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遊人現代忍者、王国ニ舞ウ  作者: 樫屋 Issa
探偵 帝国ヲ駆ケル
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第百六十四話 画家ノ狂気 後編

〜3日目〜


「タラッサ・ミラーズ、ニトクリス商店老夫婦の次女、上に兄と姉が一人ずつ。帝国大学を卒業後、国内最大手道路工事ギルド『グローリーロード』に就職、現場作業員から異例のハイスピード出世、現在は現場統括兼ギルド内のアイドルとして活躍されているそうです。彼女の指揮だと作業効率が三割良くなるとかナントカ」

「当日のアリバイは?」

「該当時間に工事現場で指揮していたという複数の証言がありました・・・ただ最近グローリーロードは星の智慧社と契約したそうで、その提案を出し、ギルドにかなり有利な契約を結んだ立役者が」

「タラッサ・ミラーズというワケか。皆、ニトクリス商店の菓子は美味かったか?」

「はい、とても」

「それじゃあ捜査兼物資調達の一環として週一でニトクリス商店の菓子を購入するのを許可する」

「わーい」

「館長室での捜索結果だが封筒の一つに血液が付着した程度で盗まれた物は無かったそうだ。星の智慧社からの寄付の方はどうなっている?」

「既に搬入が始まっています」

「レムリア殿下は?」

「治療は済みましたが『今日は休む』と、代理としてアルバート殿下を指名されました」

「落ち込んでいたか?」

「まあ、それなりに」

「だろうな、ワシもそうだった」


一方、美術館側スタッフも大忙しである。

そんな中、クリスティーン館長はニヤニヤしながらリストと搬入される美術品をチェックしていた。


「【夏のあの日】はもう貰ってる【陽気な英雄】良し【金貨杯】良し【魔炎剣アビス】良し【キノ菩薩像】良し」

「館長!リストに無い桐の箱に入った荷物が一つ出てきました!」

「え?何でしょうか?サイズ的に茶器?焼き物の類ですかね?」


クリスティーンが箱に触れようとするのを様子を見に来たオーギュストが慌てて止めに入った。


「待った、触らずにゆっくり離れて下さい」


その言葉にクリスティーンも意図を察して離れる。


「罠ですか?」

「恐らくは。下手に壊すのも悪手ですな、いざという時に眠り薬を噴射されても厄介だ。何処か【風車】から離れた場所に保管は出来ませんか?」

「それでしたら東館の倉庫が良いですね」

「おーい、プルート君。話は聞いていたな?学芸員の皆さんと慎重に運んでくれ」

「了解しました」


プルートは学芸員を伴って謎の箱を運んで行った。他の懸念はと言うと・・・。


「ステイギア隊員、クルアハ隊員は?」

「体調が優れないので休みます(私が直ぐに抜けちゃって一晩中相手してたみたいだからな〜)」

「そうか、お大事にと伝えておいてくれ」

「ええ、心遣いに感謝します」


そろそろ搬入が終わる。

不審なのはやはりあの桐箱か、皆考える事は同じなのか桐箱が保管された倉庫の方にどうしても気が向いてしまう。


「ステイギア隊員、魔力は?」

「未だ異常はありません」

「むぅ、そうか・・・各員、事前に通達した通り巡回や運搬、トイレ等は必ず三人以上一組で移動する事」

「「「了解!」」」


それぞれ持ち場に移動するが、オーギュストの表情は晴れない。


「変装に妖精魔法、驚きはしたものの過去の犯罪記録から大きく外れたモノではなかった。今日は一体どういった手で来る?」


オーギュストが思案していた頃、館長のクリスティーンは学芸員の一人から一つの疑問を投げかけられていた。


「あの、館長。【名工グロッグの漆塗り金箔椀】はまだですか?」

「はい?リストの寄贈品は全て搬入したハズですが?」

「またまた〜、リストに書いてあったじゃないですか〜。私、茶器や食器に目がなくて【名工グロッグの漆塗り金箔椀】が入って来るって聞いて楽しみにしてたんですよ?」


口をぱくぱくさせながらクリスティーンは過去のやり取りを思い出してみる。


『【夏のあの日】【陽気な英雄】【金貨杯】【魔炎剣アビス】【名工グロッグの漆塗り金箔椀】ほうほう絵画に武器に陶器漆器の類、石像銅像等々のスタチュー類、これがどうしましたか?』


