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第9話 発動!「Sonic!」

カタメとWatts towersが遂に世の中と戦う序章となります。


 熊をたらふく平らげた次の日からカタメ達Watts Towersの活動が始まった。そんな幸せな日々が過ぎ、カタメがアメリカに来てからもう半年が過ぎていた。日に日に完成していくカタメの楽曲はもう200を超えていた。そんな中、カタメやWatts Towers全員を巻き込む重大な事件が起ころうとしていた。


 1995年6月某日土曜日午後4時頃。カタメと鉄治がアメリカに来てから半年が経っていた。カタメとWatts Towersの一同は、土曜のドジャースタジアムの前でたこ焼き屋の商売をしていた。カタメはギターを弾き語り、店の宣伝をしていた。いつもと変わらない週末。すっかりアメリカに馴染んだカタメ。ドジャースタジアムからの帰り道を楽しそうに話しながら歩いていた。すると、リトル・トーキョーの近くの空き倉庫群の中、カタメと数名が何かを感じた。


「おい、今なにか聞こえなかったか?」


「悲鳴じゃねーか?」


一度全員口を閉じ、耳を澄ませる。


「キャー!」


「助けて!」


え?日本語?とカタメと鉄治が気付く。


「Help!Help!me!」


女の子の悲鳴が、しかも何人かの悲鳴が聞こえる。


大きな倉庫が3棟並んでいた。1棟ずつ聞き耳を立てる。すると、一番奥の倉庫から人が泣いている声が聞こえた。更に、罵声を浴びせる男達の声も聞こえる。これはまずいとその倉庫の扉を開けようとするも開かない。

 

ファルコン、ゴッグ、ジャーマン、ニコが協力して鍵を開ける。その間、周囲と屋根を取り囲み、どこからか侵入して助け出そうとした。窓のようなものはない。ニコの解錠が終わり扉が開いた瞬間、カタメ達は数名の男達から一斉に発砲された。だが、そんなものはもう簡単に交わせる。


(こちらは53人、あっちは20人くらいか)


向こうは拳銃や凶器を所持していた。その後ろで女の子達が震えて泣いている。もうどう見てもあっちが悪だ。カタメが啖呵を切ろうとすると、数名の男達が話しかけてきた。


「なんだ。片眼のジャップか?またやられにきたのか?」


よく見ればエデンの連中だ。話しかけてきたヤローはカタメの腹を撃った奴だった。カタメは仕切り直して言い放つ。


「そーいうテメーらはエデンのアホだな。ここで何してやがる?」


と、カタメが言うと、奴らは笑い出す。


「HAHAHAHAHAHAHAHA!今度は何投げてやろー・・・


とその時、ファルコン、キッド、アルとブルが強姦に襲いかかる。ブルの一発で沈む強姦。残りの奴らもこの勢いで殴りかかった。怯える女の子達を他所に暴れるWatts Towersとエデンに来ていた強姦達。直ぐに奴らの仲間100人あまりが加勢に来た。だが、百戦錬磨のWatts Towersには武器を持った倍以上の数の強姦達を次々と殴り蹴り倒していった。すると、1人の強姦が1人の女の子を人質に取り、彼女のこめかみにヘラヘラ笑いながら銃口を向けた。


「おい!オメ-ら動くな!こいつ撃つぞ!」


固まるWatts Towers。悲鳴を上げる他の女の子達。興味本位で倉庫を囲むギャラリー。すると、カタメは強姦が使用していた足下に落ちてた鉄パイプを拾い、咄嗟に大きく上へ振り上げた。


《キーーーーーーーーーーーーン!斬!!!ズバン!ゴドン!!!ガラガラガラガラ!!!!!ガタガタガタガタドドーン!!!!》


まるでジェット機の離陸音のようなドでかい音がリトルトーキョー一帯に響き渡り、倉庫3棟が斜めに真っ二つにされ、崩れ落ちる。強姦達が驚く。


「ゲッ!あいつ建物全部真っ二つにしやがった!」


崩れ落ちる倉庫。その強姦の拳銃を持っていた右腕が倉庫と一緒に真っ二つになる。逃げる他の強姦。呆気に取られた他の女の子達を救助するWatts Towers。絶叫し、小便を漏らす片腕をもがれた強姦は、ちぎれた腕を持って泣きながら逃げていった。そして咄嗟に崩れた倉庫から1人の女の子を庇い、瓦礫の下敷きになるカタメ。


