第四幕 第十八場
深夜、おっぱい王国の劇場に忍び込むバニーガール姿の女。それは酒場の看板娘であり巨乳派の工作員であるマルタだった。マルタは薄暗いホールに目を凝らし、誰もいない事を確認すると、忍び足で進み舞台裏にある楽屋を目指して行く。
「今のうちに重火器を使えなくしとけば、シュヴァンツ王国の工作員の計画は失敗に終わる。そして巨乳姫様はお城に戻り、すべては元通りうまくいく。我ら巨乳派の思い通りにね」
マルタは楽屋のドアの前にたどり着くと、部屋のドアを静かに少しだけ開けて中をのぞき見る。楽屋の中には怪しい人影は見当たらない。誰もいない様子だった。
マルタは低く口笛を吹く。
「チャンス」
マルタが楽屋に一歩足を踏み入れた瞬間、重力が反転し一瞬で景色が逆さまになった。
「な、なに!」
マルタは突然の出来事に状況が把握できず慌てふためく。
「何がおこった?」
「座長の言う通りだ」
誰かがそう言うと楽屋にランプの明かりが灯る。
「こうして罠を仕掛けて待っていたかいがあったもんだよ」
逆さの床を歩いて来るのは兎だった。
マルタはすぐさま逃げ出そうとするも、何かに足をとらわれ動けない事に気づいた。それは右足首にまとわりつく荒縄だった。
逆さに立つ兎がランプを手にし、こちらに近づいてくる。
「逃げられないよ」
そう言ってランプを掲げ、マルタを明るく照らす。
その時にようやくマルタは気づいた。自分が天井から伸びる荒縄に右足首をとらわれ、宙吊りにされている事に。
「しまった。罠か」
「おーいみんなお客さんだよ」兎が叫んだ。
すると不気味な笑い声とともに、動物の集団が暗闇の影から姿を現した。
「さてと、この女どうする?」犬が言った。
「それは決まっているでしょ」猫がくすくすと笑う。
「それもそうだな」
「ちょっとやめて。私に何をするつもりなのよ」マルタが怯えだす。
「抵抗しなければ」狐が言った。「痛い目にあう事も命を落とすこともないさ」
「おやおやよく見たら」兎が言った。「僕たちと同じウサ耳をつけているねこの人間」
「そういえばよ」犬がにやりと笑う。「うさぎっていうのはさみしいと死んじまうんだろ?」
「だったらかまってあげなくちゃ」別の犬が舌をだして、息を荒らげた。
「いや、やめてお願い!」
マルタが悲痛な叫び声をあげる。
「私に近づかないで!」
兎がマルタのウサ耳に向かってささやいた。
「もう手遅れさ兎ちゃん。あきらめな」
マルタの泣き叫ぶ声が楽屋にこだまする。




