第4話 襲撃 side A
レギスが地面に着地する。
『ドンッ』
少し遅れて首が落ちた音をしっかりと耳でとらえる。
リム「やった!」
穴の先を見ていたリムは声を上げた。マージは無言でガッツポーズをした。
しかし、レギスの視界は部屋の奥にいる2人の男に向いていた。
手前に立っていたのは自分よりも年上の男。
そして、奥にいるのは自分と同い年くらい。
つまり魔王の子は、奥。
地面を強く蹴り、奥にいる男に向かい剣を振りかざす。
兄「っく!」
が、手前にいた男が机の脚を持ち、こちらに投げつける。
視界のほとんどが机で埋まる。
机は見たところ木製。剣で斬り払えば刃先がこぼれる。
蒼汰「な、なに?何が起こってるの!?」
困惑した男の声が耳に入る。
体を低くし、机を避ける。剣から手は離さない。
低くした視界の先に男が手をこちらにかざしているのが見えた。
兄「転移」
瞬間目の前に先ほど飛んで行っていた机が現れる。
レギス「っ!」
『ガッシャ―ン!』
咄嗟に片手で机を受け止める。
間違いない。ここまで高度な転移魔法の使用者。
奴は行方不明だった魔王幹部の1人ライログ。
急いで体を起こし、奴らに視線を向ける。
ライログは奥にいる男を守るように抱きかかえている。
彼らの周りの空間が歪んでいた。
レギス「逃がすか!」
振り下ろした剣先がライログの肩に当たり、紫色の体液がにじむ。
ライログ「転移!!」
が、次の瞬間手が軽くなる。
2人が落下するように地面に落ち、消える。
レギス「ック…」
剣先には紫色の体液が付着していた。
斬った手ごたえはあった。だがとどめを刺せたか…
そんな遠くに飛ぶ時間は無かったはずだ。探せばきっと近くに…
マージ「レギス!もう魔力が切れる!時間が無いわ!」
レギス「…ッチ。」
レギスは剣を鞘に納めた。
帰る前に、女の死体を回収する。
何の変哲の無い女性の遺体。
レギスの胸に何かどろりとした感情が芽生える。
首を斬る直前。この女は笑っていた。
あれだけ世界を絶望のどん底に叩き落していたはずの魔族が…
撃ち落としたその顔は幸せそうな顔をしていた。
もしかしたら、魔王の子は倒す必要が無かったのか?
*
次元転移魔法の穴を通り元の世界に戻る。
その手には死体を抱えていた。
マージ「よくやったわ。レギス。」
リム「流石です!レギスさん!」
レギス「…いえ、この襲撃作戦は失敗です。」
レギスは抱えていた死体を丁寧に地面に置いた。
レギス「目標は魔王の子だった。だが、俺が倒せたのは王妃だけ。」
手は怒りで震えていた。
リム「…レギスさん」
バウンド「いや、十分だ、レギス。」
レギス「父さん…」
車いすを操作し、死体のそばまで近づく。
バウンド「これは間違いなく魔王妃の物だ。これが意味するのは、奴らが本当に別世界に逃げていたということだ。」
車いすを器用に回転させ、その場にいる全員に体を向ける。
バウンド「…ようやく尻尾を掴んだんだ。奴らの、魔王どものな。」
全員がつばを飲み込む。
バウンド「良く聞け!我々の世界は魔族に苦しめられた。そして今、奴らは別世界へ逃げた!」
全員の手が震えていた。
バウンド「この世界の為だけじゃない。別世界を救うためにも、我々は戦わなくてはならない!そして、今!ここに新たな英雄が誕生しようとしている!」
「「うおおお!!」」
リム「レギスさん!!」
それは紛れもない父から認められたということだった。
レギス「…」
レギスは煮え切らない思いだった。
それは魔王を倒せなかったことに対してではない。
何か決定的な間違いを犯しているような、そんな気がしてならなかった。
レギスは、少なくとも、あの部屋には皆が想像するような苦しみを見つけることができなかった。
良いと思ったら、感想、ブックマークお願いします。喜びます。