慌てて手元のリストに目を通す。


「【夏のあの日】【陽気な英雄】【金貨杯】【魔炎剣アビス】【キノ菩薩像】【アオイのアクアマリン】【猛将クロス像】・・・まさか例の桐箱は!!」


倉庫へ走るクリスティーンを憲兵隊員が慌てて静止する。


「館長、何を!?いけません例の箱には近づくなと少佐から・・・」

「これは皇女として、そして芸術を愛する当美術館館長としての命令です。私にあの箱の中身を鑑定させなさい!!」


憲兵を押しのけ桐箱を空けて目を血走らせながら中身を吟味する。


「この年月を経た艶と透明感は決して偽物では出せない・・・ではやはり本物の【名工グロッグの漆塗り金箔椀】」


ふと昨夜の館長室での現場検証を思い出す。


『盗られた物はありませんかな?』

『ええ、問題無さそうです。例え盗られたとしてもお金になる物はありませんから・・・あら?この封筒血が付いてる』

『恐らくナイアールが触ったのでしょうな、中身は?』

『明日届くアカギ氏からの寄贈品のリストですね。中身は特に汚れてはいませんね』

『ふむ、うっかり手を着いて汚れたか・・・深手を負っていたのだ、そういう事も・・・あるか?』


クリスティーンの肩がわなわなと震える。


「そっか、手を着いたんじゃなくて血濡れた手で偽のリストとすり替えたんだ・・・そこまでやるかっ!!!(最初っから偽のリストを渡しておけばこんな手間は無いのに。いえ、違うわね、一度本物を渡す事で後から盗み見て偽のリストを作ったという言い訳が立つのか、でも)そこまでやるかっ!!!!!」


