第10話 2人の先人達とこの街の正体
この話から「カタメ」から「ソニック」に通名が変わっています。
今回は超能力を使わず世の中と戦う話の前編となります。
1995年6月某日、片眼の日本人少年は、アメリカ・ロス・アンゼルスで「Sonic」という不思議な力で戦い、奇跡を起こした。彼はこの日から「カタメ」ではなく「ソニック」として生きていくことになる。少なくともこのワッツ・タワー界隈では、もう「ソニック」が定着していた。
あれからもう1週間くらいになるだろうか?カタメ改めソニックに奇妙な連中がこのワッツ・タワーに訪れてくる。「KKK」とかいうショッカーみてーな白頭巾を被った連中、「ブラック・パンサー」とかいうベレー帽に眼が充血してる連中、それとソニックが一番嫌いな「カメラを持った連中」。ソニックはうんざりしていた。彼らは
「白人が~」
「黒人の自由が~」
「お前らの姿を撮りたいから~」
等々下らない事を言い放つ。全て人権侵害の数々の発言に
「何なんだよオメーら!勝手に入ってくんじゃねー!」
ソニックもWatts Towersの連中もうんざりしている。
「あいつら何なんだ?」
「ここはワッツ・タワーだぞ?」
「修羅の街だぞ?」
「そんなにミンチにされてーのか?」
といつも狩っている鰐肉を皆で頬張りながら愚痴っていた。
そんなある日、警察がソニックとWatts Towers一人一人に逮捕状を突きつけにやってきた。公務執行妨害、器物破損、集団暴行、凶器準備集合罪等色々と・・・・更に警察官の1人が、あちこちで燃えているソニックやWatts Towersが起こしたドラム缶の炎を
「火事になるだろ。」
と消そうとした。その灯りがなければ、彼らが生きていけないことも知らずに。数名が
「俺達の炎だぞ!」
と泣き叫び暴れるソニックとWatts Towers。
「お前ら放火までやってんのか?!」
と手錠をかけられそうになり、ソニック達Watts Towersは抵抗した。ロケット、JJ、キッド、ニコ、ブルは警官の拳銃を取り上げ、雑巾を絞るように捻り曲げた。ゴッグやアパッチ、ロッキー、ジャッキーは乗っていたパトカー数台をバラバラにし、クズ屋に売って金に換えようとしていた。パトカーの中の物はドラム缶の燃料にするゴミに変えた。ソニックが警察に言い放つ。
「悪いのはオメ-らだろ!犯人取り逃がすわ、女の子泣かすわ、挙げ句の果てに味方のポリまで銃で弾いたじゃねーか?俺達これでも今は働きだして税金ちゃんと払ってんだ!きちんとした公務出来ねーなら金返せよ?日本のポリはここより弱いけどしっかりしてたぞ?」
バズが
「頼むからよ、せっかく起こした俺達の炎を消さねーでくれよな!この灯りがないと俺達は生きて行けねーんだよ!」
と言い放つ。警察のこの態度にソニックは
「ここは、この国は助け合っちゃいけねーのかよ?この街でせっかく皆で1つになれたってーのによ!」
と怒鳴りつけると警察はそそくさと帰って行った。
しばらくして弁護士がやってくる。ソニックは鉄治に
「兄貴が呼んだん?」
「いや、知らねー。」
と不思議に思う。誰がこいつを呼んだのか知らねー。皆も弁護士の知り合いはいねーと言っていた。
彼の名前はルドルフ・バウアー。国際弁護士を名乗るこの男に、こないだの暴動の経緯を説明した。どうやら3年前のこの街での暴動の時も間に入って絡んでいたらしい。彼はソニック達を見ても顔をピクリともしない。真面目で度胸があり、きちんとソニック達の話に耳を傾けるその誠意から、彼を皆が「ルディ」と呼んでいろいろ話した。どーやら今のロス市警は一般民衆に信用されていないという。
「肌の色や人種で罪をなすりつけ、1人の丸腰の一般人を肌色が白くないという理由で大勢でリンチする、はっきりいって腐った連中だ。君達の方が健全だと思う。何故なら君達は弱い者苛めはしないだろう?奴らは拳銃を持ったら正義だと勘違いしている。警察手帳を見せれば何でもまかり通ると思っている。そんな連中が警察官になったから、人々は君達みたいな自警団を作り、やがてギャングになっていくんだ。」
Watts Towersはギャングではない。数人がキレそうになったがソニックが制止した。
「警察手帳見せればって・・・こっちの警察は水戸黄門か?」
ソニックは一瞬笑ってしまった。すると最年少のブルが
