第二幕 第十一場
おっぱい王国のお城の一階奥では、よろめきながら歩く長い黒髪の少女の姿があった。少女は肌着姿で、両の手首にはちぎれた鎖が巻かれている。その少女は先ほどまで地下に監禁されていた少女だった。
「賊どもめどこへ逃げた」
少女はあたりを見回す。アーチ型の天井をもつ通路には人影が見当たらない。
「おかしい。賊はおろか警備の兵すらいないのか」
そこで舌打ちする。
「だからこうも簡単に賊に侵入されるのだ」そう言うと苦笑する。「だがおかげで自由になった」
少女は通路を進む。そしてたどりついたのは薄暗いお城の台所だった。
少女は誰もいない台所を見渡す。
「ここにもいない。どこへ逃げた」
不意にお腹の虫が鳴き、少女はよろめくようにして床にへたり込む。
「……まずいな。このままだと気を失ってしまう」
窓の外から男の叫ぶ声が聞こえてきた。「待て賊め!」
「逃げるというならば切るぞ!」別の男が叫ぶ声だ。
少女はふらつきながらも立ち上がると、窓の外に目をやる。黒い二つの人影を騎士然とした二人の男が追いかけている。
「……賊どもの始末はあやつらにまかせるか」
少女はそう言うと咳き込んだ。
「まずい。ひさびさに動いたからめまいがする。お腹もすいて気持ち悪い。これはかなり危険だ」
少女はお腹を鳴らしながら台所の奥にあるドアへと歩を進める。
「小さい頃、夜中に台所に忍び込んで盗み食いをして、お父様に叱られたっけ」
少女はさみしげな笑みを浮かべた。
「お父様は怒られて泣く私の頭を優しく撫でてくれた。そう、あの頃のお父様はやさしかった。あの時までは」
少女はドアにたどり着くと、それを開いた。中に足を踏み入れるとそこは食料庫だった。並べられた棚には様々な食材が並び、天井からはソーセージが吊るされている。
少女はソーセージをむしり取ると、それをがつがつと食べ始めた。一本……二本……三本と次々とほおばっていく。
少女は棚にあったビンを手にすると、栓をしていたコルクを素手で抜こうとする。だがしかしコルクは固くびくともしない。
少女はコルクに人差し指をあてた。
「ブリックレーブリット」
すると次の瞬間、コルクが天井に向かって勢いよく弾けとんだ。
少女はビンに口を付けると、それを一気にあおる。飲み終えた少女の頬はうっすらと赤く染まっていた。
「生き返る」
少女は上機嫌でそう言うと次々と食べ物に手を付ける。
少女は食べ終えると床に寝転がり天井を見つめた。
「食った食った。こんなにも食べたのは七年ぶりだわ」
満足げな笑みを浮かべると目を閉じ、深い眠りに落ちた。