あまりの絶叫に驚く憲兵や学芸員達、だが叫んでばかりもいられない。


「そうだ金箔椀が本物と言う事はナイアールの罠は別にある。急ぎ少佐に報告を!」


一方で大絶叫を聞いたオーギュストはビクッと肩を震わせ【風車】が飾られている方を見た。

今回、クリスティーンの絶叫が功を奏した。

タイミングがドンピシャだったと言っても良い。

丁度、【風車】が展示されている壁が刃物によってくり抜かれようとされていた。


「おいおいおいおい、待て待て待て待て!!!」


その声に驚いたのか一瞬だけ刃物の動きが止まるが即座に作業を再開、【風車】は壁ごと隣の部屋へと持ち去られてしまった。


「くっ!巡回は何をやって・・・どうせ眠らされたか、総員!隣室に向かうぞ!!」


しかし隣室には一部地域で使われる寝具『オフトゥン』で丁寧に眠らされた憲兵隊員以外は【風車】を外された壁の残骸しか無い。


「ヤツは一体何処へ?」


そこへ遅れてクリスティーン館長も全力疾走で駆けつける。


「ハアハア・・・彫刻展示室です少佐、ナイアールは信じ難い事に【キノ菩薩像】に変装して侵入したんです!」

「何ですと!?どうして分かったかは後ほど。総員、彫刻展示室だ!」

「ああ、置いて行かないで」

「クリスティーン姉様は休憩してから来て下さい」


走る一同を背後から眺める影に気付かぬまま。

そして展示室で一行が目にしたのは異様な光景だった。


「彫像が・・・増えてる」

「こんな手で来るとは」


そう、どうやったのかナイアールは偽物の像を大量に配置していたのだ。

今まで黙っていたアルバートが前に出てスラリと腰から下げた剣を抜き像の一つを貫いた。

するとどうだろう、像は空気を吹き出ししぼんでいくではないか。


「皮袋を像の形に加工して中に風の魔石を仕込んで膨らませていたのか、これなら持ち運びの時は魔石を停止させ小さく畳んで隠す事も出来る。ん?姉上?」


遅れて来たクリスティーンが再び全力疾走&アルバートを展示室から引っ張り出し右ストレートを放つ、その光景は昨夜のナイアールもくやの綺麗なフォームであった。


「こんのおバカ!!本物に当たったらどうする!!!」


オーギュストも追随して補足を加える。


「そうですな、それに迂闊に破壊すれば仕込まれている煙幕や眠り薬が飛散する可能性もあります」


そうしている間にも部屋を見張っている憲兵隊員がざわめき出す。


「おい、今あの辺動かなかったか?」

「どこだよ。それよりも同じ像が三つ並んでるところ怪しくないか?」

「ひえ!?今、像と像の間に人影が走った」


皆、隠れたナイアールに戦々恐々としていたが、しかし憲兵隊には秘密兵器があった。


「ではステイギア隊員、頼むぞ」

「ええ、任せて下さい。魔力解放」


ステイギアの魔力探知は超広範囲だけが取り柄では無い、限定範囲内の超々々精密探知、これが今回の切り札である。


「(更に昨晩タップリ魔力を注いで貰ったからね)これなら・・・!?」


ふと、腹の奥に未だ収まっていた魔力の気配がゴッソリ消えた。


「え?嘘!ナイアールってこんな事まで出来るの!?」


魔力が一切感じられないのである。

ステイギアの背に冷や汗が流れる。


「(落ち着け、彼は魔法が不得手、魔力操作を意図しては出来ないと聞いた。だったらこの魔力消失は無意識で行なったという事)だったらこうだ!!」


ステイギアは昨夜の守鶴前との会話を思い出す。


『今のお主にも視えるじゃろ?これらの作品から放たれる独特の魔力を、想いと歴史を重ねに重ねた作品はこうやって魔力を放つ、そう、無機物にも条件次第で魔力は宿るのじゃよ』


「ナイアールが完全に気配と魔力を消せると言うならば、これは偽物に仕込まれた魔石、これは本物の彫像・・・見つけた!何も感じない空白地帯、あっちの真ん中の女神像、少佐!!!」

「心得た!!」


ステイギアが指し示した場所を憲兵隊員が囲んでいく、既に像から焦りによる冷や汗が流れていた。


「追い詰めたぞナイアール!!」

「チクショー、何故バレた!?」

「簡単です。無機物であっても人を惹きつける美術品には魔が宿る。貴方は気配も魔力も不自然に消し過ぎたが故にこの魔力だらけの部屋ではかえって目立ってしまったんです」


哀れ大した抵抗も出来ずナイアールは捕縛されてしまったのだ。

此処に勝敗は決した。

盗まれた【風車】は回収され美術館側の勝利と成った。


「結局、今回のは何かの遊びか試しだったか?どれもこれも以前の記録で見た手口だ。最後の無機物に変装するのは多少面食らいはしたが、それだって普段の変装の延長だ、皮袋を使った風船人形も過去の事件資料で読んだ事がある。無抵抗で捕まったのも気に食わん」


とはオーギュストの弁。

ナイアールは既に牢の中だ・・・彼の事だからステイギアが帰る頃には何事も無く秘密基地に戻っているかも知れないが、そこから先は刑務所の仕事であって憲兵隊の仕事ではない。

クリスティーンもナイアールに話が有ると言って秘書官、皇帝と一緒に刑務所へ行ってしまった。


「なのに何で」


本日の業務は終了、帰宅命令が出たにも関わらずステイギアはこうして美術館に残っているのだろう?


「でも・・・この魔力は確かに」


自身の感覚を信じ館長室の扉を開ける。


「やあ、ステイギア」

「クリスティーンお姉様!?」

「悪いけどこの縄解いてくれる?」


そこには椅子に縛られたクリスティーンが座っていた。

そうしてステイギアの脳裏に今までの光景が浮かぶ。

何故、二度目に全力疾走したクリスティーンが息切れを起こしてなかったのか?

何故、兄アルバートに食らわせたパンチが昨夜のナイアールを彷彿とさせたのか?

何故、クリスティーンは展示室に立ち入らなかったのか?


「それじゃあ刑務所について行った方は!?」


〜一方その頃 刑務所〜


牢に入ったナイアールを皇帝キンメリア、秘書官エミリー、そしてクリスティーンが見ている。

人払いはしてある。ここからは秘密のお話だ。


「それで、今回の牢は自信があるのかい?」

「無論です」

「ほう?と言うと今回は愛しの妻達を除外して作ったのかな?」


その言葉にキンメリアとエミリーは顔を見合わせニンマリ笑う。


「ふふふ、今回は逆!逆なのです!!」

「は?逆だと?」

「そう、貴方の愛する妻達、我らが姉妹は既に我が国の様々な組織に入り込んでいる。除外は不可能」

「だから考え方を変えました。これだけの人数の妻が居るなら貴方に出て欲しくない、危険なナイアール活動を自粛して欲しい、貴方を独占したい勢力、集団が必ず存在すると、そして見つけました」

