第10話 対話 side B
創り出した空間をボールのように投げる。
空間はゆっくりと動き、
蒼汰「止まれ。」
念じたところで止まる。
その空間に石を投げる。
蒼汰「右に曲がれ。」
石は吸い込まれ、空間で軌道を変え右に大きく飛んでいく。
蒼汰「や、やった!成功だよ!兄さん!」
嬉しそうに笑う弟の顔を見てライログは苦笑いしかできなかった。
ライログ「さ、流石…です。」
蒼汰「でも、まだだよ。見てて!」
ライログ「え?」
蒼汰は再び指先に力を込める。
【ブゥン】
空間が歪む。
ライログ「同時に…2か所も…」
蒼汰「凄いでしょ。頑張れば3個まで作れるようになった。これを使えば、こんなこともできるんだ。」
蒼汰は今作った空間を先ほど作った空間の軌道上に配置し、石を投げる。
1つ目の空間に吸い込まれ右に曲がった石が、今作った空間に入り再び軌道を変え真上に飛んでいく。
蒼汰「どう?」
ライログ「…良く、出来ています。」
修業を始めてまだ2週間ほどしかたっていないというのに、蒼汰の成長は目覚ましかった。
蒼汰「これを使って奴を倒す。兄さん、協力してくれるよね?」
ライログ「…」
蒼汰の目が真っ黒に染まっていた。
ライログ「…蒼汰様、もしも、もしもですよ。王妃様を倒した理由が仕方のないことだったとしたら――」
蒼汰「許さないよ。」
その声は落ち着いていた。だが確かに憎しみが込められていた。
蒼汰「理由なんて知らない。それとも、兄さんはどうでもいいの?母さんの死を何とも思ってないの?」
ライログ「そんなわけありません!!!」
深夜の公園にライログの声が響く。
ライログ「…そんなわけがありません。王妃様の死、もっと言うなら魔王様の死を受け入れられた日など1日もありません。」
その目には涙が浮かんでいた。
ライログ「…私だって、魔王様を倒した勇者を許せない!王妃様を倒した奴らに裁きを与えたい!この手で全員抹殺してやりたい!」
震える手を見つめながら頬に伝う涙は人間と変わらなかった。
ライログ「でも、私の敬愛する魔王様はそれを望んでおられない。蒼汰様…分かって下さい…。すぐに受け入れることは難しいかもしれない。それでも、どうか…」
上擦った声は夜の風に流され消えていく。
蒼汰「…分かった。」
ライログ「蒼汰様…!」
蒼汰「ライログは協力してくれないんだね。なら、俺1人で全部やるよ。」
蒼汰の目はライログを見ていなかった。その黒い目は歪んだ空間に向いていた。
ライログ「蒼汰…!!」
膝から崩れ落ちる。
蒼汰の瞳に映っていたのは、復讐だけだった。
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