第6話 復讐 side A
魔王妃を打ち取った知らせはすぐに広がった。
新たな英雄の誕生に世界は盛り上がりを見せた。
マージ「やったわね、レギス。」
レギス「…」
しかし、レギスの心中は穏やかなものではなかった。
*
剣先が女の首をとらえる。
笑顔の女の首は宙を舞う。
奴らは魔族だ。俺らの敵のはずだ。
だが、一見すればそれはただの家族のようにも見えた。
目を閉じるとその光景が脳裏をかすめる。
レギス「…」
レギスは眠れずに体を起こした。
何でもいい。とにかく歩きたかった。
バウンド「どうした?散歩か?」
部屋を出ると廊下で父と会った。
レギス「…父さん。」
*
バウンド「…なるほどな。倒した王妃が本当に倒すべきだったのかわからない。と。」
レギス「…ごめんなさい。こんなこと言って。」
2人は屋敷の外の庭で星を見ていた。
バウンド「ああ、許せないな。」
レギス「…父さん。」
バウンド「良く聞け、レギス。父さんの家族はな、魔族に殺された。」
レギス「…」
父の目を見ることができなかった。
バウンド「何でも、父さんたちは勇者の血筋らしい。何世代も前の勇者が、当時の魔王を殺したらしくてな。その復讐らしい。」
レギス「知ってるよ。1000年間に及ぶ戦争は勇者と魔王の戦争でもある。そう習ったから。」
バウンド「ああ。でもな、父さんは別に魔王とか勇者とかそんなのはどうでもよかったんだ。ただ、家族を殺した魔族が許せなかった。」
レギス「でも、その感情が父さんを勇者として覚醒させた。」
バウンド「覚醒…いい響きだな。実際は私も復讐にとりつかれただけさ。」
父は手を天にかざす。
バウンド「そして、今そのバトンがレギスに渡った。」
レギス「…」
バウンド「使命だなんだと難しく考える必要はない。いずれ分かる。」
かざした手をゆっくりと降ろし、
バウンド「魔族は許しておけない存在だ。レギス。お前がこの復讐の連鎖を終わらせるんだ。その手でな。」
レギスに向け突き出す。
バウンド「魔王討伐についてはまだ課題が山積みだ。何よりゲートが長く持たない。不意打ちだったからどうにかなったものの、今のままでは倒せたところでレギスを向こうの世界に置き去りにすることになる。その課題が解決するまではお前はベクト隊に戻れ。」
レギス「…はい。」
父はあくびをした。
バウンド「話し過ぎたな、今日はもう遅い。私は眠る。あまり夜更かしするなよ。」
器用に車いすを操り屋敷の中に帰っていく父の背中はおおきく見えた。
空は星で輝いていた。でも、魔界の赤い空の方が星は綺麗に見えた。
*
剣を担いで前線に合流する。
レギス「…」
あれから1週間ほど時間が経った。
ベクト「おいおい、どうしたんだ。新たな英雄がそんな暗い顔してちゃあ士気が下がっちまうぞ。」
レギス「…ベクトさん。」
大きな斧を振り回し魔物を次々倒すベクトの目には心配があった。
レギス「…実は、倒したはずの王妃がもしかしたら――」
『グオオオオ!!!』
ベクト「おっと、話は後だ。レギス。準備は良いか。」
大きな雄たけびと共に森の奥から現れたのは3mを優に超す牛型の魔獣、ミノタウロスだった。
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