「よーするにおっさん、俺らを守ってくれるって事か?」
とルディに尋ね、彼は大きく頷く。ルディは
「その為に君達の事件までの経緯を出来るだけ細かく教えて欲しい。」
と話す。ビッグ・ジョーやイミダス、アレックスやエディ、ドクター、ランボー、ボスの意見を聞き、ブライとジャッキーが話をまとめていく。次第に全貌が明らかになっていく。
「俺達は土曜午後4時頃までドジャースタジアムの前で商売をしていた。」
「その後、時間は不明だが、リトルトーキョーの倉庫街で女性数名の悲鳴と男達の怒号を耳にした。悲鳴が聞こえた倉庫を見つけようとした。」
「一番南の倉庫から悲鳴が聞こえたのを確認し、何人かで鍵を開けた。」
「扉を開けた途端に中の男達に拳銃で発砲された。奴らを止めるのと、中にいた女性達を助けるためにその男達に暴行を加えた。」
「その時、ソニックが落ちていた鉄パイプを拾い、思い切り振ったら大きな斬撃が起きて倉庫が崩れ落ちた。」
「崩れ落ちて瓦礫の下敷きになったソニックと1人の女性を助けるために瓦礫をどかしていたら、犯人が全員逃げ、すれ違いざまに警官隊に囲まれた。」
「ソニックを救助した後両手を挙げたら警官隊が拳銃を発砲し、乱闘になった。」
「警察や軍隊の加勢にも暴力を加えた。」
「最後にやってきたインターポールとソニックが素手でタイマンしているのを、別の1人の警官と、戻ってきた1人の犯人がインターポールの背中を拳銃で撃ってインターポールを負傷させ、解散した。女性とインターポールは俺達がそれぞれ救急車に乗せた。」
ルディはソニック達Watts Towers達の話を真剣に聞いてくれた。最後にルディはWatts Towers達に確認する。
「先に仕掛けてきた、撃ったのは犯人と警察で間違いないんだな?」
全員が大きく頷いた。するとルディが
「それ、君達の正当防衛でやってみるよ。」
と言って、また来ると言い残して帰ろうとしたが、最後にソニックはルディに尋ねた。
「誰があんたをここに呼んだんだよ?」
ルディは答えた。
「君と殴り合ったニールと、君達が助けた女の子のお父さんだよ。」
そう言って帰って行った。
後で聞いた話だが、ニールやルディは今から30年前にワッツ・タワーの下に住んでいたと聞かされた。33年前のここ、ワッツ・タワーで起きた「ワッツ暴動」に参加していたらしい。2人はその後ワッツ・タワーから離れ、それぞれ勉強しながらインターポールと国際弁護士に上り詰めたという。だからこそソニック達WattsTowersに肩入れしているのだった。
【ワッツ暴動】
1965年.かつて公民権運動と人種差別への反発が激しさを増した時代。黒人が集まり住んだこのワッツ地区で、白人警官が蛇行運転をし逮捕した黒人男性とその家族に対し、乱暴に扱われた事を切っ掛けに発生した暴動
6日間で死者34人、負傷者1032人
暴動、集団略奪や放火による逮捕者約4000人
そして今も尚、ワッツ・タワーのスラムに住む者達は失業率が高く、高等教育を受けられない者が大勢おり、その為にWatts Towersや彼らは毎日日が暮れると、喧嘩に明け暮れていたのである。
明くる日、再びルディはワッツ・タワーに訪れた。今度はまだ傷の癒えない車椅子状態のニールと検事2名を連れてきた。ニールの傷が心配だったソニックは
「そんな身体で大丈夫なんかよ?」
と尋ねるがニールは
「気にすんな。こういうのは慣れてるんだよ。まあ、上裸はやり過ぎだったかな。」
と笑いながら話し、特に気にしていない様子。
どーやら裁判で対決する事が決まった。再び上記の話を検事にする。ニールは途中からだけど間違いないと答える。そして裁判は1週間後、全員で来るよう言われた。
ソニック達は内心今でも怒っている。
「俺達は女の子を守るために暴れただけだ。なのに、本来人々を守る奴らに悪者扱いされている。いったいこの世の中はどーなってんだ?」
「この理不尽で滅茶苦茶な戦いはいつまで続くんだ?」
「どーして俺達はただ生きてるだけなのに、こんなゴタゴタに巻き込まれなきゃいけねーんだ?」
と口々に疑問に思っている。ソニックは昔、大量に殺人を犯し、街ごと燃やして死刑にならなかった。どんどん疑問は深まるばかりであった。
ニールとルディはWatts towersではありませんが、今後も登場します。




