第12話 攻撃 side AB
レギス「べ、ベクトさん…」
ベクト「馬鹿野郎!」
背中から血を流したベクトは急いで物陰から飛びだし、リムの元に駆け寄る。
ベクト「大丈夫か!リムの嬢ちゃん!」
リム「え?え?」
ベクトは斧を持ち姿勢を低くし周囲に意識を向ける。
刃物を使った遠距離攻撃…厄介だ。
斧を握る力が強くなる。
リム「あ、あのベクトさん…背中、回復…」
ベクト「いらん。強化魔法を打ってる、かすり傷だ。それよりリムの嬢ちゃんはゲートに集中してろ。」
いつもの飄々とした顔からは想像できないほどベクトの顔は険しかった。
しかし、2人の元に刃物が飛んでくることはない。
ベクト「…チッ、あくまでも狙いはレギスだけってか…」
視界に物陰からゆっくりと体を出すレギスが映る。
ベクト「馬鹿野郎!隠れてろ!」
瞬間複数の刃物がレギスに向かって1直線に飛んでいく。
レギス「!?」
『ザシュ』
レギス「っグ!!」
レギスの身体を刃物が切りつける。
幾つもの切り傷が体につく。
ベクト「隠れてろ!奴の狙いはお前だ!」
しかし、レギスは自分についた切り傷を見て勝機を見出していた。
レギス「奴の攻撃は、全部直線?」
*
ベクト「ッチ。何とかして奴を倒したいが…飛んでくる刃物が厄介だ。嬢ちゃんを1人にするわけにもいかない。」
リム「ベクトさん、私の魔法で奴の動きを封じれば…」
ベクト「馬鹿、無駄なことに魔力を消費するな。奴を倒せても帰れなくては意味がない。」
魔王の子が隠れた物陰を見つめる。彼が人間にしか見えなかった。それがベクトの心を揺さぶる。
ベクト「クソ。魔王ってやつは、もっと魔族らしい見た目してんじゃねぇのかよ。」
視界の端に血まみれのレギスが物陰から出ようとするのが見える。
ベクト「馬鹿野郎!動くなレギス!」
レギス「大丈夫です!」
レギスが物陰から飛び出す。
瞬間、刃物がレギスに向かって飛んでいく。
しかし、レギスは止まらない。地面を強く蹴る。
直線的な動きで飛んでくる刃物はレギスをかすめて当たらない。
蒼汰「っく!」
そして、2人の元までつくと攻撃が止まる。
ベクト「な、なぜだ?」
レギスが走ってきた道には点々と赤い跡がついている。
レギス「簡単な話ですよ。あの遠距離攻撃は直線。動いていれば当たりません。そして、奴の仇は俺だけ。でも今攻撃すれば2人に当たる。奴はそれを望んでいません。」
ベクト「だが、どうするんだ?」
レギス「対話を試みます。」
ベクト「な、お前まだ!…本気で言ってるのか?」
レギス「攻撃できない今がチャンスなんです。」
ベクト「正気か?」
レギスの目はまだ希望を捨てていなかった。
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