「我らは彼女達と協力して貴方を独占して愉しむ為の完璧な牢を作り上げたのだ」


そうして二人は勝利を確信しての高笑い。

しかしナイアールは肩をすくめた。


「やれやれ、竜二さんを独占したい“集団”ってバカかな?本当に独占したいなら、一人で交渉するべきじゃない?この“私”みたいにね」

「「!!?」」


その女の声に二人は驚愕する。

それは、ナイアール(・・・・・)にとって絶好の隙だった。

今まで黙っていたクリスティーンの手がスルスルとエミリーのスカートのポケットへと伸びる。


「ダメですよ秘書官殿、大事な大事な牢の鍵をこんなところに入れてたら盗まれちゃうじゃない、こんな風に♪」

「バカな、ナイアールだと!?」

「それじゃあこっちは?」


牢の中のナイアールから一瞬ポワンと煙が吹き出し現れたのは狐獣人。


「どもども王国公爵にして守鶴前様の一番弟子キンバニー・ダンドレジーで〜す。今日は隠形の術の練習に来ました」

「とまあ、そういうワケだ。あの時ステイギアが彫像展示室に集中してくれて助かったぜ、広範囲に索敵されたらバレてたかもな・・・それでも違和感には引っ掛かっていたみたいだが」


もしあの時、展示室の外を索敵されていたならクリスティーンの立っている場所の魔力が不自然に消えていた事にも気付いただろう。

オーギュストがステイギアの報告を受け刑務所に着いた時には皇帝キンメリアと秘書官エミリーは牢屋の中に閉じ込められてていた。

その知らせを聞いた皇帝の配偶者、チカゲ皇后(と、この時は思われていたが実際は皇配、そもそもナイアール本人である)は激怒、ナイアールに対する賞金を百倍にまで引き上げるというマッチポンプをやりやがったのである。

という後日談は置いておいて今回の本来の目的である。


「ごめん【風車】無理だったわ」

「ええ〜そんな〜」

「だから本物を見せてやるよ」

「本物?」


〜コナン帝国 シェリン城〜


宝物庫前の詰所にて壮年の兵士が一人、似つかわしくない高級そうな葉巻に火を着けようと火の魔石を探していると、彼の横から手が伸び指をパチンと鳴らすとその人差し指から小さな火が現れた。

兵士は多少面食らいつつも葉巻に火を着ける。


「やっ、お義父さん(・・・・・)結婚式以来ですね」

「おう、話は聞いてるぜ。そいつがセケルの子孫とか言う?」


カリスが兵士と竜二を見比べ疑問符を浮かべる。


「あのリュウジさん、この方は?」

「おいおい頭が高いぜカリス、このオッサンは先帝ヒューベル九世陛下であらせられるぞ」


素直に「ハハー」と膝を着くカリスに苦笑する先帝。


「そう言うお前は頭下げないんだな、まあいいさ、趣味で番兵やってるただのオッサンだよ。先に言っておくがセケルの末のお嬢さん、皇族はセケルの自殺には一切関与してないからな」


それだけ言うとヒューベルは宝物庫の扉を開けた。

その奥には“本物”があった。


〜エルキュリア王国 王城〜


「先生が普通に面会したいと聞き戦々恐々ですよ。リトもアイリーンもご覧の通り警戒心MAXですからね」

「今日は一体何の用ですの」

「場合によってはダダでは済まないっ・・・わよ」


リト王妃が必死に口癖の語尾を抑えようとする姿に苦笑しながらも竜二は本題を切り出す。


「ふーん、美術館の例の【リリア夫人】の作者セケルの子孫ね・・・言っとくがセケルの自殺に王家は関係無いからな」

「ソレ帝国でも言われた」

「当然ですわ。セケルの自殺は世界の謎の一つですもの。セケルに依頼を出した各国の王室皇室は邪推で、ある事ない事色々言われたのですわ。リュウジ殿はどう思われますの?」


