第13話 話 side AB
レギス「魔王の子!話し合おう!」
ベクト「無茶だ!奴にとってお前は仇なんだぞ!
」
リム「話し合い!?何言ってるんですか!倒すことが目的のはずですよね!…ですよね?」
『シュル』
廃倉庫の中央に3人がとどまっている。
レギス「じゃあなぜ今、彼は攻撃してこないんですか?」
『シュル』
ベクト「あ?」
レギス「あくまで仇は俺だけ。2人巻き込まない。その判断ができる奴はまだどこか理性的だ。なら、話し合える可能性はある!」
ベクト「…だとしてもだ。」
『シュル』
リム「な、なんかさっきから、変な音がしますけど。」
瞬間刃物が2本、3人の後方から飛び出す。
レギス「しまった!」
が、その刃物は空中で交差し明後日の方向に飛んでいく。
ベクト「…!まずい。」
ベクトはその場でしゃがみ込む。
リム「え?」
レギス「あっ。」
刃物の柄にはロープが結ばれていた。
瞬間近くに散乱していた瓦礫が吹き飛び、そこから何重にも束ねられたロープが3人に向かってくる。
『ギュ』
飛んで行った刃物が壁に突き刺さり、リムとレギスはロープできつく縛られる。
リム「キャ!」
レギス「ック。」
咄嗟の判断でしゃがんだベクトはロープに縛られなかった。
ベクト「二人とも動くな。今ロープを斬って――」
レギス「ベクトさん!後ろ!」
ベクト「え?」
蒼汰「動くな!」
いつの間にか魔王の子が真後ろにまで来ていた。
ベクト「…ック。」
蒼汰「余計なことをするな。」
のど元に当てられた刃物の冷たい感触が体を震わせる。
レギス「ベクトさん!」
ベクトは握っていた斧から手を放し、両手を上げた。
ベクト「…なめるなよ。」
そして、男の刃物を持っている手を掴み、
蒼汰「え。」
投げ飛ばす。
蒼汰は吹き飛ばされ散乱するモノの上に強く叩きつけられる。
『ガシャーン』
ベクト「強化魔法かけてんだ。そんな刃物ごとき脅しにもならねえよ。」
蒼汰「!」
ベクトは斧を拾い、ロープを斬る。
レギス「ベクトさん!」
リム「さ、流石です!」
体を起こそうと腰を上げる魔王の子にむかい斧を下ろす。
ベクト「おっと、動くな。」
斧の刃が男の首元で止まる。
ベクト「形勢逆転だ。」
リム「よし!」
ベクト「ほら、レギス。今ならできるぞ。あんたのやりたがっていた対話がな。」
レギス「…ありがとうございます。」
しゃがんで強くにらみつける男と目線を合わせる。
レギス「俺は、レギス。勇者の子だ。君は?」
蒼汰「…」
魔王の子は黙って話そうとしない。
レギス「…お母さんのことは申し訳なく思っている。」
蒼汰「!」
男は腰を上げようとする。
ベクト「おっと。」
しかし、ベクトに足で押され尻もちをつかされる。
レギス「本当に、辛い思いをさせてしまったようだね。ごめん。でも、仕方が無かったんだ。」
蒼汰「…。」
男の目はどんどん黒くなる。
レギス「僕たちの世界では魔王の子がいつ侵略してくるか分からなかった。だから、平和のためには仕方のないことだったんだ。理解してほしいとは言わない。でも、あの時の僕には他に選択肢が無かった。」
ベクト「…」
ベクトがレギスを冷たい目で見下す。
レギス「でも、僕たちはきっと分かり合える。僕は学んだんだ。悪くない魔族もいるって!」
魔王の子の目には涙が溜まっていた。
レギス「だから、俺を許してほしい。一緒にこの復讐の連鎖を終わらせよう!」
瞬間、横腹に蹴りが入り吹っ飛ばされる。
レギス「ぐ。」
蹴ったのはベクトだった。
レギス「ベクト!何を!」
ベクト「黙れ!温室育ちが!理想を語るのは勝手だがな、今お前のやっていることは最低だ!これ以上は見てられん!」
蒼汰「…」
ベクト「悪いな。魔王の子。許してくれとは言わないさ。だが、仕事なんでな。」
ベクトは再び男を踏みつけると斧を振りかぶる。
レギス「ベクト!」
ベクト「…そんな目で見るなよ…」
目から涙を流しながら見つめる魔王の子を見て、躊躇が入る。
??「転移。」
瞬間魔王が消える。
ベクト「な!」
ライログ「魔王様…申し訳ございません。」
彼は角の生えた魔族に抱えられていた。
ライログ「蒼汰…遅くなった。加勢するよ。」
蒼汰「兄さん!」
ライログはそっと蒼汰の涙をふき取った。
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