第二幕 第五場
おっぱい王国のお城から離れた場所にある堂々とした大きな建物。円形の外観に、それに沿うようにしてバラの植え込みが配置されていた。そこはおっぱい王国の劇場だった。
劇場の中のホールは広く、一階の客席だけでも千を越え、二階の客席を含めると千五百にも及ぶ。そして三階中央には贅沢にしつらえられた客席が用意されており、それはまるでお城の一室をまるまるそこへ移設したかのようだ。そこは王族関係者用の特別観覧席だった。
ホールの舞台の上には、ちょびヒゲを生やしたタキシード姿の男があった。それは動物達の劇団であるティーア劇団の座長クレープスだった。
クレープスは二人の男と会話を交わしている。相手は仕立て屋のハンスルに靴屋のプフリーム。その背後では靴を履いた動物達が互いに舞台衣装を着せ合っていた。
「これはこれは」クレープスが言った。「素敵な衣装ありがとうございました。あなたがたの協力に感謝しますよ。ハンスルさん、プフリームさん」
「いえいえ、こちらこそ仕事をくださってありがとうございます」
ハンスルが言った。
「それにしてもクレープスさん」
プフリームが動物達を一瞥して言った。
「あんたらのティーア劇団ってのは、いったいどんな劇をやるんだい?」
「王様からのご依頼で、このおっぱい王国の史劇をやるのですよ。なんでも花婿としてやってくるシュヴァンツ王国第二王子ローラント様に、この国のことを知ってほしいという、はからいだそうです」
「ほおそいつは興味深い」ハンスルが食いついた。「いったいどんな内容なんだ」
「昔起こった、おっぱい王国の巨乳派と貧乳派の争いを演じます。巨乳派と貧乳派の派閥争いの末、互いに理解し手を取りあい、平和な国へと生まれ変わるお話です」
「あ、それ知ってる」プフリームが言った。「なんでも昔は巨乳派と貧乳派の対立でおっぱい王国が二つに分裂しそうになったってやつだろ。でも隣国のシュヴァンツ王国の脅威の前に互いに手を結び、その危機を乗り越えたとかなんとか」
「ええ、よくご存知で」
クレープスがうなずいた。
「今では考えられませんが、昔はおっぱい王国とシュヴァンツ王国は仲が悪く対立していたのですよ」
「おもしろそうだな」ハンスルが言った。「お城の連中に頼んで俺も見せてもらえないかな」
クレープスが気難しそうな顔で唸る。
「うーん、どうでしょう。今何やらお城はごたごたして忙しいみたいですよ。まあ、王子が来るのですから仕方がないと言えば仕方ないのですが、警備が手薄というのは驚きました。なぜか兵士の多くが町や町の外にいるそうですよ」
ハンスルとプフリームの二人がにやりと口元を歪め顔を見合わせる。
「チャ〜ンス」二人は声をそろえてつぶやいた。




