第二幕 第九場
おっぱい王国のお城の地下に忍び込む二つの影。それはフード付きのローブを羽織った仕立て屋のハンスルに靴屋のプフリームだった。二人は手に持つランプの明かりを頼りに地下の奥へと進んでいる。
「ちょろいもんだぜ」ハンスルが嬉しそうに言った。
「まさかこんなにも簡単に侵入できるとは思わなかったよ」プフリームがにやりと笑う。
嬉々として地下を進む二人の前に、大きな錠前のついた扉が姿を現した。
「こんな鍵ぐらい、楽勝だぜ」
ハンスルは懐から細長い針金を取り出すと、それで鍵穴をしばしの間いじる。
「ほいよ」そう言った瞬間、冷たい金属音とともに錠前が床へと落ちる。
「よくやったハンスル。お宝は目の目だぜ」
「なあプフリーム、俺ものすごい興奮してきたよ。どんなすげえ宝なんだろな」
二人は扉を開け中へと足を踏み入れた。ランプを掲げ部屋の中を照らしながらゆっくりと奥に進み、そして意外なものを目にする。
「どういうことだ?」ハンスルが目をしばたたいた。
「……これが宝物?」プフリームは戸惑っている。
二人が見据える先にあるのは、長い黒髪で肌着姿の少女だった。少女は天井から伸びる鎖によって、両手を組み合わせるように拘束され、床にひざをつくような形で吊るされていた。うなだれるかのように頭を下げている少女のその姿は、まるで神様に祈っているかのようだ。
「なあこれってお宝じゃなくて囚人じゃねえ?」ハンスルが少女に近づく。
「もしかしてガセネタを掴まされたのかな」プフリームがあたりを見回す。
ハンスルが舌打ちする。「ちくしょう損したじゃねえか」
少女が小さく呻きながら顔を上げた。驚く事に少女の口には改造された馬具のハミを噛まされ、声が出せないようにされていた。少女は虚ろな瞳で二人を見つめる。
「おいこいつを見ろよプフリーム」
ハンスルはそう言うと、少女の顔にかかった髪の毛を払いのける。
「べっぴんさんじゃねえか」
プフリームは歩み寄るとランプを掲げ少女を照らし出す。
「この女はどうしてこんなところに捕まっているんだ?」
「さあな、そんなこと知らないね。けど無駄足を踏んだ分はこの女で取り返さないと」
ハンスルはにやけた笑みを浮かべると、少女の後ろにまわりこむ。
「俺を楽しませておくれよ、囚人さん」
後ろから少女の胸に手を回し、それを揉み始めた。
プフリームがあきれ顔になる。
「お前は女の胸を揉む事しか頭にないのか。そんなことしてないで早くずらかろうぜ。宝がないってわかった今、こんなところに長居は無用だぜ」
「もうすこし待ってくれよ……ってあれ」
少女の胸を揉むハンスルの手が止まった。
「こいつの胸、ものすごく小っさい。貧乳じゃねえかよ」
大仰にため息をつく。
「せっかく苦労したのに、その報酬が貧乳を揉むだけじゃむくわれないぜ」
少女が声にならない声で呻く。
「これじゃあ楽しめねえよ」
ハンスルはそう言うと、少女に口に装着されているハミを外し始めた。
「君の官能的な甘い声を聞かせておくれよ囚人さん」ハミを床に投げ捨てる。
ハミを外された少女は咳き込むと、息苦しそうに何度も深呼吸する。
「さあ楽しもうぜ囚人さん」ハンスルが再び少女の胸を揉みだした。
「……私は囚人などではない」少女が弱々しい声で言った。「おっぱい王国第二王女マレーンだ。それがわかったらその手を今すぐどけろ下種」
ハンスルは手を止め、思わず笑い出した。
「なに言ってんだこいつ。頭おかしいのか」
「おいおい聞いたかハンスル」プフリームも笑っている。「こんな地下で監禁されているやつが、この国の王女様だとよ。しかも病気で死んだはずの第二王女様の名前を語ってやがる」
「……なるほど」少女が言った。「私は死んだ事になっているのか」
「おいおいお前、本当にこの国の王女様かよ」
ハンスルは胸揉みを再開する。
「巨乳姫と名高いマンスロート姫様の妹とは思えないほど胸が小さいぞ」
「だとしたらこいつは貧乳姫だな」プフリームが少女の胸を指差す。
ハンスルとプフリームの二人は声をあげて笑った。少女の腹の虫が鳴りさらに笑い出す。
「貧乳姫はおなかがすいているんだね」ハンスルは胸を揉み続けている。「こんな所に閉じ込められ満足に食事も与えられなかったから、栄養が足りなくて胸が育たなかったんだ」
「もうやめてあげなよハンスル」プフリームは笑い続けている。「きっと長い事閉じ込められて頭がおかしくなっているんだよ。だから本気で自分が姫様だと思い込んでいる」
「おい貴様ら、今すぐ水と食料をもってこい」少女の語気が鋭くなった。「そうすれば今までの非礼を忘れ、命だけは助けてやるぞ」
「おいおいどうする」プフリームが笑いながらお腹を抱えしゃがみ込んだ。「この女。俺たちに命令しているぜ」
「立場が逆だぞ貧乳姫様」ハンスルが少女の耳元でささやいた。「俺を満足させてくれれば、命だけは助けてやるぜ」
しばしの間があった。「もういい。お前達賊は殺す」
「そんな拘束された状態で、どうやって俺たちを殺すんだい?」
プフリームが訊いた。
少女はプフリームをにらみつけた。「口が動く」
「おもしろいやつだ。口だけで俺たちを殺してみろよ」
ハンスルが楽しそうに挑発する。
「どうして一国の王女である私がハミを噛まされ、ここに閉じ込められていたか、その理由を教えてあげるわ」
少女は口元をにやりと歪めた。
「ブリックレーブリット」




