。」
「だから、これからの作戦は、資源が乏しい場所に着地するのは絶対にやめなきゃいけないな。」
鈴木蒼は第 2 戦の終了画面を見ながら分析した。
「じゃあ俺たちは順位を優先するのか、それともキルを優先するのか?」
「理屈の上では、ファイナルサークルで複数のチームに狙われる以上、いい順位を取るのは難しい。」
「だから......」
真剣に聞いていた夜限が、目を輝かせて興奮して言った。
「キルを優先するんだ!」
響合は目を閉じて考え込み、大いに同意したようだった。
今回も一人もキルできなかったけど、そんなことはお構いなしに言った。
「じゃあやっぱり資源が集中してる場所に降りるのが一番だな。着地してすぐ銃を拾って、どんどん敵を探せ。俺の天才的な射撃の前に、俺と撃ち合う敵は......」
「唯一の結果は死だ。」
小林陽と鈴木蒼は、またお互いに顔を見合わせて呆れた。
そんな中、夜限が第 3 戦の開始画面を見て言った。
「じゃあ響合の作戦通りにいこう。」
「まあ、俺が足を引っ張らなければいいんだけど。」
鈴木蒼の言葉に、響合が答えた。
「蒼、俺の後ろについてきりゃ足を引っ張ることなんてないぜ。」
小林陽はパソコンの画面に映るロビーで、二人が殴り合っている光景を見ながら、ふと考えが飛んで言った。
「第 3 戦が終わったら昼食だな。そういえば何食べるんだろう?」
夜限が答えた。
「大会の昼食って、全然食べたことないから、ちょっと楽しみだね。」
響合はキーボードを操作して、ゲーム内で鈴木蒼の殴りを避けながら言った。
「よし、今回は気合い入れて、さっさと一位を取って、美味しく昼食を食べようぜ!」
......
「なんでだよ!今回も8 位なんて!」
「でも、少なくとも9 人キルしたじゃないか。」
「相手の作戦も、俺たちへの狙い方がどんどん多様になってきたな。」
三人は休憩スペースに座って、こんな話を交わしていた。
「ねえ、みんな、持ってきたよ。」
三人が振り向くと、夜限が弁当を4つ手に持っていた。
「ほら、美味しそうだね。」
小林陽が弁当を受け取ると、隣の鈴木蒼が言った。
「定番の幕の内弁当だね。」
小林陽もよく眺めて言った。
「Kitchen Originのだね。確か500 円くらいだったかな。」
「よし、外で食べようぜ。」
響合の言葉に三人は立ち上がった。休憩スペースでは、他のチームの選手たちがその場で食事を済ませていた。
「確かに、ここは人が多すぎて、他の人の食事の邪魔になるもんね。」
「外の天気がまあまあいいからじゃないの?」
鈴木蒼の言葉に小林陽がツッコんだ。そしてみんなは、倉庫の外の木陰に移動した。
......
「ご飯に、魚のフライ、唐揚げ、サラダ、それに沢庵が二切れ、すごく豪華だ!」
夜限は嬉しそうにそう言うと、食べ始め、満足げな表情を浮かべて感想を述べた。
「うんうん、米の甘み、魚の海の香り、鶏の新鮮な活力、大自然の風、そして程よく味付けされた添え物の沢庵、なかなかいい味だ。」
三人は夜限のそんな感想を聞いて、互いに顔を見合わせた後、同じ規模の弁当を食べ始めた。
「そんな感じするか? ごく普通だろ、俺にはそんな味は全然わかんないけど。」
小林陽は心の中でそう呟き、それから鈴木蒼と響合の表情をちらりと見た。見るからに、同じ考えを持っているようだった。
「あらあ、確かに悪くないね。」
鈴木蒼がそう言った。
夜限に応えたようだったが、響合はただガツガツと掻き込んでいて、口の端から声を上げた。
「午前中ずっと腹ペコでさあ、本領発揮できなかったんだよ。やっとメシにありつけた。」
その様子を見て、小林陽は笑みをこぼし、黙々と昼食を口に運んだ。
空はどこまでも青く澄み渡り、そよ風に乗って、木陰と、そして試合に臨む四人の少年たちを優しく撫でていく。
この大自然の風味を感じながら、小林陽は心の中でそっと思った。
「まあ、確かに味はなかなかいいかもね~」
......
