第五幕 第二場
「私は翼を広げ かごを飛び出し羽ばたくの」
巨乳姫マンスロートと魔女ホレが声をそろえて歌っている。その歌声は城下町にある酒場の二階の部屋に響き渡る。
「夢にまで見た瞬間 私はいまやかごの外
ピイチク ピイチク 私はなんて幸せな小鳥なんでしょう」
歌い終えると二人は笑い合う。
「とてもなつかしいですわ、お母様」マンスロートが言った。
「ええ、そうだね」ホレがうなずく。「まるで昔にもどった気分だよマンスロート」
二人が和んでいると、部屋のドアがノックされ青い瞳の騎士ゲオルクが入ってくる。
「失礼します御二方。そろそろお城へ参りましょう」
二人は返事をすると、騎士の後に続き一階へと下りていく。するとそこには酔いつぶれた仕立て屋ハンスルに靴屋のプフリームがテーブルに突っ伏していた。酒場で働く女の子グレーテルはそんな二人を必死に揺さぶり起こそうとしていた。
グレーテルが三人に気づき、顔を向ける。
「あ、お客さん。お帰りですか」
マンスロートは羽織っていたローブのフードを目深にかぶり、顔を隠した。
「ええそうよ」
「世話になったな」ゲオルクが言った。「後でマルタに礼を言っておいてくれ」
「ありがとうねお嬢ちゃん」ホレがやさしく微笑む。
三人はグレーテルに礼を言うと、酒場から出て行った。
グレーテルは三人を見送ると、酔いつぶれている二人に向かって叫んだ。
「いい加減におきてくださいよ! この酔っぱらい!」
その叫び声で二人は呻くようにして顔を上げた。
「……もう朝かよ」
ハンスルが大きなあくびをした。
プフリームが背伸びをする。
「……やあグレーテル。おはよう」
「まったくもう」
グレーテルは腕組みをし、二人を軽蔑のまなざしで見つめた。
「それよりもマルタさんが昨夜出かけたっきり帰ってこないの。どこへ行ったかしらない?」
「マルタ?」
ハンスルが首を傾げ唸る。
「たしか劇場がどうとか言ってなかったけ?」
「わかった」プフリームが言った。「きっと今日公演される劇をこっそり見に行ったんだよ。一般庶民は入れないから夜のうちに忍び込んでね。俺たちも今から忍び込もうぜハンスル」
「そいつはいい考えだプフリーム」ハンスルは立ち上がった。「よしいくぞ!」
二人は和気あいあいとしながら酒場から出て行く。
一人酒場に残されたグレーテルはぼやいた。
「また一人っきりになっちゃった。つまんない。キュルト君が遊びにきてくれないかな……でも無理よね。お姫様の従者で忙しいもん」




