第百六十五話 姫の憂鬱解消
「姫様姫様」
「ん〜?」
「ん〜?じゃありません、会議ですよ、ゴブリン会議」
「ああ、『私達は野蛮で野性的なゴブリンらしいゴブリンとしてダンジョンのワンフロアで生活したいです』だっけ?」
タルトの補佐役として竜二から秘書ポジションに任命された紅葉ちゃんが渋い顔をする。
ゴブリンの姫君タルトの方針は将来魔物娘の社会進出を見越し理性と知性を重要視しており、紅葉自身も賛成している。
こういった声には難色を示すだろうと紅葉は考えていたが、タルトから出た言葉は意外なものだった。
「もう場所は決まっているのよね?なら別に良いんじゃないかしら?」
「良いのですか姫様?」
「言いたい事は分かるけど良いのよ。押さえつけても良い事無いし、それにあの娘達は自分達が思っている以上に強くて賢くて優しくて、それでいて欲望に弱いわ」
「欲望に弱かったら結局野蛮なモンスターと化すのでは?」
「まあ、見てれば分かるわよ。カルラ」
カルラと呼ばれたゴブリン娘はタルトと同じくユニークモンスターのゴブリン魔王、イルカルラであった。
「何だ姫よ」
「今、議題に出た娘達はダンジョンのエネミー役として申請するからサポートお願いね」
「心得た。共同生活にあたり資金を得る為の特産品等を生産するよう指導しよう」
ツンツン髪のゴブリン勇者イシュターが興奮する。
「く〜っ、ダンジョンにゴブリンの巣、これぞ冒険の醍醐味ってヤツだな」
「盛り上がってるトコ悪いけど多分胸躍る冒険活劇やエロイベントCGは期待出来ないわよ?」
「えっ?エロCG無いの?負けた女の子を巣穴に持ち帰って苗床にしちゃうヤツ」
「私らは魔物“娘”な、百合CGは山程あるよ」
「まあ仕方ないか、良しバランス調整がてら遊びに行ってやるよ」
会議が終わり成り行きをにこやかに見守っていたゴブリン女神七夜が姫、勇者、魔王の三人を手招きする。
『今日は三人にとても大切なお話があります。特にタルトちゃん、貴女の心を解す為の大切な』
「私の?それは一体?」
『それは・・・竜二さんを呼んでお風呂に入りながらお話しましょ♪』
・・・
・・
・
チャポンと浴槽に水滴が落ちる。
浴室で愛を交わす事はあれど、このメンバーは初めてだったか。
女神が姫の髪を梳く。
首から下は淫猥な快楽で蕩けているのに頭の心地良さは別物。
『貴女達ゴブリン娘は素晴らしい“人間”です・・・と、言葉で言っても聡明なタルトちゃんは考えてしまうのでしょう。自分の赤ちゃんは幸せになれるのか』
頭を一撫でされる毎に、黒い不安が溶け落ちていく。
『産まれる時に角が引っ掛かからないか?安心しなさい、女神の私が保証します。赤ちゃんの角はとても小さく短く柔らかいから出産の邪魔になる事はありません』
『魔物娘の・・・我が子の社会的立ち位置が心配?貴女も知っての通り竜二さんが根回しをしています。近い将来必ず魔物娘は人類の一員として迎え入れられるでしょう』
『貴女の不幸は魔物娘として生まれた事ではありません。澱みの沼から成人の肉体と知能を持ち、成長も経験も無く竜二さんの倫理観を持ってしまった事です。それでは貴女が揺れるのも仕方ない事、私に言えるのは、もう少し肩の力を抜きなさい、そしてこの女神を頼りなさいと言う事です』
『魔物娘は同種同士の感受性が高い存在、ですから最初のゴブリン娘である貴女が妊娠に不安を持てば他の娘も繁殖が出来なくなってしまいます。良いのですよ、もっと原初の感情に身を任せても。私が力を与えましょう』
女神七夜の宣言により私が光に包まれる。