昼食を終え、いわゆる作戦について少しおしゃべりした後、この四人はまた試合会場に戻った。
「これからは苦戦だな。」
小林陽がそう言うと、鈴木蒼は不安そうに言った。
「6 試合連続でやるんだから、主催側に言って、もう少し休憩時間を増やしてもらわないか?」
響合は鈴木蒼の肩を叩いて言った。
「大丈夫だよ。俺たちはさっさと決着をつけるんだ。たくさんキルして、さっさと死ねば、休憩時間は十分にあるじゃん。」
夜限はヘッドセットを装着し、興奮して言った。
「みんなのために、たくさんキルして、キルポイントを稼ぐぞ。」
ゲームがまた始まる画面を見て、ロビーに入った小林陽は言った。
「じゃあこれからの数試合は、昼食時に決めた作戦通りに進めよう。」
三人は一斉に答えた。
「了解。」
それから小林陽は少し考えて、椅子を少し後ろに引き、隣の三人に集まるように合図した。拳を挙げて笑いながら言った。
「戦前に士気を上げるべきじゃないか?」
三人は意味を理解して、それぞれ笑いながら拳を挙げ、一列に並んで拳と拳をぶつけ合った。
四人は一斉に叫んだ。
「ファイト!!!!」
......
......
「最終戦だ!決勝だ!」
夜限がそう叫ぶと、響合も異常に興奮して言った。
「今回はあいつらをぼろ負かして優勝するぜ!俺をバカにした報いだ、ハハハ!」
鈴木蒼は冷静に黙って分析した。
「第 4 戦は10キルで5 位、第 5 戦は12 位だったけど、幸いキル数も10 人だった。」
小林陽も隣で補足して言った。
「そして第 6 戦はひどく狙われて、20 位しか取れなかった。だけど......」
響合の方を見て続けた。
「本当に思わなかったよ、響合一人になった時に、さらに5 人もキルしたなんて。」
夜限はそれを聞いて笑った。
「だから言っただろ、響合を信じれば間違いないって。彼は俺たちの切り札だよ。」
「だけどやっぱり待ち伏せ戦術は嫌だな、ひどすぎる。」
鈴木蒼は頷いて、大いに同意した。
「夜限が場内で最もキル数が多いんだから、そういう戦術を受けるのも当然だよ。」
「あらあ、そんなことないよ。みんなすごいし。」
夜限は褒められて照れくさそうに言った。
鈴木蒼は分析を続けた。
「第 6 戦の後、第 7 戦は慎重になったから、響合は一人もキルできなかったけど、キルポイントは10 点取れた。」
「そして第 8 戦はまた早めに狙われて、15 位だった。」
そう言いながら鈴木蒼は、意外そうな目で響合を見て続けた。
「だけどまた響合一人になった時に、また5 人キルして、最終的にこの戦のキルポイントは10 点になった。」
響合はそれを聞いてご機嫌に言った。
「あらあ、やっぱり俺が頼りだな。順位ポイントはあんまり取れなかったけど、キルポイントで追いつかなきゃ、優勝は無理だったぜ。」
小林陽はコーラを一口飲んで言った。
「だから残りの最終戦だけど、これまでのキルポイントで言えば俺たちが場内トップだろ。最後はまた堅実にいけば、優勝できるはずだ。」
みんなは笑った。どうやら優勝できると、本当に確信しているようだった。
「ゲームが始まるぞ。」
夜限がそう言うと、みんなは再び目の前の試合に集中した。
たった5 分間のやり取りで情報を共有したのは、ただ今の状況をはっきりと把握し、士気を上げるためだった。
その時、鈴木蒼がゲームの待機ロビーで言った。
「だけど正直、なんで主催側はゲームのポイントランキングを公表しないんだろう?」
「蒼、それはさ、強いチームに一人だけめちゃくちゃキルしてる奴がいるってみんなに知られたら、他の奴らがやる気なくなっちゃうから、主催側が良くないと思ってるんだぜ。」
響合がそう言うと、小林陽はツッコんだ。
「そうかな?俺はむしろ主催側が適当なだけだと思うけど。」
夜限は相変わらず目の前の画面に集中しながら言った。
「だから今の作戦はどうする?最後の戦だし、しかも最初のエランゲルマップだね。」
「やっぱりキルを優先しよう。順位は堅実にいっても必ずトップ3に入れるとは言えないから、キルポイントで稼ぐしかない。」
小林陽がそう言うと、隣の鈴木蒼も大いに同意して言った。
「俺もそう思う。もう最終戦まで来たから、ほとんどの奴は射撃技術も対戦力も落ちてきてるし。」
