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第三幕 第十二場

 おっぱい山の年中雪に覆われているジメリ山。その山頂にある古びた家の中では、靴屋のプフリームに青い瞳の騎士ゲオルク、それに魔女の格好をした中年の女性がテーブルを囲んで座っていた。


「そうだね、まずは自己紹介といこうじゃないか」女性が言った。「私はこのジメリ山に住む魔女。名前はホレだよ」


「おっぱい王国に仕える騎士ゲオルクと申します」


「俺は靴屋のプフリームという者です」


 魔女ホレはほおづえをついた。

「そんで、どうしてあんた達はこんなところで追いかけっこなんかしてたんだい?」


「そ、それはお城に侵入した賊を捕まえるためにこいつを追っていただけで、それはあくまで騎士としての仕事なんだ」

 ゲオルクは顔を赤らめながら言った。

「べ、別にこいつのことが好きで追いかけ回していたんじゃないんだからね」


「何言ってんだいあんたは」

 ホレはあきれ顔になるとプフリームに顔を向けた。

「プフリームとかいったかね。あんたはどうしてお城に忍び込んだんだい?」


「それはお城の地下にものすごい宝物を王様が隠していると聞いたから、それが欲しくて忍び込んだのさ」

 プフリームは悪びれた様子もなく言った。

「でも、いざ地下に忍び込んでみるとそこにあったのは宝物じゃなくて、鎖につながれた少女だったんだぜ。まったく驚きだよ」


 ホレが眉をひそめる。「少女?」


「そうそう。しかもそいつは死んだおっぱい王国の第二王女マレーンの名をかたったんだぜ」


 ホレの顔がにわかに張りつめた。

「……マレーンが死んだ。どういうことだい?」


「マレーン姫様なら」ゲオルクが言った。「七年前に流行病でお亡くなりになっています」


「それならどうして地下にマレーンがいるのさ?」


「いやいや。あれはマレーン姫なんかじゃねえよ」

 プフリームが首を横に振った。

「だってあの女、魔法を使ってきたんだぜ。あれは間違いなく魔女だよ」


 ホレの目が大きく見開いた。

「……そうかい。魔法を使ったんだね」


「しかし王様はどうして魔女を地下に監禁してたんだ?」

 ゲオルクが言った。

「魔女なんて忌み嫌われる存在を」そこでホレの顔を見てはっとする。「いや、別にあなたの事を悪く言っているのではないのです。悪い魔女の事を非難しているだけで、あなたはよい魔女——」


「気にしなくていいさ」ホレがゲオルクの言葉を遮った。「魔女は忌み嫌われる存在。それは私が身をもってよく知っているよ。だからこんな人のいないへんぴな所に住んでいるのさ」


 きまり悪さから、ゲオルクは押し黙ってしまう。


「ねえホレおばさん」プフリームが言った。「あの『ブリックレーブリット』っていうやつは魔法の呪文なのかい?」


「ああ、そうだよ。魔法を使うための基本的な呪文さ。たいていはそれでなんでも出来る」


「基本的っていうことは他にも呪文があるのかい?」


「……あることにはあるよ。でもそれは禁断魔法。唱えるだけで山一つ簡単に吹き飛ばす事が出来るほどのおそろしい威力。決して使っちゃいけないのさ」


 プフリームがつばを飲む。「そいつは恐ろしい」


「まあ私はそんなことしないけどね」

 ホレは息をつくと立ち上がる。

「もうそろそろ日も落ちるころだ。あんたら今日は泊まっていきな。寝床は用意してやるよ、ふかふかのベッドをね」


「やった!」プフリームは感激する。「夜通し走りっぱなしでくたくただったんだ。すぐにでもベッドで横になりてえよ」


「魔女ホレよ」ゲオルクが口を開いた。「申し出はありがたいのだが、私にはやらねばならないことがある。すぐにでも山を降りなければ」


「ま、まさか俺を連行するのか」プフリームが慌てだす。


「ち、違う」ゲオルクは顔を真っ赤にして否定する。「お、お前のことは、み、見逃してあげるんだからね」


 プフリームがほっと胸を撫で下ろした。

「そうかよかった。やさしいんだなお前って」


「は、はあ!」ゲオルクが大声をあげた。「べ、別に勘違いするなよ。ほ、他に大事な任務があるから、見逃してあげるんだからね!」


「うるさいね。小ネズミのように静かにしな」

 ホレがゲオルクを注意する。

「まったく女々しいヤツだね。何いちゃついてんだよ、しかも男同士でさ」


「魔女ホレよ。これは違う。いちゃついてなどいません」ゲオルクは否定する。


「わかったわかったから、今日はもう寝なよ。疲れてるんだろ」


「先ほども申しましたが大事な任務があるため、すぐにでも山を降りたいのです」


「大事な任務っていったいなんなのさ」


「そ、それは……」ゲオルクは口を濁した。


「なんだい言えないのかい。言わなきゃ、この家から出してやんないよ」


 ゲオルクはため息をついた。

「わかりました。ただしこのことは他言無用でお願いしたい。じつは巨乳姫であるマンスロート姫様が行方不明なのです。私はその捜索に——」


「なんですって!」ホレが叫んだ。「あの子が行方不明?」


 ゲオルクはホレの狼狽っぷりに戸惑う。

「魔女ホレよ。大丈夫ですか?」


「ゲオルクよ。今日は泊まっていきな」

 ホレが険しい顔つきで言った。

「そして何があったかすべて私に教えなさい。そしたら私もマンスロート姫の捜索に力を貸してあげるよ」


 こうしてゲオルクとプフリームは、魔女の家に泊まる事になった。

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