伸びる、背が、手足が伸びる。
これはあの時、段蔵の竜二の夢の中で見た。
『竜二さんの成長予想は聞いていますが、それはゴブリン娘をよく知らず成長途中と勘違いしていた時に立てた間違った予測です。今、予測を立てたら違う結果になるでしょう。ですが弱いとは言え私はゴブリン娘の女神です。その間違いを真実にしてあげましょう』
私の手足がスラリと長く、胸は張り出し髪も伸びた。
『タルトちゃん、貴女に与えるのは豊穣と闘争の力、【鬼子母神モード】と名付けましょう。子を育て、子を守る為に闘う力です・・・変身は自由に出来ますからその時の気分でプレイに使って良いのよ。竜二さんは胸の大きい娘が好きみたいですが、普段の小さい方も背徳感があってお好きでしょう?』
「女神様、俺は?俺は?」
『勇者イシュターよ。貴女に与えるのは光の力、全ての活力【バーストモード】始動と創造の力です』
「背は変わらないけど金色に輝いて力が溢れてくる」
『安定重視の鬼子母神モードと違って力を大きく高めるバーストモードは発動に魔力を大きく消費するので注意しなさい』
「女神よ、我には?」
『魔王イルカルラ、愛らしき黒よ。貴女に与えるのは夜の闇、【ニュクスモード】安らぎと破壊の力です』
「ククク、面白い。魔力で編まれた巨大な第二の肉体といったところか」
『その姿に変化するのに魔力は必要ありません、ですがしばらくすると戻り、戻った後に強い倦怠感に包まれます。バーストモード、ニュクスモード共に効果時間は修練によって伸ばせます。また、貴女達だけでなく他のゴブリン娘のみんなにも成長、相性、性格に合わせ、いずれか一つを習得可能にしましょう』
ああ、この体勢で初めてキスが出来た。
女神様の加護かアドバイスのお蔭か、この日私に新しい命が宿った。
ゴブリンの女の子だそうだ。
みんな私の為にお祭り騒ぎ、ユノとユナの双子が花束を手渡し、同期だと一足先にママになったイズンから黄金の果実ジュースが送られ、ジェイン料理長の豪華な料理が並び、オードリーとミーネの母娘はセクシーダンスを披露する。
夫、竜二は私の横に座り肩を抱き寄せ愛を囁く。
「今日からお姫様を卒業してお妃様かな?まあ、英語だとどっちもプリンセスだから変わらないか、タルトは優秀過ぎるからな、気負い過ぎずに自分を好きになってくれ。俺も自分を好きになるからよ」
その言葉で少し気付いた。恐らく私は魔物の姿にコンプレックスを持っていたんじゃない、竜二が初めて創造した魔物娘だから竜二の自分嫌いがモロに影響されてしまっていたんじゃないだろうか?
「折角、みんなが俺を選んでくれたんだ、俺が俺を卑下すれば妻全員の格が落ちちまう。少なくとも今後自虐の言葉は死んでも吐き出さん、だがこれは欠点に向き合わないという意味じゃない」
「だったら私も、私も自分を好きになる。私をプリンセスと呼んでくれるみんなの為に」
・・・
・・
・
素晴らしい、素敵だ、姫はもう大丈夫。
私の加護なんて無くても十分強い娘だ。
「だから貴女には自主的に消える事をお勧めします」
私の眼前には輝く金髪のそれはそれは美しい女性が立っている。女神とは本来こういう風貌の者を言うのだろう。しかし彼女は私を睨みつけて口汚く罵っている。
「穢らわしい!魔物の女神になどなって人間と婚姻を結ぶなど悍ましいにも程がある!!」
「・・・」
「奉仕種族共の上に立ちこの惑星を再び神々の聖域へと戻すのだ!戻さねば!戻さなければならない!!」
「・・・」
「おい、聞いているのか?我は本来の貴様なのだぞ!!」
「貴様・・・今、我が加護を与えし愛らしき種族に対し何と囀った?」
