第8話 変化 side B
目を瞑れば母の首が飛んだ瞬間がフラッシュバックする。
蒼汰「う、うえぇぇ。」
急いでトイレに駆け込む。
ライログ「蒼汰様…大丈夫ですか?」
あの家では母のことを思い出す。それが辛くて、蒼汰は兄と一緒に近くのホテルまで来ていた。
蒼汰「はぁ…はぁ…兄さん…」
ライログ「…!」
急いで蒼汰のもとに駆けより背中をさする。
ライログ「大丈夫、大丈夫だよ…」
蒼汰の吐き出した吐しゃ物に固形物はもうなかった。
ライログはそれが見ていられなかった。
蒼汰「な、なんで…こんなことになっちゃったんだろう…」
蒼汰の声は上擦っていた。
蒼汰「俺が、俺が何か悪いことしたのかよ…」
便器に涙がぽたぽたと落ちている。
ライログ「蒼汰…ごめんな、兄ちゃんが、兄ちゃんが守ってやれれば…」
ホテルの一室には鼻をすする2人の泣き声が響いていた。
*
蒼汰は疲れたのか眠りについてしまった。
ライログは気が気でなかった。いつまたあの世界の住人が襲ってくるかわからない。
朝まで一睡もせず蒼汰のそばで警戒を絶やさなかった。
どうしてこうなった。魔王様が迎えに来なかったということは、魔王様は負けたはず。
もうあの世界に魔王はいない。
戦争は終わったはずだ。
なのになぜ蒼汰を狙う。
わざわざその子供にまで矛先を向けなくてもいいはずだ。
もう、平和なはずだろう!
やるせない気持ちが心を蝕んでいく。
蒼汰「っう、くぅぅ…ッ母さん…」
苦しそうに、辛そうに寝言を言う蒼汰を見て思わず目頭が熱くなる。
違う、奴らのせいじゃない。
魔王の子を放っておくはずがない。
全ては平和な生活に胡坐をかいていた私のせいだ。
守ることを魔王様に誓ったはずなのに…
守り切れず、結果最もつらい復讐の道を選択させた…
ライログ「う、うぅ、」
ライログの目にたまった涙は流れ落ち、太ももに跡を残す。
それでも周囲の警戒を解かなかった。
*
真っ暗な空間。
母がこちらに手を振っている。
蒼汰「母さん?」
母に向かって足を進める。
蒼汰「母さん!俺、俺さ!大学行くことにしたんだよ!」
蒼汰は大きな声で叫びながら母のもとに走る。
しかし近づけない。
蒼汰「なんで…!母さん!」
母はただ手を振り続けている。
蒼汰「!」
母の横にある空間が渦巻き、穴が開く。
蒼汰「母さん!!」
瞬間剣を持った男が飛び出し、母の首を――
*
蒼汰「っは!」
目を覚ますと時間は朝の9時を回っていた。
ライログ「目を覚ましましたか、蒼汰様。」
自身の頭を優しくなでるライログの姿が目の前に飛び込み思わずその腕に抱き着いた。
蒼汰「う、うぅぅ。っく。うぅぅ。」
袖が濡れる。
ライログの目には大きなクマができていた。
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