「蒼、それは違うぜ。射撃だけは俺は絶対に落ちない。ずっと絶好調だし、対戦で負けたことなんてない。」
最終戦ということで、響合は異常に興奮していた。
そんな中、夜限はみんながそう考えているのを見て言った。
「じゃあどこに着地する?」
小林陽は少し考えて言った。
「やっぱり第 1 戦と同じ作戦でいこう。俺たちはミリタリーベースに直接降りる。」
「できるだけ一緒に行動して、もう分散しちゃだめだ。そうしないとすぐにやられちゃう。着地したらすぐに銃を拾え。」
こうして、みんなは第 1 戦の作戦を実行することに一致した。
場内アナウンスが流れた。
「ゲームスタート!」
飛行機がマップ全体を横切った。そのルートは、第 1 戦とほとんど同じだった。
「夜限、できるだけ響合の近くにいて。」
「頼むよ、そこまでする必要あるのか?俺は毎回 5 人キルしてる男だぜ。」
「二回だろ?」
そう言いつつも、ミリタリーベースに近づいた飛行機から飛び降りて降下すると、瞬く間に夜限と響合はぴったりとくっついていた。
「すごい人だな、今回は。みんな気をつけて。」
小林陽は上空からミリタリーベースに向かいながらマウスを動かし、周囲を確認していた。
その時鈴木蒼が声を上げた。
「どうやら5チームくらいいるみたいだ。」
「そうか、それなら最高だ!あいつらをぼろ負かして、FPSの天才少年が何者か見せてやるぜ!」
またしてもパラシュートが開き、全員が着地した。
「やばい。」
小林陽が呟いた。
自分が着地した場所には銃が一本もなく、メディックキットとバックパックしか落ちていなかったのだ。
「俺、最初に脱落するかもしれない。」
耳元で足音がどんどん近づいてくるのが聞こえた。
彼は一軒の家の中に降りただけで、周りは何もない更地だった。
今外に出ればすぐに敵に見つかり、攻撃されるのは明らかだった。
「俺がそっちに行く。」
幸い、鈴木蒼は小林陽の比較的近くに着地していた。
小林陽の報告を聞いて、急いで向かってきた。
そんな時、小林陽は思い切って外に出ようと決め、ドアを開けた瞬間、ちょうど外にいた銃を持った敵と鉢合わせた。
「終わった。」
小林陽はそう心の中で思った。
向かいの敵が小林陽を狙って撃とうとしたその時、横から銃声が鳴り響いた。
鈴木蒼がその敵を攻撃していたのだ。
だが残念なことに、距離が遠かった上に、鈴木蒼が持っていたのはゲーム内で威力が最も小さい拳銃 P18Cだったため、ほんの少しのダメージしか与えられなかった。
「陽、心配するな。もう着いたぞ。」
だが幸い、この拳銃を使っていたのは鈴木蒼だった。
彼の射撃の才能は決して劣らず、威力が小さく連射速度の速いこの拳銃でも、リコイルを極限まで抑え込んでいた。
弾丸は全て敵の頭部に命中し、ダウン、そしてキルされた。
「ありがとう蒼、助かった。」
言い終わると、小林陽は敵のボックスのところに行き、資材を集め始めた。
「無事でよかった。」
小林陽は敵が落としたAKを手に入れ、弾を込めようとした時、耳元に声が聞こえた。
「だけど俺は弾が切れちゃった。さよなら。」
右上に誰かがダウンし、続いてキルされた文字が表示された。
「残りは頼むぜ!」
小林陽はそれを見て、何も言う暇もなく、弾を込めたAKですぐさま遠くの鈴木蒼をキルした敵を狙い、瞬く間に数発の弾を撃ち出した。
全弾頭部に命中した。
「仇を討ったぞ。安心しろ、絶対勝つ。」
耳元に夜限の声が届いた。
「蒼くんは残念だったけど、僕たちは必ず一緒に優勝しよう。」
そうしているうちに、パソコンの画面右上に再び二人がノックダウンされキルされたという表示が流れ、チーム数も一つ減った。
「ははっ、蒼、安心しろよ。俺がいるから、お前がいなくても勝てるって。早めに休んどけよ。」
響合がそう言うと、チームのボイスチャンネルから鈴木蒼のツッコミが飛んできた。
「知らない人が聞いたら、その二人をお前が倒したと思うだろ。実際はお前が囮になって敵の注意を引きつけて、夜限に仕留められただけじゃないか。」
響合が言った。
「おいおい、何言ってんだよ。これが俺の手柄じゃないって言うのか? 俺が誘い込まなきゃ、夜限だってキルできなかっただろ。」
夜限が言った。
「まあまあ、陽くん、合流はいつ頃になる?」
陽が言った。
「もう少し物資を集めてからにするよ。」
夜限が言った。