その言葉に本来の私が硬直する。
「ああ、成る程。貴様達神々がどうして惑星内で見えないのか理解した。だから負けたんだね」
「なっ、何を言う!!」
私は金色のゴミを指差す。
「まっ!止めろ!我は貴様自身なんだぞ!!」
「うんゴメンね。でも我は我儘で残酷な神様だから自分のお気に入りを貶されたら神罰の一つも下したくなるよね♪」
その瞬間ソレは声を上げる間も無く粉々に砕け散り単なる私の魔力の一部となった。
私の精神世界に一匹のタヌキと舌の長い女、愛らしい童女が姿を現す。
彼女達の故郷にて神事を行う女性の正装、紅白の巫女装束に身を包んでいた。守鶴前の方が実力は上だろうに新参の私に対して礼を尽くそうというのだ。
「古かろうが新しかろうが強かろうが弱かろうが神は神、存在としての階級が違うのです。当家に祀るに相応しき御柱であれば礼を尽くすは当然の事」
「いいよいいよ、多分この家に相応しい神ってそう言う畏まった存在じゃない、楽にして」
「それでは失礼して。アレは消して良かったのですか?もう少し喋らせておけば面白そうな事を口走ったやも知れませんが」
「私も知らない神々の歴史について?興味無いかな、多分アレも偉そうな割にそんなに詳しくは無かったと思うよ」
「左様に御座いますか」
守鶴前が茶と菓子を用意する。
私の精神世界だというのに器用な事だ。
「神々が負けたとおっしゃいましたが?」
「根拠はありませんが、私がゴブリン娘さん達の女神として貴女達に発掘されたのは本来の私の意思や神々の命令ではなく別の存在の介入があった為だと推察します。それが緑の太陽か、はたまた全く別の者かは不明ですがね。ともあれ神話時代の神々でマトモに活動しているのは冥界神アレスタのみ、さりとて緑の太陽の気配も無し、であれば相討ちによりほとんどの神々は消滅して人類の時代がやって来たと見るべきでしょう」
「流石に冥界まで行って聞くワケにはいきませんか、この星の冥界下りはまだ知識が足りずリスクが高い、だからといって死神連中から聞き出そうにも守秘義務があるでしょうし・・・それにしても王国と違って帝国側担当の死神共はガラが悪い、何人かシメて聞き出すか」
「任せます。私は目覚めたばかりで大した権能はありませんから。場合によってはアレスタ様との繋ぎも頼みます。面倒な事に神というのは動き難い存在ですから」
「分かります。私も一時期小さな神社ですが祀られたりしてましたから」
後ろ二人、清子と花子が香を焚いて清らかな水を振りかける。
古くから伝わる神前での退室の作法だ。
その手の資料は読んだがつくづく律儀な事だ。異星の魔物と聞いていたからもっと破天荒だと思っていたが。
そんな思考を読み取ったかニヤニヤする守鶴前。
「分かってないな〜、こういうメリハリが人生を永く楽しくさせるコツなんです。それに儀式って何かカッコいいじゃないですか」
精神世界から覚醒してみれば会話中に出していた茶と菓子がテーブルに置かれている。
「あっ、淹れたてだ。本当イイカッコしいなんだから」
眠気覚ましにカフェインを摂取、今日も良い日になりそうだ。
〜ゴブリンダンジョン完成〜
フロアの四割は平原、六割は洞窟の内部というこの完成したばかりのステージ。
無論最初に挑むのは・・・。
「この俺、勇者イシュターだぜ!ここが平原エリアか?さてどんなゴブリンが出る?野蛮で野性的というくらいだ、見窄らしいボロ布を着て鈍器の様な原始的な武装をした・・・いや、粗雑な鎧や簡素な弓矢くらいは用意しているか?」
モンスターが現れた!!
