第四幕 第三場
おっぱい山の年中緑に覆われているゼムジ山。その山にある魔法使いリンクランクの住み処である洞窟の中では、二人の男が倒れていた。一人はすでに死んでしまったリンクランク。そしてもう一人は赤い瞳の騎士ベンヤミン。
倒れているベンヤミンの指がわずかに動いた。するとベンヤミンが呻きながら体を起こし、苦悶の表情を浮かべる。
「……ちくしょう。あのバケモノめ。打ち所が悪かったら死ぬところだったぞ」
ベンヤミンは洞窟内を見回す。洞窟内の開けた空間の壁には、いくつものたいまつの火が灯り、あたりをほの明るく照らしている。半壊したベッドにはリンクランクが横たわり、壁にはだらりと垂れ下がる鎖があった。
ベンヤミンは立ち上がるとリンクランクを見る。
「つかえないやつめ。お前は巨乳姫をさらうだけでよかったのに、あんなバケモノを呼び出しやがって」
そうぼやくと壁から垂れ下がる鎖に顔を向ける。
「あの賊め! どさくさにまぎれて巨乳姫を始末できたというのに、邪魔しやがってちくしょう!」
ベンヤミンは舌打ちすると落ちていた剣を拾い上げ、天井を見上げる。はるか上方にわずかな光が見える。
「とてもじゃないがあそこまで登るのは無理だ。ここから脱出するのは不可能だ……ってちょっと待てよ」
ベンヤミンは再びあたりを見回す。
「あの賊と巨乳姫がいないと言う事は、この洞窟から脱出したということだ」
ベンヤミンはたいまつを手にすると、洞窟の出口を求めて暗闇の中を進んでいく。
「いったい俺はどのくらい気をうしなっていたんだ? 今お城はどうなっている?」
ベンヤミンは押し寄せる疑問に不安を募らせる。
「貧乳派の同士達は、うまく貧乳姫様をお助けしてくれただろうか? ああ、不安で不安で仕方がない」
しばらく進むと道行く先に、小さな明かりが見えた。
「そういえばあのバケモノはどこに姿を消したんだ?」
ベンヤミンは嫌な予感にさらに不安を募らせ、険しい表情になる。
「あのバケモノ、魔法使いのリンクランクが死んだ事で、この先どんな行動に及ぶか見当もつかない。あの恐ろしい強さ、下手したらこの国が滅ぼされるやもしれぬ。早くこのことを伝えねば」
洞窟を抜け外へと出ると、すでに太陽が頭上高くのぼっていた。
ベンヤミンは目を細め遠くにあるお城を見やる。次いで城下町に目を向けると、とある一角に人々がたくさん集まっているのを見て取った。人々は城下町にやってきた馬車の一団に群がっている。
「まさかあれは……シュヴァンツ王国の連中だ」




