第五幕 第八場
おっぱい王国の劇場に馬車の一団が到着した。みなは馬車を降りると、ぞろぞろと劇場の中へと入っていく。
劇場の中は熱気に包まれていた。すでにホールの一階は満員で、人々が開演の時を待ち構えている。二階の席におっぱい王国の貴族達が現れ席に着き始めた。そして三階の豪華にしつらえられた観客席に、おっぱい王国の王族達とシュヴァンツ王国の人間達が姿を現す。
まるでお城の大きな部屋のような三階観客席には、ゆったりとした大きめのサイズのイスが並べられている。観客席の右手側におっぱい王国の王をはじめとする王族達が座り、左手側にシュヴァンツ王国の関係者達が座る。観客席の真ん中には、まわりのイスから孤立するかのように二つのイスが用意されていた。それは本日の主役二人のための席であり、他のイスから離されているのは、二人がはやく親密になれるようにとの心遣いだった。
巨乳姫マンスロートに変装した鵞鳥番のリーゼルが、観客席中央にある右側のイスに腰を落とした。
「見晴らしのいい場所ですね」
そう言ってリーゼルの左隣にあるイスに腰掛けたのは、シュヴァンツ王国第二王子ローラントだった。
「ここなら舞台がよく見える」
「ええそうですね。ローラント王子様」
リーゼルは微笑んでみせたがその表情は硬い。
「とても楽しみですわ」
「緊張しているのですか?」
リーゼルは図星をつかれてしまい焦りだす。
「そ、そんなことないですわ」
ローラントはやさしく微笑む。
「そう緊張しなくても大丈夫ですよ。ここなら二人の会話はまわりには聞こえませんからね。いつも通りに話してくれて結構ですよ。いつも通りにね」
リーゼルはローラントの心遣いに幾分か緊張が和らぐ。「わかりました」すこしほぐれた笑みを見せる。
二人の元へ従者のキュルトヘンがやってくる。
「マンスロート姫様。これをどうぞ」
キュルトヘンはそう言って、リーゼルに扇子とオペラグラス差し出す。
リーゼルは受け取ると礼を言う。
「ありがとうキュルトヘン」
「マンスロート姫様。僕はこれにて退室します。もしも御用があるのならば、外で待機していますので、いつでもおよびください」
キュルトヘンは観客席から出て行く。
観客席を出て廊下に立つキュルトヘンは左右を見渡し、誰もいない事を確認する。
「……さてと、シュルツ大臣の言う通りならばティーア劇団はシュヴァンツ王国の工作員。その証拠を見つけて暗殺計画を阻止しなくては」