「おっ、来た来た」
・ゴブリン騎士
あたま:サイバーヘルメット
からだ:魔力バッテリー付きアーマー
ぶき :魔力ビームソード
ドロップ:おにぎり レア:魔力バッテリー
・ゴブリンアーチャー
あたま:ゴーグル付きヘルメット
からだ:魔導迷彩服
ぶき :魔導ライフル
ドロップ:漬物 レア:迷彩下着
・ゴブリンチアガール
あたま:ピンクリボン
からだ:ダンスウェア
ぶき :ポンポン
ドロップ:緑茶 レア:クリスタルキャンディー
勇者イシュターは膝から崩折れた。
「野蛮で野性的なゴブリンんん〜〜〜ッ!!!」
その魂の叫びから数秒、平原の向こうから猛ダッシュで誰かがやって来た。
「ウチのゴブリンちゃんに何するか〜〜〜!!!」
・ゴブリンの奴隷
からだ:ボロい布きれ
ぶき :こん棒
ドロップ:ボロ布風水着 レア:複製アキレスシールド
ゴブリン娘(の可愛さ)に負けて(自ら喜んで)奴隷となった探索者、戦闘時にはゴブリン娘に肉壁として他の探索者やかつての仲間達と無理矢理闘わされている(という脳内設定だがメチャクチャ好戦的)。
「ちょ、何?このねーちゃんスゲー強えー」
洞窟内の施設も見てみよう。
・個室
上下水道、空調完備の素敵な生活空間。
・漬物屋『吾武商店』
平原エリアの非戦闘区画で育てた野菜を漬物にして販売している。丁度良い漬かり具合だと評判のこのフロアの特産品。
・奴隷の牢獄
入口は物々しい鉄格子だが内部はやはり快適空間。ゴブリン娘と共同生活を送る娘達の個室が配置されている。
・娼館『ゴブリンの苗床』
人、魔物娘問わず在籍している薄暗い洞窟の牢屋っぽいプレイルームのお店。クラリースは出禁。
・ホテル『リトルデビル』
サービスの良い上品なホテル。
販売物一覧
・お漬物
・ゴブリン風抹茶ケーキ
・お土産こん棒
・タルトちゃんキーホルダー
・ボロ布風水着
・ゴブリン娘の桃液(人類にゴブリン娘を確定で妊娠させる魔法液、購入と使用に厳しい審査が必要、竜二のお手付き済みの人とゴブリン娘のカップルのみが超高額で購入可)
ゴブリン娘以外のフロア内エネミー
・テンタクルン娘
ドロップ:マッサージ店割引券 レア:マッサージ店無料券
・妖蟲娘
ドロップ:飴 レア:魔法のシルク
・寄生ちゃん&宿主ちゃん(NEW!)
ドロップ:ハンバーガー レア:魔性香水
赤城家内のピンクダンジョンではなく外のダンジョン探索中に死亡した女性探索者の遺体を回収し魔物娘化させた者。
寄生ちゃんのサイズは両手で抱える程でスライムタイプ、触手タイプ、蟲タイプが存在する。
沼の魔力で変質した生前の自分の肉体を宿主として乗り込んで合体、操縦して生活を送っている。宿主ちゃんは全体的に生気が無いが寄生ちゃんと同一の自我がほんの僅かだけ残っており、寄生ちゃんが乗ってない時は緩慢に動く、簡単な受け答えをする、単純作業を行う、勝手に竜二と寝る等の行動をとる困ったヤツである。
二人が合体すると全身に気力が満ち溢れ生前よりも遥かに強くなるが宿主ちゃん側は欠けていた精神のリンクに歓喜しているのか、はたまた乗り込まれるのが気持ちいいのか、それともワザとやってるのか寄生の瞬間にやたらHな声が出る、一方で寄生ちゃん側は肉体操作が疲れるのか時々宿主ちゃんから降りて休憩している、その間に宿主ちゃんはフラフラと遊びに行ってしまう。
フロアボス
・フルアーマーゴブリンギャル
ぶき :ゴブマシンガン
ゴブミサイル
ゴブレーザー
ドロップ:ハイゴブカノン
「野蛮で野性的なゴブリンんんんんん!!!!!」
「姫様が言っていたのはこういう事だったんですね。欲望に弱いから文明の利器は手放せないのです」
「誘拐!苗床!絶望!エロゲー!」
「アンタ仮にも勇者だろ!ほら、お土産の漬物美味しいですよ、それとも娼館に行きます?そういうプレイが出来るみたいですよ」
「うん行く」
「切り替え早いなアンタ」




