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境界線の復讐者~勇者の子に復讐を~  作者: 春間 来善


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第15話 覚醒 side AB 

蒼汰の視界を何かが埋め尽くす。


それが兄の背中だと気が付いたのは、紫色の血が流れた後だった。


レギス「っく!まだだ!」


奥からは剣を振りかざすレギスの姿が映る。


兄の返り血を浴び、レギス自身の赤色と混ざり全体が赤紫に染まった彼の姿が。


ライログ「転移…!」


かすれた声が耳に入ると同時に自身の身体がさっきまでライログの立っていた場所に飛ぶ。


レギス「く…そ…」


『バタン』


大量の血を流し倒れるレギス。


ベクト「レギス!」


ベクトがすぐさま駆け寄るとレギスの身体を支え、リムのもとに走る。


レギス「ごめんなさい…ベクトさん…」


ベクト「馬鹿!喋るな!ひどい傷だ!」


2人の目の前に転がる兄は動かない。


蒼汰「…兄ちゃん?嘘だ…」


兄の周りにある紫色の血だまりが徐々に広がっていく。


蒼汰「…嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ」


ベクト「リム嬢ちゃんゲートは!」


リム「も、もう少しです!」


蒼汰「嘘だああ!!」


瞬間空気が重くなる。


全身が震えるほどのまがまがしい魔力。


リム「あ、ああ。」


レギス「そん…な…」


蒼汰の頭から角が2本生え、爪は鋭くとがり、背中から真っ黒な翼が生える。


レギス「…俺の…せいで…」


そう言うとレギスは白目をむいてベクトの肩にもたれかかる。


ベクト「…ッチ。レギスを頼むぞ。」


リム「は、はい!」


ベクトが斧を強く握る。


ベクト「俺で太刀打ちできるかどうか…」


蒼汰は地面を強く蹴る。指先の空間はドス黒くまがまがしい魔力を覆っている。


ベクト「おらぁ!」


振り下ろした斧の勢いは無残にそのドス黒い闇に飲まれる。


蒼汰の顔は真っ黒な魔力に覆われ見ることはできない。だが、その目からは確かに涙が流れていた。


蒼汰「…!!!」


蒼汰が宙を引っ掻く。空間は割れ、斧とベクトの右腕が吸い込まれ、


ベクト「…!!っぐうう!!」


『バチン』


閉じる。


ベクト「この野郎!」


力強く蹴りつけられ蒼汰の体は吹き飛ぶ。


リム「ベクトさん!ゲートが繋がりました。」


ベクト「すぐ行く!」


蒼汰は体の体勢を戻すと、再び彼らに向かって突撃する。


ゲートを通る三人。手を振りかざす蒼汰。


リム「閉じて!」


蒼汰「うあああ!」


ゲートは渦を巻いて閉じる。


蒼汰の手は宙を裂くだけだった。


*


蒼汰「う、ふぐぅ、うう、ぅ、うう。」


心の中に残ったのは虚しさだけ。


ライログ「…グフ…」


ライログは口から紫色の血を吐く。


蒼汰「!兄さん!」


急いでライログの元に駆けよる。


腹部の大きな切り傷からは大量の血が流れていた。


蒼汰「兄さん…!兄さん!」


虚ろな目で口から血を流す兄の身体からは少しずつ体温が逃げていく。


ライログ「はぁ、はぁ、魔王様。申し訳ありません…最後まであなたの命令を…」


蒼汰「兄さん!」


その声は消え入りそうなほど小さかった。


ライログ「…はぁはぁ、蒼汰…」


ライログは血まみれの手を伸ばす。


蒼汰はその手を握りしめる。


ライログ「ごめん…ごめんな。」


蒼汰「何言ってんだよ。」


2人の頬に涙が伝う。


ライログ「…俺の復讐をしようなんて考えないでくれ…」


蒼汰「…無理だよ…そんなの…」


ライログはゆっくりと顔を横に振る。


ライログ「蒼汰…お前は…優しい子だ…お前に復讐は似合わない…」


蒼汰「兄さん!兄さん!」


ライログの頬に蒼汰の涙が落ちる。


ライログ「…ごめん…な」


目から光が消える。


握った手から力が抜ける。


蒼汰「うわあああああああ」


絶叫が廃倉庫に響いた。


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