第五幕 第四場
おっぱい王国にある劇場の控え室では、ティーア劇団の座長クレープスが動物の団員達を前に、なにやら話をしている。
「なるほど」
クレープスが感心したかのようにうなずく。
「すばらしいですぞ。よくぞやってくれました、みなさん」
「俺たちにかかれば賊なんてちょろいもんよ」犬が得意げに言った。
「そうそそうさ」別の犬が同意のうなずきをする。
「しかしまた、本当に賊が現れるとはおっぱい王国とは物騒ですね」
兎が言った。
「座長の言った通り、警戒しておいてよかったですよ」
「まったくこの国のヤツらは」
狐が嘆かわしげに首を横に振った。
「何を考えているんだ?」
「捕らえた賊を拷問したところ」猫が言った。「ヤツらはおっぱい王国の巨乳派の工作員だと白状しました。やはり座長が噂で聞き及んでいた事は本当だったんですね」
「まさか私も、おっぱい王国が巨乳派と貧乳派とで本当に派閥争いをしているとは思いませんでしたよ」
クレープスがにやりと口元を歪めた。
「人の噂とはあてにならないものですが、時にはとんでもない真実をもたらす事がある。いい教訓になりました」
動物達がくすくすと不気味な笑い声をあげた。
「まったく私たちの邪魔をして何の得になるのやら」
クレープスが言った。
「私たちはこの国のためにすばらしい演劇を見せてあげようとしているのにね」
「まったくそのとおりです」犬が言った。「まったくだ。まったくだ」
「そうだ。そうだ」猫が言った。「その通りだ」
クレープスは息をつくとタキシードの蝶ネクタイを正した。
「それじゃあみなさん、そろそろ大切なお客様達が来る頃ですよ。張り切って準備しましょう。みんなのためにね」
動物達は返事をすると衣装に着替え始める。
「そうだ座長」
兎がクレープスのもとにやってくる。
「賊のことなんですけど、このまま物置部屋に閉じ込めておくのもあれなんで、貧乳派のヤツらに連絡をつけときました。なんでしたっけ、あのガリガリの大臣の名前。たしかえーと、そうそうミハエル大臣だ」
「そいつはまずいな」
クレープスの表情が曇る。
「できれば私たちはこの国の争いとは無関係でいたかった。だって巨乳派と貧乳派との争いなんてバカバカしいですからね」
「そいつはしまった。もしかして余計な事をしてしまったでしょうか?」
「……まあかまいませんよ。ヤツらがどうこうしようが、私たちは自分達の仕事するだけですから。今さら誰にも、この私たちティーア劇団を止める事はできませんよ」
そう言い終えるとクレープスは高笑い、その声を控え室に響かせた。