「わかった、気をつけてね。」
しばらくして。
小林陽が車を運転して夜限と響合のところに着き、二人が車に乗り込んだ時、空から飛行機の轟音が聞こえてきた。
「エアドロだ。すごく近いぞ。」
小林陽がマップを見ながら言うと、響合が言った。
「前回の第 1 戦は行かなかったけど、今回は絶対行くぜ!」
「わかった。」
小林陽は同意した。
資材が多ければ多いほど、ファイナルサークルまで残れる確率が上がるからだ。
赤い煙が立ち昇るエアドロに近づいた時、小林陽は車を高台に停めて、二人に告げた。
「ここで降りろ。俺が一人でエアドロを取ってくるから、周りを警戒しててくれ。」
「小陽、じゃあ俺も一緒に行こう。カバーするから。」
夜限の提案を聞いて、小林陽は少し考えて答えた。
「わかった。」
「響合、お前はここで周りを見張っててくれ。」
「安心しろ。任せておけ。」
小林陽は車を運転して、エアドロが落ちている更地に向かった。そして疑問に思って言った。
「どうして周りに誰もいないんだ?」
さっさと済ませようと思った小林陽は、急いで車をエアドロの横に停めて、すぐに降りて資材を漁り始めた。
夜限が隣で言った。
「どうやら俺たちが一番乗りみたいだね。」
「違う。中が空っぽだ!」
「え?」
その言葉が終わると同時に、遠くから大きな銃声が鳴り響いた。
車の外にいた小林陽は、瞬く間にヘッドショットでダウンした。
「AWMだ。ボルトアクションスナイパーだ。夜限、俺を助けに来るな。早く車に乗れ!」
「いや、そんなの嫌だ!」
その時、響合の方から同時に大量の銃声が聞こえてきた。
「すごい人だよ!」
「やばい、これは罠だ。夜限、早く車で響合のところに行って、急いで支援しろ!」
「わかった。」
響合が隠れている場所から、あちこちで銃撃戦の音が鳴り響いた。
響合も必死に叫んでいた。
「俺をバカにするなよ!」
パソコンの画面に文字が次々と表示され、合計 5 人がダウンし、すぐさまキルされた。
「ごめんな、みんな。」
小林陽はその場で一人、自然に流血しながら言った。
画面右上の文字を見ると、また誰かがダウンし、キルされていた。
「ひどいだろ!こんなに大勢で一人を攻めるなんて。勝負は一対一でやれよ!」
隣に座っていた響合がヘッドセットを外し、そう叫んだ。
小林陽が隣を見ると、鈴木蒼もヘッドセットを外し、響合の肩を叩いて笑いながら何か言っていた。
まあ、この光景を見て、小林陽は謝る必要もないと思った。
最後に残った一人、夜限に向かって言った。
「さっき響合が5 人キルしたから、もう5 点のキルポイントが入ってる。前のを合わせて4 点、今回は今のところ9 点だ。」
「このラウンドは堅実にいけばいい。」
「いや、堅実になんて言わなくてもいい。気楽にやれよ。もう勝ったも同然だから。」
夜限は車を運転しながら、黙って答えた。
「わかった。ちゃんと生き残って、いい順位を持ってくるね。」
「うん。プレッシャーを感じないで。頑張れ!」
小林陽が操作するゲームのキャラクターが倒された直後、彼の肩がポンと叩かれた。
小林陽が振り返ると、後ろに立っている二人の人物を見た。
響合が言った。
「陽ちゃん、あっちで観戦しようぜ!」
小林陽は立ち上がり、ステージ中央の大画面を見つめながら、疑問の声を上げた。
「主催者は許可してるのか? 普通、選手は試合が終わるまでずっと仲間と一緒にいるべきじゃないのか?」
鈴木蒼がその時口を開いた。
「大丈夫だよ。ほら、あっちにはもう座って観戦してる奴らがいるだろ。」
「迷惑にはならないさ。俺たちは大人しく夜限のプレイを見てればいいんだ。」
鈴木蒼がそう言うのなら、と小林陽は少し考えてから、ただ一言こう返した。
「わかった。」
そして、三人の奴らは選手用の作戦ブースから立ち去った。
ただし、立ち去る際、一人ひとりが夜限の背後を通り過ぎるたびに、そっと彼の肩を軽く叩いていった。
響合が言った。
「じゃあな、夜限。ロック部の名に恥じない活躍を頼むぜ。」
蒼が言った。
「夜限、気楽にやれよ。負けても大丈夫だからな。」
陽が言った。
「頑張れ。」
夜限はキーボードとマウスを操作しながら、ヘッドホン越しにも響合、蒼くん、陽くんの声が聞こえてきて、笑みを浮かべてこくりと小さく頷いた。
......
