第7話 魔法 side A
『グオオオオ!!!』
大きな雄たけびと共に森の奥から現れたのは3mを優に超す牛型の魔獣、ミノタウロス。
レギス「…!?」
ベクト「…ッチ。なんて野郎だ。」
その手には人間の死体が持たれていた。
そして、奴はレギスとベクトを見るとわざとらしくその死体を口に運び、
『ぐちゃ』
食べた。
レギス「…」
剣を力強く握りしめる。
ベクト「準備は良いか。害獣駆除だ。」
ベクトは手を軽く握り自身の心臓部に当てる。
ベクト「肉体強化。」
『ドクンッ』
心臓の鼓動が一段と大きくなる。
ベクト「レギス、必要かい?」
レギス「いいや。大丈夫です。魔力が少ない自分には効果が薄いですから。温存しておいてください。」
地面を強く蹴りミノタウロスに最短距離で詰め寄る。
ミノタウロスの腕がレギスに向かって振り下ろされる。
レギス「遅い」
横に飛び攻撃を避ける。
『ドシン!』
地面が抉られる。
『グオオオ!』
叩きつけた手を横に振り払う。
レギス「!?」
刀身で受け身を取るが、レギスは横方向に吹っ飛んだ。
レギス「ック!」
ミノタウロスは楽しそうに、口からさっき食べた人間の手を出す。
その顔はレギスを心から馬鹿にしているようだった。
ベクト「よっと!」
『グシャ』
レギスに夢中になっている隙に、背後に回り込んだベクトがミノタウロスの足に斧を突き刺す。
『グオオオオ!!』
割れんばかりの唸り声が響く。
ベクト「まだまだぁ!」
斧を持った状態で大きく1回転し、膝部分に斧を叩きこむ。
ミノタウロスの重心が右に傾く。
その隙をレギスは見逃さない。地面を蹴りつけ宙を舞い、剣を振りかざす。
『ザシュ』
ミノタウロスの肩に攻撃がクリーンヒットする。
『グウオオオ!!』
ベクト「まずっ」
痛みで暴れるミノタウロスはベクトを蹴りつけ、数m先まで吹っ飛ぶ。
レギス「ベクトさん!」
着地して直ぐベクトの方を見る。
ベクト「レギス!危ない!!」
ミノタウロスの振り払いがレギスの目の前まで迫っていた。
まずい…でかすぎる…
刀身を盾に防御の体制をとる。
巨大な手の奥に人の影が見えた。
リム「回転!!」
【グルン】
瞬間ミノタウロスの巨体が反対方向を向く。
『グウ?』
レギス「リム!?」
ベクト「ナイスだ!嬢ちゃん!」
リム「ボーっとしないで!チャンスです!」
レギスは体勢を直し、ベクトの付けた足の傷に向けて剣を突き刺す。
『グオオオ!』
巨体が大きく横に崩れる。
ベクトも斧を拾って立ち上がる。
ベクト「こんのやろおお!!」
大きく振り上げた斧が巨体の頭部に突き刺さり、
『ドシン!』
紫色の液体を吹き出していた。
*
レギス「リム、なんでここに?」
リム「後で話します。今は回復に集中させてください。」
ベクト「わるいねぇ。嬢ちゃん。」
リムがレギスとベクトに手をかざす。二人の身体が緑色の光で包まれる。
リム「…回復!」
大きく息を吐くと目をカッと開く。
リム「っぐ!はぁはぁ!」
体から痛みは引いていた。
しかし、リムは息を荒くしながら、全身は汗だくだった。
回復魔法。
大きな魔力を消費する上、食らったダメージと同等の痛みを伴う。
レギス「…ごめん。リム。」
リム「はぁ…はぁ…大丈夫です。ベクトさんが身体強化を掛けてくれていたおかげでそこまで大きな痛みはありません。」
笑って見せる彼女の額には汗がにじんでいた。
ベクト「ありがとうな。嬢ちゃん。」
「う、これは…ベクトさん!来てください!」
ベクト「ん?どうかしたか?」
倒れたミノタウロスを解体する兵士たちの顔は曇っていた。
リム「キャッ!」
リムは口元を両手で覆った。
レギス「…」
ベクト「…こりゃ、相当ひどいな。」
胃袋の中から数えきれないほどの人間の骨が出てきていた。
良いと思ったら、感想、ブックマークお願いします。喜びます。