出された菓子をヒョイヒョイ頬張りながら思案、最後に茶を飲んで口を開く。


「今更犯人探しなんざ無意味だから自殺は自殺だろ。ただ、状況にもよるが本人がその道しか無いと考えたのであれば、あまり否定出来る立場には無いね俺は」

「意外ですわ。貴方は何を置いても生きるべきと説く人だと思っていました」

「そりゃ俺が助けられる範囲でならな。だが実際、ソコにしか逃げ場は無い事もある。まあ今回は先に帝国さんの方を拝見してるので違うと思うがな」

「それで?鑑賞するのに金出すって?盗まないのか?」

「俺を誰かと勘違いしているらしいが鑑賞するだけだ。それで五億出そうじゃないか」


元庶民のリト王妃は盛大にお茶でむせた。


「ブーッ!ガハッ・・・ゲホゲホ。かん・・・鑑賞で五億っスか!?ゲホッゲホッ」

「・・・本当は何億何兆積まれても見せる様なモノじゃ無いんだけどな。散々世話になったし、それでは宝物庫までご案内しましょう」

「どうせ前に勝手に見てますわよコイツ」

「そういう事言わない、今回はカリス嬢のインスピレーションの為なんだから」


そして案内された宝物庫の中にあった絵の正体とは?


「わわっ!?」


リト王妃は思わず恥ずかしさに目を覆う。


「なるほど、何故国立美術館の絵が正室ではなく側室だったのかずっと気になっていましたが正室の絵は此処にあったのですわね」


それは時の王ハワード二世と正室ソーニャ王妃の交合の絵であった。


「何て・・・何て事を・・・」

「カリス?」

「この絵に比べれば美術館の【リリア夫人】なんて練習がてら描いたとしか思えない、そんな・・・そんな」

「?どういう事っスか?王様の・・・その・・・描いたから暗殺されちゃったとか?」


そんなリト王妃にポアロ四世は肩を軽く叩いて誤解を解く。


「多分違う。コイツは・・・セケルって画家は色んな国の代表のセックスを描いて満足しちまったんだろうな」

「それだけで!?」


そんなリト王妃の叫びにカリスも同意する。


「そう、それだけで命を絶ってしまった。何て・・・フ・・・フフフ」

「彼は天才にしては常識的な人物だったらしい。性交渉、それもやんごとなき方々の性交渉を描ける機会なんぞまず無いからな、それを複数描いた彼は本物の天才だったんだろうが、不敬に対する不安、描きたいモノを全力で描いた達成感、もう描ける機会は無いという絶望、そんなのに流されちまったんだな」


嗤っていた。

カリスは何が可笑しいのか絵を見ながらニヤニヤ嗤っているのだった。


〜その後〜


屋敷に帰り正式にリュウジさんの妻として迎え入れられた私は一心不乱に彼とその妻達の情事を描き続けた。

確かにセケルは天才だったが、最後の最後で選択を誤った。

あの程度で満足してしまうなんて、これが一族が目標とした画家の末路か。

私は違う。

そうだとも、この屋敷で女の裸身を見るたび私の中の何かが煮え滾っていた。

道理で美術館に飾られるセケルの絵では何も感じないハズだ。

此処には私の描きたい男女が揃っている。

無数のかおを持つ男に無数の美姫達。

良いじゃないか、色を堪能しながら描くクズに成り下がろう。


・・・

・・


芸術家のお決まりの例に漏れず、生きている間にカリス・キンナリーという画家が評価される事は無かった。

いや、星の智慧社がスポンサーに付いた事でそれなりに仕事の依頼自体はあった。

一番の作品は星の智慧社本社エントランスホールに描かれた巨大な壁画【神話大戦】である。

神話の神々と巨人との闘いを描いたダイナミックな作品だ。

だが生きている間はそのエキセントリックな言動で周囲を振り回し散々だった。

曰く『私は帝国皇帝と同性愛の関係だ』とか『戦死したエルキュリア王国の姉妹?よく知らないけど全員抱いた』だの『ルミナス皇女は水の極星だけあって〇△□が✕✕✕』などと戯言を繰り返すので各国は“本当の事”だとしても表向きはカリスに猛抗議した。

そうして死後、やっと本人の口が閉じられてから数十年、彼女が本物を描く片手間で練習がてらに描いた絵が芸術界で流行するのであった。

未だナイアールの屋敷の寝所にて本物が延々と描かれ続けられている事も知らずに。


〜おまけ〜


この惑星のお金は当然、国ごとに通貨単位、レートが違いますが考えるのがめんど・・・翻訳機能で数字+国名+金=およそ日本円と同額とお考え下さい。

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