第三幕 第九場
ゼムジ山の洞窟の中では、魔法使いリンクランクの亡がらを唖然としながら見つめる仕立て屋のプフリームと、そしてその様子を見守る巨乳姫マンスロートの姿があった。
「……え、死んだの?」
マンスロートが言った。
「あの魔法使いが?」
その声に反応したハンスルが、慌てふためきながらマンスロートに顔を向ける。
「ち、違う。お、俺じゃないぞ。俺はたまたまベッドの上に落ちただけなんだからな。じいさんを押しつぶしたりなんかしてないぞ。俺のせいじゃねえぞ!」
「気にしないでください。そいつは悪い魔法使いで死んで当然なんです」
マンスロートはそう言うと、鎖につながれた両腕を振り動かし、こすれる金属音を立てた。
「それよりもこの鎖を外してください。お願いします」
「なにがどうなってるんだ?」
ハンスルはわけがわからずマンスロートを見つめる。
「っていうかあんた巨乳姫じゃねえか。どうしてこんなところに捕まっているんだ?」
その時だった、洞窟の天井から雄叫びが聞こえてきた。
「おいおいまじかよ」
ハンスルは天井を一瞥すると、その場から急いではなれる。そしてマンスロートの背中の陰に身を隠した。
「ちょと何をするのよ」マンスロートが言った。「私の体に触らないで」
天井から赤い瞳の騎士ベンヤミンが落ちてくる。ベンヤミンはひざまずくようにして着地すると、何ともなかったように立ち上がった。
「賊め。ここが貴様の隠れ家だな」
「ベンヤミン!」マンスロートが歓喜の声をあげた。
「巨乳姫!」
ベンヤミンは、壁から伸びる鎖によって拘束されているマンスロートに顔を向けた。
「こんなところに監禁されていたのですね。今すぐお助けします」
「そこから動くんじゃねえ」
ハンスルがマンスロートの肩越しに顔をのぞかせる。
「もし動いたら」
そこで言葉を切ると、後ろからマンスロートの胸に手を回し、その大きな胸を鷲掴みにしてしまう。
「この巨乳姫の胸を揉みしだくぞ」
マンスロートは悲鳴を上げた。
「な、何をするのですか、いや、やめて!」
「賊めが!」
ベンヤミンは怒り心頭といった様子で剣を構える。
「絶対に許さんぞ!」
「動くなと言っているのがわからねえのか!」
ハンスルがマンスロートの胸を揉みだした。
「ちょ、や……やめて」
胸を揉まれたマンスロートは悶えながら身をよじる。
ベンヤミンは思わず顔を背ける。
「貴様。姫様になんて事を!」
ハンスルは胸を揉み続ける。
「こっちに来たら巨乳姫の胸をもっと揉むぞ」
「なんて卑劣なヤツだ」ベンヤミンが唇を噛んだ。
「な、何をして……いるのですか、ベンヤミン」
マンスロートが悶えながら言った。
「は、早くこの男を……斬りなさい」
そこで喘ぐようにして息を詰まらせる。
「で、でないと……私、どうにか……なって……しまい……そうだわ」
息が荒くなり、顔を赤くさせる。
「し、しかしそのためには、姫様のあられもない姿を見てしまう事になります」
「か、かまい……ません」
マンスロートの声がか細くなる。
「おね……がい……はやくして」
ベンヤミンが雄叫びをあげた。そして目をつぶり二人のもとへと駆け出す。
「目をつぶれば見なくてすむ! このまま賊を斬り捨てれば問題ない!」
「馬鹿かお前は!」
ハンスルはそう叫ぶとマンスロートを羽交い締めにし、後ろに倒れるようにして思いっきり地面へと引き寄せる。
マンスロートは地面へと倒れるハンスルに引っ張られるも、両手首が鎖で繋がれていたため、両腕を掲げるようにして体を斜めに傾けるような姿勢になった。
雄叫びをあげながら走ってくるベンヤミンは、剣を横にし腰の高さに構えている。
「くそったれ!」
ハンスルは飛び上がるようにして腕を伸ばすと、マンスロートの手首が繋がれている鎖の先を掴み、全体重を掛けて思いっきり引っ張った。
その瞬間鎖は緩み、マンスロートの腕は重力に引っ張られるようにして折り曲げられ、体は地面に倒れているハンスルと重なる。
「死ね賊め!」
二人の目の前にたどり着いたベンヤミンが剣を水平に振る。
剣はマンスロートの頭上を通過し、壁から伸びる鎖を断ち切った。断ち切られた鎖はマンスロートの大きな胸へと落ちていく。
「てめえは巨乳姫を殺すつもりか!」
ハンスルは怒鳴った。
ベンヤミンが目を開けた。
「し、しまった。ついうっかり」
そう言うとマンスロートに顔を向ける。
「大丈夫ですか姫様?」
マンスロートは泡を吹いて気絶していた。
「いったいこれは何の騒ぎですかご主人様?」
そう言って暗がりから姿を現したのは、ピエロの格好をした悪魔の小人だった。悪魔の小人はリンクランクの死体を見て愕然とする。
「な、なんだこいつは?」
ベンヤミンはいきなり現れた悪魔の小人に釘付けとなった。
その隙をハンスルは逃さなかった。ハンスルは急いでマンスロートを肩に担ぎ上げると、悪魔の小人の横をすり抜け、闇へと姿を消した。
「貴様待て!」
ベンヤミンは走り出すも、悪魔の小人が立ちふさがり、その進路を塞いだ。
「お前は逃がさないよ」悪魔の小人が言った。
ベンヤミンは舌打ちする。
「どうしてこんなことになるんだ。聞いてないぞこんなの」