三人が観戦ホールに着き、大型スクリーンに映るゲームのゴッドビューを見て、小林陽は思わずツッコんだ。
「なんで解説がいないんだよ。おかしいだろ。」
鈴木蒼が返事をしようとした時、響合が何かに気づいてすぐさま言った。
「陽ちゃん、見ろ。あいつがお前を倒した奴だぜ。」
小林陽は5つのゲーム分割画面の中で、響合が指した人物に視線を向けた。
よく見ると、彼が手に持っている武器は、まさに自分を倒したボルトアクションスナイパーAWMだった。
しかもチーム名は「Dream」。記憶に間違いなければ、と小林陽は口にした。
「Dreamって、英語で夢って意味だよな?」
その時、同じくそちらを見ていた鈴木蒼が言った。
「このチーム、今回はもう彼一人しか残ってないね。」
「でもギリースーツを着てるし、武器もいいものを持ってる。」
「どうしたの蒼、夜限のことが心配なのか?あらあ、俺が言うには全然心配いらないぜ。」
響合はそう軽く流して答えた。
小林陽も黙って画面を見ながら言った。
「ファイナルサークルだ。残りはあと5 人だ。」
「夜限のことは確かに心配だよね。待ち伏せしてる奴には、どうも苦手なんだよね。」
鈴木蒼は持ってきたオレンジジュースを一口飲んで言った。
「でも今負けたとしても、どうにか5 位には入れる。俺たちのキルポイントを合わせれば、今回のポイントはどう考えても十分なものになるよ。」
「だから絶対優勝だってば。心配するなよ。俺がいるんだし、さっき俺が5 人もキルしたじゃん。まあ、これがいわゆる天才少年ってやつだよ。仕方ないね。」
小林陽は笑ってそれを認めるように、声を上げた。
「よし、じゃあ落ち着いて試合を見よう。」
......
ゲーム内。
ファイナルサークルの中、長久夜限は小さな家の中に伏せていた。
外からはあちこちで銃撃音が鳴り響いていた。
毒圏が縮まっていた。
だがちょうど長久夜限のいる場所に向かって縮まっており、彼の位置は安全圏内だった。
銃撃音はますます激しくなっていた。
長久夜限は耳元に響く音を聞きながら、ただ一つ思った。
「本当に面白いな。」
右上の残り人数が更新され、生き残りはたった二人になった。
長久夜限はそろそろ出てもいいと思った。
対戦で負ける気なんてしなかったからだ。
「今毒圏が縮まってるな。うん、安全圏は隣の更地だ。向かっていい。」
「あとはあの敵を倒せばいいだけだ。」
そう思うと、長久夜限はキャラクターを操作して、音を立てずにドアを開けた。
まず煙玉を何発か投げてから、しゃがんでゆっくり外に出た。
それから草むらを這って進み、バックパックの中にあった煙玉を全部投げ捨てた。
時間がゆっくりと流れ、安全圏の範囲はますます狭くなっていった。
煙が一面に立ち込める中、長久夜限は安心して待機していた。
突然、敵が現れた。
長久夜限は画面を見ると、一面の白い霧の中からほんの少しだけ覗いた銃口が、まさにボルトアクションスナイパーAWMだった。
今、銃口は彼の頭を狙っていた。だが夜限は慌てるどころか、むしろ嬉しそうだった。
なにしろ彼が手に持っているクロスボウも、一撃必殺の武器だった。
しかもすでに発射態勢に入っていた。
両者は、真正面から向き合っていた。
どちらも相手の頭部を狙っていた。
だがその時、長久夜限は何かに邪魔されたように、手が一瞬遅れた。
「どいつが仕事の伝票を送ってきたんだ!早く遮断しろ!」
そう思った瞬間、「バンッ」という銃声が鳴り、夜限が操作していたキャラクターはヘッドショットで倒された。
ゲーム終了。