「おい、大丈夫か?カタメ!返事しろ!」


瓦礫の下敷きになった2人をWatts Towersみんなで救助する。


「くっ!いってー!おい!ねーちゃん!大丈夫か?あ、日本語じゃねーか。こーいう時、英語で何て言うんだっけ?」


思わず日本語で話しかけてしまったカタメ。すると、


「だ、大丈夫・・です・・」


と日本語で返し、女の子は気絶してしまった。瓦礫の中で顔も見えずにいたが、幸い背負っていた2つのギターケースが支えとなり、カタメと女の子に怪我はなかった。


 20分後、カタメと女の子はWatts Towersみんながどけた瓦礫の下から出てきたが、そこには警官隊がぐるりと囲んでいた。総勢100人といったところだ。Watts Towersは全員手を上げながら警官隊に主張する。


「俺達は女の子助けただけだ!何で本物の犯人の逃走を許してんだ?」


カタメと女の子が瓦礫の下敷きになった直後、既に警官隊は到着しており、しかも、犯人が逃げていくのを黙って見ていたと言うのだ。


(こいつら、何処まで腐ってやがるんだ?!)


ここで救急車が来た。カタメは警官隊の命令をシカトし、無言で気絶した女の子を抱きかかえ担架に乗せる。他の女の子達を救急車に同乗させると、数名の警官隊の警棒を奪い、思い切り殴打し言い放った。


「おい!オメ-らが俺ら倒せば公務執行妨害だけどよ、俺らがオメーら倒せば職務怠慢って事になるよな?!」


カタメは許せなかった。女の子を救助した自分の仲間が犯人扱いされていること。犯人を取り逃がした警察。乱暴なことをされて傷ついている他の女の子達の気持ち、その周りで何もせず見ているだけのギャラリー。全てが許せなかった。


「日本にいたときと変わらねーじゃねーか!」


カタメの怒号にWatts Towers全員が呼応し、警官隊とのバトルが始まった。


【第2次ロス暴動】の幕開けである。


 Watts Towersの面々の強さは本物だった。拳銃や警棒を持っている警官隊達を次々と倒していく。やがて応援隊が来て、実に500人以上の警官隊と戦い続けた。


 その時、カタメの身体に異変が生じる。何かが体中に宿っているかのようだった。鉄パイプを振れば地面や建物を引き裂いていき、火傷を負った左手からは炎のような熱を発し、警官の顔面や身体を焼いてしまう。そして逆の右手からはスタンガンのように発電するような強烈な電撃が警官達に浴びせられていった。そしてカタメが鉄パイプで右手を上空に伸ばすと、避雷針の原理で鉄パイプに落雷し、先端の電気を周囲に撒き散らした。カタメの髪はアメリカに来てから切っていないので長髪になっていたが、そのカタメの長髪が逆立ち、怒髪天を突く。


 しばらくすると軍隊も到着したが、今のカタメにはどんな武器をも全く効かず、逆に蹴散らされた。戦争を戦い抜いた軍人達が、片眼の少年1人にコケにされていた。ギャラリーや倒れた警察、軍隊達は口々にカタメをこう呼んだ。


「Sonic/ソニックだ・・・・・」


もう誰もカタメを止められない中、1人の男がカタメに話しかける。


「おい!片眼の坊や!俺とサシで勝負しようや!」


彼の名はインターポール捜査官 ニール・マディソン。これからカタメとは長い付き合いになる男だ。ニールは身につけている武器を全部放り投げ、カタメにタイマンを挑んだ。カタメはWatts Towers全員の了承を得ると、ニールに言い放った。


「上等だよ!どっちが正義かはっきりさせよーじゃねーか!」


2人は互いに殴り合った。もう夜になっていた。カタメは人を素手で殴るのは初めてだったが、どちらも意地があり、負けるわけにはいかなかった。いつもやられっぱなしで弱かった自分の為にも、存在を否定された仲間の為にも、傷つけられた女の子達の為にも。両軍戦う手を止め、2人の男同士が殴り合ってるのをじっと見ていた。その場にいた全員が手や足を休め、立ったまま固まって見ている。壮絶な殴り合いに1歩も引かないカタメとニール。拳は血まみれになり、顔面は膨れ上がる。


