第四幕 第一場
朝日が昇り、ついにこの日がやってきた。おっぱい王国のお城のとある一室では、鵞鳥番のリーゼルが数人の小間使いの女達に囲まれ、ドレスの着付けをしていた。それを見守る従者のキュルトヘンの表情には不安の色がにじんでいる。
「そう心配しないでキュルトヘン」リーゼルが言った。「大丈夫ちゃんとうまくやるから」
「……はい。よろしくお願いします、リーゼルさん」
リーゼルのドレスの着付けが終わると、金髪のカツラがその頭に乗せられる。小間使いの女達は櫛で髪型を整え始める。
「気をつけてキュルトヘン。私はマンスロート」
リーゼルが注意を促す。
「今日はシュヴァンツ王国の王子様が来るのよ。うっかり口をすべらさないでね」
「そうでしたね。以後気をつけますマンスロート姫様」
キュルトヘンがリーゼルに言った。
リーゼルの身支度が整うと、小間使いの女達は軽く頭を下げ部屋から出て行く。部屋には巨乳姫マンスロートに扮したリーゼルとキュルトヘンだけが残された。
「ねえキュルトヘン」
リーゼルが窓の外を見やる。
「私これでよかったのかしら?」
「と言いますと?」
「私ね、昨日マレーン姫様が泣いているのを見て思ったの。このままこの私を、マンスロート姫様を結婚させていいのかって。だって本人がいないところで、勝手に結婚させられるのよ。それもマンスロート姫様の気持ちを無視して」
リーゼルはそう言うと、浮かない顔をキュルトヘンに向ける。
「マンスロート姫様はまだ見つからないの?」
「まだ見つかっておりません。姫様の失踪に関係があると思われる賊を追っていた騎士二人も、未だ帰ってきていません」
「……そう」
「だがご安心くださいリーゼ……マンスロート姫様。姫様とシュヴァンツ王国の王子との結婚式までには、まだひと月ほどの猶予があります。それまでに姫様を——」
「キュルトヘン!」
リーゼルは声を大にし、キュルトヘンの言葉を遮る。
「あなた何もわかっていない。今日この日に私は、マンスロート姫様はシュヴァンツ王国の王子様と出会うのよ。それがどういう意味かわからないの。二人の大切な初めての出逢いなのよ」
キュルトヘンは暗い表情を浮かべた。
それを見てリーゼルはあやまる。
「……ごめんなさいキュルトヘン。あなたにそんな事言ってもしょうがないわよね。私ったらつい感情的になってしまったわ。許してちょうだい」
キュルトヘンは笑みを繕う。
「僕は気にしてませんよマンスロート姫様」
リーゼルも笑みを繕う。
「早く見つかるといいわね姫様」




