第18話 境界線 side A
ベクト「まて!レギス!どこに行くつもりだ!」
屋敷から出ると背後からベクトに声を掛けられる。
レギス「…魔王を倒しに行きます。」
ベクト「無茶だ。死ぬぞ!」
レギス「構いません。」
ベクト「は?何言ってんだ…お前…!」
レギスの目は真っ黒に塗りつぶされていた。
レギス「奴の狙いは俺だ。なら、俺が死ねばすべてが終わる。」
ベクト「自分が言ってることの意味が分かっているのか!自殺する気か!?」
レギス「そんなわけないでしょう!俺だって死にたくない!!」
レギスの絶叫が響き渡る。
レギス「でも…行かないと…勇者として、責任を果たさないと…俺は、俺は…」
膝はプルプルと震えていた。
ベクト「レギス…」
バウンド「だめだ。」
ベクトの裏から車いすのきしんだ音が響く。
バウンド「今のお前が魔王を倒せるとは思えない。もっと強くなってからだ。」
レギス「…じゃあ、魔王を放っておけっていうんですか?」
バウンド「焦るな。経験を積めば倒せるようになる。レギス、お前も会議に参加しろ。行くぞ。」
バウンドは何事も無かったように屋敷に向かう。
レギス「…」
そんな父に背を向ける。
ベクト「!レギス!」
レギス「俺は行く。もう止まらない。止まれない。」
マージ「回転。」
視界が回る。
レギス「…」
マージ「…ごめんなさい。でも、死に行く我が子を放ってはおけないの。」
申し訳なさそうに手をかざす母の姿は優しさで溢れていた。
それが辛かった。
バウンド「ベクト、そいつの剣を奪え。会議に参加できる精神状態じゃなさそうだ。部屋にでも閉じ込めておけ。」
冷たい声が鼓膜に響いた。
*
どれだけの時間が経っただろうか。
自分の部屋でただ茫然と座り時が進むのを待っていた。
外の景色は変わらない日常。これがもうすぐ崩れる。
自分のせいで。
そう思うと胃がひっくり返りそうだった。
部屋の外には監視として兵士が2人立っている。
父は意地でも俺を外に出さないつもりらしい。
剣さえあれば、外の2人を倒し魔王の元に行けるのに。
何度もそう思っては消えていく。
目を瞑り、現実から逃げようと毛布を被っても目の前に迫る現実は動かない。
瞬間世界の空気が再び重くなる。
レギス「!?」
魔王だ。魔王が、何かをしようとしている。
震える体に鞭を打ち扉に手を掛ける。
素手で倒せるか…
強く握ったドアノブを捻ると同時だった。
リム「レギス…」
レギス「うわ!」
リム「シー!外の人にバレちゃいます!」
剣を手に持ったリムが背後に立っていた。
リム「これ、ベクトさんからこっそりもらいました。転移魔法の準備はできています。行きましょう。」
レギス「え?」
リム「魔王を倒しに。行くんでしょう?お供します。私も魔王が本格的に侵攻を始める前の今が決着をつけるべき絶好のタイミングだと思います!」
リムから剣を受け取る。
『バキィ!』
瞬間、爆音と共に赤い空と青い空の境界線にひびが入る。
リム「…急ぎましょう。」
リムが両手を宙にかざすと空間が歪み、穴が開く。その先に見えたのは港だった。
*
港はパニックになっていた。
「なんだよあれ!」
「終わりだ!終わりだ!」
リム「この港で魔族の目撃情報がありました。そして、あのひび…」
レギス「魔王は今あそこにいる。」
レギスは剣をグッと握りしめる。
額に流れた汗は冷たく、体の震えは止まらない。
レギス「リム、飛べる魔法とかってある?」
リム「無いことも無いですけど。魔力の消費が激しいです。できることなら舟で近づきたい。」
レギス「…分かった。」
レギスは周囲を見回し適当な船に乗り込む。
レギス「誰のか知らないけど借りていこう。」
リム「緊急事態ですから、許されますよ。」
動き出した舟は波に揺られて激しく動く。
それでも無理やり舟をこぐ。
たどり着いたそこは異様な光景だった。
レギス「…なに、してんだ?」
空中には空間をひび割らせながら掴む魔王の姿があった。
良いと思ったら、感想、ブックマークお願いします。喜びます。




