第6話 復讐 side B
ライログ「王妃様はファミーラから返見優愛へと名前を変え、この世界で母として生きることを選ばれました。」
蒼汰は河川敷で膝を抱え込むようにして小さく座り、兄の話を聞いていた。
ライログ「私はライログから返見終生と名前を変え、魔王様の残した一人息子である蒼汰様の兄として生きていくことを決めました。」
兄の声はかすれていた。
ライログ「…これが全てです。信じていただけましたか?」
蒼汰「…」
蒼汰は黙っていた。
ライログ「…」
沈黙が二人を包み込む。
蒼汰はゆっくりと立ち上がった。
ライログ「蒼汰様?」
蒼汰「…帰る。」
ライログ「え?帰るって?」
家に向かって歩きはじめる。
ライログ「そ、蒼汰様!危険です。まだ奴らが!」
蒼汰「うるさい!」
蒼汰の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。
蒼汰「知らないよ…そんなの。帰らないと母さんが1人ボッチじゃないか…」
ライログ「…蒼汰様。」
ライログは肩を押さえながら立ちあがる。
ライログ「1人では危険です。お供します。」
街灯が照らす道を2人は歩く。
自宅の窓からはリビングの光が漏れていた。
*
『ガチャ』
警戒しながらライログが扉を開ける。
部屋の中は驚くほど静かだった。
蒼汰「…」
蒼汰は部屋の中に上がり込む。
ライログ「蒼汰様!危険です!」
蒼汰「…」
リビングには紫色の血だまりができている。
しかし、母の死体は無い。
ライログ「…まさか、奴ら死体を持ち帰ったのか?」
蒼汰は血だまりのそばに近づくと、
蒼汰「う、うう、うああああ!!!」
泣き崩れた。
手が血で染まる。その様子を痛ましく見守ることしかライログにはできなかった。
蒼汰「う、っく。ううぅ。」
蒼汰の声は震えていた。
蒼汰「どうして…どうしてだよ…」
その声は熱く、悲しみに溢れていた。
ライログ「…私のせいです。この生活に胡坐をかいて…まさかこんなことになるなんて…」
ライログは頭を下げる。弟の苦しむ姿を見るのが怖かった。
蒼汰「…俺は…俺は魔王の子なんだよね…」
嗚咽に混じり震える声は何かを決意したかのようだった。
ライログ「蒼汰様…?」
蒼汰「俺には、あいつらを倒す力があるんだよね…!」
ずっと心の中にあった黒い感情が体を乗っ取る。
そうか、この感情は、
蒼汰「絶対に許さない。絶対に!」
俺の中に最初からあったんだ。
自身に向いていた押し潰されそうな感覚が外に向く。
その圧にライログは顔を上げることが出来なかった。
蒼汰「兄さん。俺に、奴らを倒す方法を教えて。母さんの仇を討つんだ。」
ライログ「蒼汰様…。」
口から出た声は弱弱しかった。
蒼汰は血だまりをそっと撫でる。
蒼汰「母さん。待っててね。」
紫色の血がゆっくりと揺らいだ。
まるで空間そのものが息をしたように。
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