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第五幕 第十一場

 おっぱい王国のお城の玉座の間には、貧乳姫マレーンが玉座にあぐらをかきながら座っていた。その両隣には巨乳派のリーダーである太った大臣シュルツに、貧乳派のリーダーであるやせた大臣ミハエルが立っている。玉座の間にいるのはこの三人だけだった。


「貧乳姫様」

 やせた大臣が言った。

「やはり玉座の間にも兵士を配置したほうがよろしいのでは。もしも貧乳姫様が悪魔に襲われる事にでもなったら、私たちでは守りきれません」


「大丈夫よ安心して」

 マレーンは平然とした態度で言った。

「それに兵士がいた方が邪魔で動けないわ」


「貧乳姫」

 太った大臣が言った。

「とても落ち着いているように見受けられますが、何か秘策でもあるのですか?」


 マレーンは右手を目の高さに掲げると拳をつくる。

「この力を使うわ」


「その力とはいったい何なのですか?」

 やせた大臣が訊いた。


「いずれわかるわ」


 太った大臣が疑惑の目でマレーンを見る。

「その力なら悪魔を倒せると、王様の信頼を得ているようですが私にはとても信じられません。やはり不安です。兵士を呼びましょう」


 その時だった。大きな衝撃音とともに城が揺れ動き、兵士達の叫ぶ声が聞こえ始めた。二人の大臣の顔には緊張の色が浮かぶ。


 兵士達の叫び声にまじり獣のような雄叫びが聞こえる。やがてそれらの声は大きくなり、玉座の間に近づいて来るのがわかった。


 マレーンはイスから立ち上がると両腕を組んだ。

「どうやら客がきたようだな」


 玉座の間の扉の向こう側から、くぐもった雄叫びが聞こえた。すると扉が吹っ飛ばされ、悪魔がその姿を現した。


 二人の大臣は情けない悲鳴を漏らした。


「これはこれは貧乳姫」悪魔が言った。「ご機嫌うるわしゅうございます」


 マレーンが前に歩み出る。

「待ちくたびれたわよ悪魔さん」


「そいつは申し訳ない。これでも急いで駆けつけたんですよ。あなたが私を楽しませてくれると信じてね」


「楽しませる?」

 マレーンは立ち止まった。

「馬鹿言わないで。私はとっととあんたを片付けて劇場に遊びに行きたいのよ。本当ならこんなことしてる場合じゃないのよね。だからね瞬殺させてもらうから、楽しむ暇はないわよ。悪く思わないでね悪魔さん」


「気の強い姫様だ。そそられるよ」

 悪魔が舌なめずりをする。

「その顔を恐怖と苦痛で歪められると思うと、楽しみで楽しみでたまらない」


 マレーンが悪魔に向かって右腕を伸ばし手のひらを見せた。

「ブリックレーブリット」


 マレーンが呪文を唱えると、悪魔のいる空間がまるで水を通して見たかのように歪み始める。やがてその歪みは悪魔の左腕へと収縮していき消えてしまう。そして次の瞬間、爆発音とともに悪魔の左腕の肘から先が吹っ飛んだ。


 悪魔は耳をつんざくような大きな悲鳴をあげると、左腕を押さえ痛みにもがく。


 二人の大臣があんぐりと口を開けた。


 マレーンは二人の大臣に振り向く。

「二人とも戦いに巻き込まれたら死ぬわよ。お前達を守ってやる余裕はない。隙を見てここから脱出しなさい」


 二人の大臣は返事をするとあたふたし始める。


 悪魔が雄叫びをあげ、マレーンに向かって突進してきた。


 マレーンはすぐさま呪文を唱える。「ブリックレーブリット」


 先ほどと同じように空間が歪み、そして悪魔の右腕が吹き飛んだ。だがしかし悪魔は怯む様子を見せず、何事もなかったかのように突進し続ける。


「ブリックレーブリット」


 悪魔の左足が吹き飛んだ。悪魔は一瞬立ち止まるも、すぐさま右足だけで飛び跳ねながらマレーンに向かって行く。


「ブリックレーブリット」


 悪魔の右足が吹き飛び、四肢を失った悪魔はなすすべ無く床へと崩れ落ちた。


 マレーンは悪魔に歩み寄ると、その顔を踏みつける。

「まだ遊ぶ?」


 悪魔はマレーンを見上げるとにやりと笑う。

「もちろんだとも。まだ遊び足りないからな」


「だったら早く本気を出しなさいよ。こっちは急いでるんだから」


「若いだけあっていきなり本番を要求するとは、せっかちで無謀なお姫様だ」

 悪魔は羽を羽ばたかせると空中に浮いた。

「それならその求めに応えてあげましょう。見て驚くなよ」


 悪魔は雄叫びをあげると頭を小刻みに震わせる。すると首がどんどんと伸びていき、悪魔の顔つきも変わり始めた。目の瞳孔が縦に開き、口が大きく突き出していく。その顔つきはまるで爬虫類のトカゲのようだった。


 二人の大臣が腰を抜かして悲鳴をあげた。


 マレーンが二人に顔を向ける。

「何をしている。さっさと逃げろと言ったはずよ」


 悪魔が再び雄叫びをあげると、両手足の切り口からなにやら糸のようなものが何本も生えだす。やがてそれは互いに巻き付くようにして大きくなり、悪魔の新たな両手足となった。そして悪魔の尾てい骨付近からも同じように糸が飛び出し、それがまとまりしっぽとなる。悪魔は羽ばたくのを止め、床に四肢をつけるとしっぽを振って威嚇してみせた。その姿はまさにドラゴンと言うにふさわしい存在だった。

「さあ本番始をめようか。貧乳姫」


「まさかドラゴンだったとは」

 マレーンの顔に焦りの色が浮かぶ。

「これは予想外の展開だわ」

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