第四幕 第十場
おっぱい王国の城下町を歩く二人の男女。それはローブを羽織った巨乳姫マンスロートに、鎖の拘束を解かれた仕立て屋ハンスルだった。
「私どうすればいいのでしょうか?」
マンスロートは顔を真っ赤にして言った。
「お城に帰るんじゃないのかよ」ハンスルが言った。「どっからどう見たっていい男だったぜ、あの王子様。きっとあんたのいいダンナになること間違いなしだぜ」
「やだもうハンスルさんったら」
マンスロートは右の拳でハンスルを何度も殴り、照れ隠しをしてみせた。
「そんなこと言わないでよ。はずかしいじゃない」
ハンスルは鼻血を拭いながら言う。
「もう姫様ったらはしゃいじゃって。すこしは落ち着いてくださいよ」
マンスロートは真っ赤な顔を両手で押さえて首を横に振る。
「やだ私ったら、つい浮かれちゃっていましたね。はずかしいですわ」
そう言うと早口で捲し立てる。
「もうどうしましょう。あんな素敵な殿方と一緒になれるなんて考えただけで、私の胸はどきどきしてしまいます。あんな天使のような美青年だとは思ってもいなかったから、会ってどんな顔をすればいいのか困ってしまいますわ。ああ、どうしましょ。どうしましょ。どんな事を話せばいいのかしら。あなた子供は何人ぐらいほしいですか、とか。キャー、私ったら大胆。自分で恥ずかしくなっちゃいます。ああ、そんな事言って彼は私の事をはしたない女だと思うかしら。いえ、そんなことはありませんよね。夫婦ですものいたって普通の会話よ。そして夜になるとベッドでめくるめく官能の時をってキャー。妄想はここまでにしないと、私ったら気が早すぎですわ。まだ一度しかお逢いしていないのに、こんなにも彼の事を思うと胸が熱くなってしまう。きっと二人は結ばれる運命だったのよ」
そこでハンスルに顔を向ける。
「ねえ、そう思わない?」
ハンスルは上の空でうなずいた。
「ああ、そう思うよ」
「きっと神様がそうなるよう私達に魔法を掛けてくれたのよ。恋の魔法の呪文をね」
「……魔法の呪文?」
ハンスルは思案げに唸る。
「それって、ブリックレーブリット?」
「なんですかそれ?」
マンスロートが楽しげに笑う。
「もうハンスルさんったら、あなたが魔法の呪文を知ってるわけないでしょ。なにがブリックレーブリットですか」
その瞬間、マンスロートの手が光り輝いたかと思うと、手のひらから上空に向かって光の玉が発射された。光の玉は花火のように弾け、ハートの形に輝き、そして消えていった。
マンスロートは顔を真っ青にさせ、へたり込む。
「な、なによ……これ? 魔法なの?」
「おいおいまさか」
ハンスルは驚き顔でマンスロートを見下ろす。
「姫様も魔女なのか?」
「私が……魔女?」
マンスロートが震えだす。
「そういえばあの魔法使い、私が魔女の血を引いていると言っていた。まさか本当だったの。だとしたら私は誰からその血を受け継いだのよ?」




