表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
61/76

第五幕 第五場

 おっぱい王国のお城の城門前には十数両の馬車が停まり、大勢の人々でごったがえしていた。先頭に停まる豪奢な馬車を引く馬は白馬のファラダで、その馬車に乗り込もうとしているのは巨乳姫マンスロートに扮した鵞鳥番のリーゼルとシュヴァンツ王国第二王子ローラントだ。


「御二方さんよ」ファラダが言った。「早いとこ乗っちまいな。ぐずぐずしているとあっという間に昼になっちまって、劇が始まるぜ」


「落ち着いてファラダ」リーゼルが言った。「劇場はここからそう遠くないところよ。あせらずともすぐに着くわ」


「気の早い馬ですね」ローラントが楽しげに笑う。「すぐにでも駆け出してしまいそうだ」


「よお兄ちゃんよ」ファラダがローラントに顔を向ける。「俺は一応この国の王族専用の馬らしい。名前はファラダだ。兄ちゃんも姫様と結婚してこの国の王になるんだろ。だったらよろしく頼むよ。用があったらいつでも俺を呼んでくれ。どこへでもひとっ走りで連れてくぜ」


「こらファラダ。口が過ぎますよ」リーゼルがとがめる。


「かまいませんよマンスロート姫様。おもしろい馬じゃないですか。僕はとても気に入りましたよ」

 ローラントはそう言うと馬車のドアを開く。

「さあどうぞ」


「ありがとうございます」リーゼルは礼を言うと馬車に乗り込む。


「ファラダ、今日は一日よろしく頼むよ。あとそれと僕の名前はローラントだ」


「了解したぜ、ローラントの兄貴。まかせときな」ファラダは請け負った。


 ローラントはくすっと笑うと馬車に乗り込む。


 その一連の様子を、離れてた場所で見ていたのは王様と貧乳姫マレーンだった。


「あれならうまくいきそうだ」

 王様そう言うとマレーンに顔を向ける。

「それではマレーンよ、後の事は頼んだぞ。絶対に無理はするなよ」


「言われなくてもそうするわ」

 マレーンは冷ややかな口調で言った。

「だからお父様は安心して楽しんできてください」


 王様はさみしげな表情で小さなため息をつく。

「やはり私の事は許してもらえないのか」


「あたりまえでしょう。じつの娘を七年ものあいだ地下に監禁し、一度も顔を見せなかった父親よ。許すとでも思っているの」


「マレーンよ。私は顔を見せなかったのではない、見せる事が出来なかったのだ。王族の体裁を保つために、じつの娘を地下に閉じ込めるという所行をしておきながら、どの面下げてお前に会えばいいのかわからなかったんだ」


 マレーンは鼻で笑う。

「都合のいい言い訳ね。そんなんで自分を正当化できるとでも」


「わかっておくれマレーン。お前は魔女なのだ。それをバレるわけにはいかなかったんだ」


「それは無駄な努力だったわねお父様」マレーンが言った。「どのみち私は悪魔相手に魔法を使わなければならない。みんなに私の正体がバレてしまうわよ」


「この国が滅びるよりマシだ。それでお前の正体がバレてしまっても、今度こそ家族は手放さない。その時は私とともにこの国を出よう」


「そんなのお断りよ。それにお姉様が帰って来るまで、私はどこへも行くつもりはないわ。だから、いつお姉様が帰ってきてもいいようにこの国を守るの」

 そこでマレーンはうんざりといった様子でため息をつく。

「……もう長話もいいでしょ。さっさと行ってください」


「……マレーン。その前に一つ正直に話さなければいけない事がある。お前の母親カーテルリースヘンは生きている。今もどこかで暮らしているよ」


「な、なんですって……」

 マレーンは驚きのあまり目を見開いた。


「お前の母親は魔女だった。それが発覚したため処刑せねばならなかった。だが私は愛する妻を見殺しにはできなかった。だから流行病で死んだ事にし、この国から逃走させた。もしお前がこの国を追われるようなことになったら母親を探しなさい。きっとよくしてくれるはずだ」


「……お母様は生きているのね」


 王様はうなずいた。

「お前とカーテルリースヘンにはすまないと思っている。この国の王といえども、お前達を守ってやることができない。こんな不甲斐ない父を許しておくれ」


 王様はさみしげな背中をマレーンに見せると馬車へと向かう。

 マレーンは無言でそれを見つめた。その表情は哀れんでいるようにも軽蔑しているようにも見え、判然とつかない。



 一方その頃、お城に付設された厩舎には馬丁のフェレナンドと赤い瞳の騎士ベンヤミン、それに貧乳派のリーダーであるやせた大臣ミハエルが集まっていた。


「さきほどティーア劇団の使いの動物から情報提供があった」

 やせた大臣が言った。

「なんでも劇場に忍び込んだ巨乳派工作員を捕まえたとか。そしてヤツらの密会所の場所も特定し、重要人物がかくまわれていると伝えてきたよ」


「巨乳派の重要人物?」フェレナンドが言った。「まさかそれはあの忌々しい巨乳姫では」


「話がうますぎませんか?」ベンヤミンが言った。「もしかするとティーア劇団のヤツらは巨乳派の味方で、これは我々貧乳派を惑わすための陽動作戦である可能性も考えられます」


「確かにその可能性もある」やせた大臣はうなずく。「だがしかし、確かめなくてはいけない。そして万が一にも巨乳姫がいた場合は、即刻始末しろフェレナンド」


「わかりました。ミハエル様」


「そしてベンヤミンよ。もし悪魔討伐作戦中に巨乳姫が戻って来るようなことがあれば、どさくさにまぎれて斬り殺せ。今度は失敗は許さんぞ。いいな」


「かしこまりました。ミハエル様」


「たのんだぞ二人とも。すべては我ら貧乳派の勝利のため最善を尽くしてくれ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