第四幕 第七場
おっぱい王国にある劇場では、動物達による劇団であるティーア劇団が、演劇の稽古に精を出していた。
「巨乳派よ」そう言って兎が犬に手を伸ばす。「我々とともにこの国のために戦ってくれ」
「貧乳派よ」そう言って犬が兎の手を取った。「ともに戦おうではないか。この国のために」
次の瞬間、舞台の照明が消え真っ暗になる。数秒後、一筋のスポットライトの明かりが舞台に差す。照らし出されているのは座長のクレープスだった。
「こうして巨乳派と貧乳派は和解し、おっぱい王国は一つにまとまったのです!」
クレープスは声を張り上げた。
「そして今、おっぱい王国はシュヴァンツ王国と和平を結び、新たな平和を築き上げるのです!」
照明がつき、舞台が明るくなる。
クレープスは後ろに振り返り、動物達に拍手を送る。
「みなさんよくがんばりました。リハーサルは完璧ですよ。ともてすばらしかった。後は明日の本番を待つのみです」
劇団員の動物達は笑顔でお互いをほめたたえる。
クレープスは満足げにうなずく。
「それにしてもまさか、あのおっぱい王国とシュヴァンツ王国が和平を結ぶとは思いませんでしたね。長年の間、犬猿の仲だったのに」
そこで感心したかのように唸る。
「とても感慨深い」
「座長」狐が言った。「たしかあなたの出身地はシュヴァンツ王国でしたね」
「ええ、そうですとも。だからこそ両国間で結ばれた和平条約のためにも、今回の演劇は必ずや成功させましょう」
「ええ、そうですね。絶対に成功させましょう」
「もちろんですとも」猫がくすくすと笑いながら言った。「絶対に成功させてやりましょう」
他の動物達もくすくすと笑い始めた。その笑い声はやがて不気味な声に変わっていく。
「あ、そうだみなさん」クレープスが言った。「ちゃんと小道具の管理はしっかりしてくださいよ。特に舞台用の銃や大砲の管理は厳重にお願いします。もし心ない誰かが、悪意を持って本物とすり替えでもしたら、明日の演劇で血の雨を降らす事になってしまいますからね」
動物達がどっと笑った。
「まさか座長」犬が言った。「そんな悪いヤツがいるわけないじゃないですか」
「そうですよ」別の犬が言った。「そんなヤツいるわけがない。いるわけが」
「そうでしたそうでした」
クレープスは嬉しそうに言った。
「そんな悪事、考える人がいるわけがないですよね。私とした事が物事を悪く考えすぎていました。誠に申し訳ない」
再び動物達が不気味に笑い始める。その声は劇場のホールにこだました。




