第三幕 第七場
おっぱい山の年中緑に覆われているゼムジ山。それを駆け上る仕立て屋ハンスルは、赤い瞳を持つ騎士ベンヤミンに追われていた。
「ついてくんなよ!」ハンスルが叫んだ。
「黙れ賊め!」ベンヤミンも負けじと叫び返す。
そうこうしているうちに、二人はゼムジ山の頂上へとたどり着いた。そこはなだらかな平地で、腰の辺りまで伸びている草が一面に広がっていた。
体力の限界に近いハンスルの足は、走るのを拒否する。
「だめだもう動けねえ」
その場に膝をつき、息を喘がせた。
「やっと観念したか賊め」
ハンスルに追いついたベンヤミンは剣を抜いた。
「両手を上げてこちらを向け」
ハンスルは言われた通り両手をあげ、膝をついた状態でベンヤミンに向き直る。
「おい貴様」
ベンヤミンはハンスルののど元に剣を突きつけた。
「姫様はどこにいる?」
「……姫様?」
ハンスルは汗だくの顔でベンヤミンを見つめる。
「なんのことだ?」
「とぼけるな。姫様の居場所を答えろ」
ハンスルは息を整えると言った。
「……まさか地下にいたあの女。本当に姫様だったのか」
「地下だと」
ベンヤミンの目つきが鋭くなる。
「貴様、姫様を地下に監禁したのだな」
ハンスルは首を横に振った。
「違う、監禁されていたんだ。鎖にしばられて」
「貴様!」
ベンヤミンの目が血走る。
「姫様を鎖でしばって何をした」
ハンスルは視線をそらした。
「いえ、何もしてません」
「嘘をつくな。正直に言わないと斬る」
「……ごめんなさい。ちょっとだけ胸を揉んじゃいました」
「おのれ貴様!」
ベンヤミンは剣を頭上高く掲げる。
「巨乳姫の胸にたわわに実った脂肪細胞の固まりを揉むとは許しておけん。今すぐ切り捨ててやる!」
「はあ、巨乳姫?」
ハンスルは首を傾げた。
「いやあれは巨乳ってもんじゃねえぞ。まったく胸がない。そう言うならば貧乳姫だ」
「黙れ死ね!」
ベンヤミンは剣を振り下ろす。
「あの世で詫びろ!」
咄嗟にハンスルは後ろにでんぐり返り剣を避けると、身を翻し走り出す。
「もう許して!」
「誰が許すか賊め!」
ベンヤミンが剣を構えて追跡しようとしたその瞬間、目の前を走っていたハンスルがほんの一瞬で忽然と姿を消した。
「……なんだと」
ベンヤミンは目を丸くし、唖然と立ち尽くした。