 次第に夜が過ぎ、朝になっていった。そんな時、2人の馬鹿な男がこの勝負に横槍を入れる。


《バン!ババン!》


その音は銃声だった。撃ったのはWatts Towersに倒された警察官、そして夕方強姦をしていた犯人の1人だった。だが銃弾は2発、ニールの背中に撃ち込まれた。ニールはカタメを庇ったのだ。ニールはその警察官の方へよろよろ歩き、彼の持っていた警棒で2人を殴打する。


「真剣勝負の場でくだらねー事してんじゃねー!」


とニールは激昂した。ニールがカタメの方へ近寄ってくる。敵だと思って殴り合っていた人物に守られ、カタメはどうすればいいかわからず立ち尽くしていた。するとニールはカタメの身体に崩れ落ちながら話す。


「馬鹿な味方持った俺の負けだ・・・すまなかったな、ソニック・・・・」


カタメはニールを抱えながら大きな声で泣き叫ぶ。


「何言ってんだよ!敵庇う馬鹿はオメ-じゃねーか!死ぬんじゃねー!」


血まみれになったカタメはニールを駆けつけた救急車に乗せる。そしてまた周囲を睨みつけ、激昂した。


「テメーら!チャカや武器持ってっからって正義語るな!これがその結果だ!テメーらの仲間まで傷つけるこたねーだろ!」


そして、鋭い眼光で周囲を睨み付け、ドスの効いた声でいい放つ。


「オメ-ら全員、ぜってー許さねー!」


カタメの一言で固まった他の連中を他所にカタメと鉄治、Watts Towersはリトルトーキョーを去って行った。そこには、倒れる警官隊と軍隊、固まるギャラリー、カタメが放った電流と熱で焦げ付いた臭いを発するアスファルト。そして、カタメが真っ二つにした倉庫3棟が静かに存在していた。


 ワッツ・タワーへ帰る道中、カタメは鉄治とWatts Towersの皆に照れくさそうに話す。もうカタメは普通の少年の顔に戻っていた。


「・・・実はよ、俺、今日生まれて初めてタイマンやったんだよな。今まで何か、大勢に殴りかかられてたり、暴言や罵声浴びせられたりして、それに対抗すんのに必死で武器使って人殺したりしてよ。でも、今日タイマンやった時、何かいつもと違う感じがしてよ。負けたくねーっていうのもあって、何かを守りてーってのもあって、大事なもん背負ってるような気がして・・・でも、これまで何か、今まで1人でやってきたつもりだけどよ、お前らと一緒なら何でも出来そーに思えてきたよ。だからお前ら、これからも俺と仲間でいてくれるか?」


すると、ビッグ・ジョーが笑って話す。


「お前といるといろいろ楽しめるからよ。付き合ってやるよ。これからもよろしくな、ソニック。」


(え?ソニック?)


カタメは知らなかった。戦っている間、周りからそう呼ばれていたことを。鉄治は全く、と言いたげな表情で話す。


「それにしてもお前の「何か」って想像以上だな。身体大丈夫か?」


カタメは全く気付いていない。自分に秘められた未知なる力を。ただただ普通に歩いて普通に皆で帰っていった。帰る道中、皆でアカペラの歌を適当に大声で一斉に歌い出し、笑いながら歩いて帰っていった。このならず者の凱歌は、ロス・アンゼルスの街にずっと響いていた。


 この日からカタメは新たな名前を手に入れた。


【Sonic(衝撃)】


突風で空を斬り、左手で炎を燃やし、右手で電流や稲妻を呼び起こすこの不思議な力を手に入れたソニック。これからWatts Towersの面々をはじめ、ロス・アンゼルス中に、アメリカ全土に、そして世界にこの「Sonic」という名で世に知らしめていくことになる。これからカタメは生涯「ソニック」と呼ばれ親しまれていくことになった。


ソニックというキャラは存在しますが、全くの別物です。

身体で衝撃的な事(ソニックブームを放つ)を成すという事で名付けられました。

彼は「超能力者」の側面もありますが、あくまで現実路線で書いています。

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