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境界線の復讐者~勇者の子に復讐を~  作者: 春間 来善


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第5話 過去 side AB

「魔王様!!勇者が魔王城内に侵入!!まもなくここにもたどり着きます!!」


魔王「そうか…報告ご苦労。全員に知らせろ。わざわざ戦う必要はない。私が一人で何とかするとな。」


外は雷が響いている。


薄暗い玉座には大きな体に鋭い爪を持った魔王がいた。


「っは。」


家臣は玉座を飛び出した。その目は戦いを選択していた。


魔王「ライログ!」


ライログ「っは!魔王様!」


転移魔法で魔王の元に飛んできたライログは膝をつけ頭を下げる。


魔王「…例の準備は完璧だな。」


ライログ「ええ。後は王妃様たちの準備ができればいつでも出発可能です。」


魔王「そうか…ファミーラとソータを連れて来い。」


ライログ「っは!」


ライログは目の前に手をかざし空間を歪める。空いた穴の先には魔王妃と生まれたばかりの赤ん坊の姿があった。


ファミーラ「あなた?どうしたの?」


魔王「…勇者が目前に迫っている。」


ファミーラ「そ、そんな!」


ソータ「きゃっきゃ。」


ファミーラの手の中で大事そうに抱えられた赤ん坊は魔王を見て楽しそうに笑った。


魔王「っふ。いい笑顔だ。こんな状況で笑っていられる胆力。流石は私の子だ。」


魔王は優しく赤ん坊を撫でると、頬にキスをした。


魔王「惜しむらくはこの子の成長を見届けられないことか。だが、魔王の宿命…受け入れるしかあるまい。」


魔王は寂しそうな眼をしていた。


魔王「時間が無い、ライログ。作戦を決行するぞ。」


ライログ「承知しました。」


魔王は空中に爪を突き立てると、何もない空間を強く握った。


爪の先に魔力を込め周囲が渦を巻くように歪んでいる。


魔王「…フン!」


『バリバリバリ』


大きな音を立て、空間が裂ける。その先に広がっていたのはマンションの1室だった。


ライログ「さ、王妃様、足元に気を付けて。」


ファミーラ「あ、あなた!」


魔王「大丈夫だ。すぐに迎えに行く。待っていろ。」


裂けめの先にいる王妃の頬に手を当て、唇を合わせる。


ファミーラ「…あなた。」


その目には涙が浮かんでいた。


ライログ「魔王様。本当によろしいのですか?今ならまだ一緒に――」


魔王「ッフ。冗談はよせ。私が逃げたら残された魔族はどうなる。それにこれから来る勇者は命がけなのだ。私が逃げたら魔族の顔が立たん。」


ライログ「魔王様…」


ソータ「だ?」


赤ん坊が魔王を見て不思議そうな顔をしている。


魔王「だがな、ライログ。その子と妻は無関係だ。二人を守ってくれ。…頼んだぞ。復讐の連鎖から断ち切ってくれ。」


ライログ「…!わかりました。魔王様の最後の命令!しかと胸に刻ませていただきました!」


魔王「泣くな。せっかくの男前が台無しだぞ。」


『ドタン!』


扉の外から何かが倒れる音が聞こえる。


魔王「時間だ。元気でな。」


ライログ「っは!」


ファミーラ「う、うう。あなた…」


ソータ「う?うう…おぎゃあ」


魔王「ごめんな。私の子に産んでしまって。」


魔王は爪に魔力を込めると裂けた空間を再び掴む。


ライログ「!!魔王様!!」


魔王「…元気でな。」


そして、閉じた。


先ほどまで裂けていた空間に手を伸ばす。


そこには何も感じない。あるのはただの無だった。


それがなぜだか凄く悲しかった。


『ガチャ』


バウンド「魔王!!今日ここで、1000年続いたこの戦争に決着をつける!!」


背後の扉から声が聞こえる。


魔王「…よく来たな。」


あふれた涙で勇者たちの姿が滲む。


魔王「勇者よ!!!」


振り上げた手には先ほどの魔法で使った魔力がまだ残っていた。

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