第二幕 第十二場
刻々と時間が過ぎ月が高く昇る頃、おっぱい王国にある劇場では、動物達の劇団であるティーア劇団が夜遅いにも関わらず稽古に励んでいた。
舞台袖から兵士の格好をした動物達が、大砲を載せた荷車を押して登場してきた。そして舞台の中央で荷車を止めると、大砲の角度を調整する。
「巨乳派のやつらめ!」兎が言った。「目にもの見せてやる」
「そうだそうだ」他の動物達が声をそろえて言った。「貧乳派の恐ろしさを教えてやれ!」
「ストップ!」
一番前の座席で劇を見ていた座長のクレープスが叫んだ。
「それではダメです」
猫がクレープスに顔を向ける。
「座長。何がいけなかったのでしょうか?」
クレープスは大砲を指差す。
「角度が甘い。もっと遠くを狙うようにセットしなさい」
そう言うと後ろを振り向き、三階にある贅沢にしつらえられた観客席を指差した。
「おっぱい王国の王族達が座るであろう、あそこの観客席を狙うようにして角度をあわせなさい」
「座長」
犬がくすくすと笑った。
「そんなことをして、もし演劇本番時に何者かによってこの偽物の大砲が本物とすり替えられでもしたら」そこで間を置く。「大変な事になりますよ」
狐がにやついた笑みを浮かべた。
「大丈夫だって。そんな悪い事を考えているヤツなんているわけないさ。でも万が一、そんなことになってしまったらどうなるんだろう?」
「大変いい質問だ」
クレープスは笑顔で言った。
「もし本番で本物の大砲をぶちかましてやったら、おっぱい王国の王様をはじめとする王族関係者はみんな死んでしまうだろう。もちろん花婿としてやってきたシュヴァンツ王国の王子様もね」
「それは大変だ」
猫がさも驚いた様子で言った。
「そうなればシュヴァンツ王国は激怒し、おっぱい王国に戦争を仕掛けてくるかもしれないよ。そうなったらどうなるの?」
「大変いい質問だ」
クレープスは笑顔でうなずく。
「王様をはじめとする王族達が死んでしまったことで混乱するおっぱい王国は、あっという間にシュヴァンツ王国に征服されるだろう」
その言葉を聞いた動物達は不気味な笑い声を漏らした。
一連の会話をホールの後ろで身を潜め、盗み聞きする人物がいた。その人物はバニーガールの姿にローブを羽織っている。それは酒場の看板娘マルタだった。
「お金に目がくらんで、ほいほいと酒場を抜け出して劇場に来てみれば、とんてもないものを見ちまったよ。まったく」
マルタの顔には焦りの色がにじんでいる。
「あいつらどうして巨乳姫様の結婚を邪魔するんだ。もしかして貧乳派の工作員なの?」
「だからみなさん」クレープスが言った。「大砲の扱いはくれぐれも注意してくださいよ」
動物達は元気よく返事をすると、舞台袖に下がっていく。
「こいつはやばいね。シュルツ様に報告しなきゃ」
マルタは静かにその場から立ち去った。




