第三幕 第一場
おっぱい王国のお城のとある一室で、黒いドレスを着た黒髪の小さな女の子がにっこりと笑った。
「すごいでしょうお父様」
女の子にお父様と呼ばれたのは、若かりし頃のおっぱい王国の王様だった。「な、なんたることだ」
そう嘆くと頭を抱えて膝をつく。
二人のいる部屋の中央にはテーブルがあり、その上には花瓶が置かれている。花瓶からは巨大な植物のツルらしきものが天井へと伸び、そこから四方の壁へと広がって、バラによく似た巨大な赤い花をいつくも咲かせていた。
女の子はうなだれる王様の顔をのぞき見る。
「お父様。私もお母様みたいに——」
「マレーン!」
王様が険しい表情で女の子の両肩を掴んだ。
「どうしてお前は……」
「お、お父様?」女の子は戸惑っている。「どうしてそんな怖い顔をしているの?」
「残念だよマレーン」
「えっ?」
「お前はもう存在してはいけないんだ」
そう言った王様の目からは涙がこぼれ落ちた。
次の瞬間、目の前の光景がぐにゃりと歪み始めた。コーヒーにミルクを入れるかのごとく、世界が渦巻くようにして歪み、混ざり合っていく。
「誰か誰か助けてよ!」女の子は泣き叫んだ。「ねえ誰か!」
歪む世界。もはや原型はなく、どこが上でどこが下かわからない。女の子は宙に浮くかのようにたゆたう。
「起きろ!」
どこからともなく怒鳴り声が聞こえた。
「起きるんだ! 早く——」
黒髪で肌着を着た少女が目を覚ますと、そこはおっぱい王国の台所奥にある食料庫だった。
少女のまわりには、いかつい顔をした兵士達がヤリをこちらに突きつけて構えている。
兵士の一人が叫んだ。
「いいかげんに起きろ賊め!」
「……夢か」
少女はそうつぶやくと立ち上り、兵士達を睥睨する。
「私は賊などではない。おっぱい王国第二王女マレーンである。お前達、今すぐに風呂と着替えの準備をしろ」
「お前が第二王女だと」とある兵士が言った。「こいつはとんだおもしろいジョークだ」
少女の小さな胸にヤリを突きつける。
「おまえが本当に巨乳姫様の妹なら、貧乳姫様と呼んでやらないといけないな」
兵士達があざけりの笑い声をもらす。
少女は舌打ちをした。
「まったくどいつもこいつも人の胸を馬鹿にして。お仕置きが必要のようだな」
目つきを鋭くさせてある言葉を口にする。
「ブリックレーブリット」




