第18話 境界線 side B
毎日走って登校していたあの頃を思い出す。
あの時から息が上がることは無かったが、まさか人間じゃないからだったとは考えもしなかった。
でも、今はそれに感謝している。
これだけ速く走っても疲れないことに。
境界線はどんどん近くなる。
やろうとすることが出来るのか、それは分からない。でも試す価値はある。
勇者への憎しみが消えたわけじゃない。
許したわけじゃない。
認めたわけでもない。
当然今も許せない。
でも、奴はこの世界で守るものが多すぎた。
なんとなく、そんな気がする。
*
どれだけ全力で走っただろうか、境界線は目の前に迫っていた。
その先にあったのは、
『ザザーン』
海だった。
多くの人が行き来する、港。
物資や病院が立ち並んでいる。
境界線は海の真ん中。
蒼汰「…」
ここで自身の魔法を使えば周囲の人を驚かせてしまうだろう。
でも、やるしかない。
蒼汰の目は覚悟が決まっていた。
しゃがみ込んで指先に力を溜める。
瞬間周囲の空気が重くなる。
「な、なんだ!?」
「敵襲か!?」
周囲の声を無視し全身に魔力を巡らせる。
「きゃあ!」
「あれって!」
蒼汰の背中からは真っ黒な大きな翼が生え、頭からは角が生える。
『ドコッ』
鈍い音が蒼汰の脳を揺らす。
周囲から石が投げつけられていた。
『ドコッ』『ドコッ』
止まらない石の雨。しかし、それをすべて受け入れる。
「化け物!」「魔族!どうしてここにいるんだ!」「兵を呼べ!」
叫び声にも近い言葉を噛み締めるように聞き入る。
【ライログ「蒼汰…お前は…優しい子だ…お前に復讐は似合わない…」】
兄の言葉を思いだす。
蒼汰「大丈夫。分かってるよ。兄さん…。」
真っ黒な魔力が全身を包み込み、蒼汰の顔は見えない。
足に力を加え地面を蹴る。高く飛んだ蒼汰は空中を蹴りつけるようにして、そのまま海に向かって飛んでいく。
その見た目はまさに魔王だった。
だが、その目は今までで1番希望に満ちていた。
*
境界線の海は酷く荒れていた。まるで本来繋がるはずの無かった海同士が反発しあっているかのようだった。
蒼汰は空中で器用に体を止める。
蒼汰「…これで、終わらせる。」
指先に力を込める。真っ黒の闇が、かぎ爪のように鋭くとがる。
それを空中に引っ掛けると、
蒼汰「…フンッ!」
空間を掴んだ。
『ミシミシッ!!』
途端鈍い音を立て境界線全体にひびが入る。
蒼汰「…まだだ!」
手に力を込める。
『ミシッ…ミシミシッ』
世界が閉じようとしていた。
空間が2つに戻ろうとしていた。
足元に小さな船が見える。
レギス「…なに、してんだ?」
そこに乗っていたのはレギスとリムだった。
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