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第78話 サーキットのど真ん中で叫ぶ覆面レスラー

世界でも小さな国モナコでソニックが別の人物を有名にする話です

 ベルギーでのライブを終えたソニック達WattsTowersは、フランス入りし、世界で2番目に小さな国、モナコへ入ると、場所取りに困っていた。


「ここって全部民家だよな?このトレーラー全部何処に駐めりゃいいんだ?」


と悩んでいると、数名の男達に


「ここに全部駐めていいよ」


と案内されたのは、ポルティエという港であった。ソニック達WattsTowersがライブを行う場所はこのポルティエの直ぐ近くにあるグラン・カジノという場所。この場所から民家やモナコ・グランプリで走る道路に人を入れ、ライブを行う予定だ。このモナコでのライブは先のルクセンブルグのブールシャイト城同様この1カ所だけである。ソニックはパッと見て


「なんかこの雰囲気、ラスベガスみてーだな?砂漠が海に代わっただけじゃん。」


と思いながら準備を始める。だが、このモナコでソニック個人に対して1つ懸念があった。それは


「街中の至る所に監視カメラが設置されている事。」


である。この国は国土が小さいが皆富裕層であり、防犯対策として設置されているのだが、ソニックはそれが気に入らなかった。国に掛け合っても


「防犯の為ですから。」


とカメラを止める事を拒否された。そこでソニックはあることを決断する。それは


「素顔を見られたくないから覆面を被ってライブを行う。」


という事。ソニックの寝台車には、誰が持ってきたかわからないルチャ・ドールの覆面があり、それを被って演奏しようという事だ。このモナコはソニックがライブをやりやすい地形で今更中止出来ない。チケットも完売していた。だがどうしても


「カメラを向けられる事に殺意を覚える。」


という少年時代の一面は全く治っていなかった。家族写真ですらソニックは拒み、いつもカメラで撮影する側である。それは菜月や桜、子供達と一緒でもだ。ソニックは未だに少年時代のトラウマから解放されずにいたのである。もちろんこのモナコに住む人々は、ソニックにカメラを向けないだろう。だが、防犯カメラとなっては国の治安にも関することでソニックも止めろとは言えなかった。そこで、この名も知らないルチャ・ドールの覆面を被りステージに上がろうと決断したのだ。


 ところで、このポルティエに案内してくれた男は、オリビエという貿易商とその社員達だった。オリビエは


「この国は警察官も多いから大丈夫だよ。セキュリティに問題はない。だが、いつも監視されてるからプライバシーもへったくれもないよ。もう俺達国民の生活や行動パターンが全て誰かに読み取られてるような気がするだけさ。」


という話を聞き


「・・・何かそれって日本のキヨスクとコンビニみてーだな。客見れば何買うかわかるみてーな奴。狭くて裕福ってこーいう事なんだろうな。」


と少し不気味に思っていたが、オリビエは続けて


「それよりここはモナコ・グランプリの名所だよ。セナやシューマッハがクラッシュした場所さ。」


と話すがソニックは


(おいおい・・・縁起でもねーだろ?)


と思いながらオリビエは話を進め


「あんたがステージ建てるグラン・カジノはカジノ・スクエアって言って、モナコ・グランプリでマシンがよくジャンプする所さ。」


と話すと


「・・・この国の住民っていつもキャノンボールみてーなモンに付き合わされてんのか?小さな国だって思ってたけどとんでもねーな。マシンが家に突っ込んだら洒落にならねーだろ?GT達でもやらねーってーのに。」


とこの小さな国の日常を想像する。


 その頃、ゴッグ達ステージを組み立てている仲間達が監視カメラに気付く。ソニックに確認を取ると


「俺、今日覆面被ってステージに上がるよ。それしかねーだろ?」


と既に対策を立てている様子だったが、ロッキーが試しに持っていたバリア・プレートのスイッチをオンにすると防犯カメラが壊れた。その事をソニックに伝えるが


「止めとけ。この国の治安に関わる。俺が覆面被ればそれでいいからよ。」


と諦めている様子。ゴッグ達は


「長年嫌がっていたソニックがそう言うなら・・・」


とバリア・プレートを閉まった。


 そして夜が来て、このグラン・カジノを中心とした野外ライブが始まろうとしていた。オーディエンスは隣国のフランスからも来て約4万人は集まったが、ソニックは


「え?ここにいるお前ら全員がここの国民なの?マジかよ?」


とびっくりする。モナコの人口は3万9千人。隣国のフランスから更に1000人くらいの観客が訪れていた。ソニックはLAで大体毎日2万人は集めているので、人数は慣れている環境だったが、ここにいる皆が全員モナコ国民と知って


「たったこれだけの人数で国が作れるのかよ?これなら俺達のライブに来る連中がそれぞれ国持てるんじゃねーか?」


と考えてしまった。

 

 名もなき覆面レスラーのマスクを被ったソニックが入場すると


「誰だよ?オメー!偽者か?」


「本物を出せ!ここではプロレスはやらない!」


「そんなに素顔を晒したくないのか?ちゃんと顔を見せろ!」


と野次が飛ぶと、ソニックは熊襲太鼓で渾身の一撃を放つ。


《ボオッ!ビカッ!ドーーン!》


という「Volt」の電撃と共に


《バリバリバリ!ドン!ブシュー・・・・》


という音がモナコ全体に響き渡る。ソニックは熊襲太鼓で放った「Volt」で、モナコ中の防犯カメラを全て破壊してしまったのだ。そしてマイクを握り


「おい、俺に照明当てていいぞ。」


とゴッグ達に告げると、照明のシルエットがソニックのとある昔の姿を映し出す。それは、「カタメ」を名乗り、パサディナの山で熊を狩ったときの表情そのものであった。隻眼に大きな傷跡を残したソニックの顔を見たモナコ国民達は一周にして、当時パサディナで熊を狩り、初めて「Volt」を目にしたハンター達同様凍り付いてしまった。ソニックは再びマイクを握り


「・・・気が済んだかテメーら!」


と言い放ち、直後にゴッグ達は客席に照明を照らし、真っ暗な夜空に佇むソニックから光を反らした。周囲でWattsTowersが


「・・・世の中見ちゃいけねーモンもあんだよ!坊ちゃん共が!」


「今本物だって確認したよな?」


「耳かっぽじってよーく聴け。これが世界のミュージック・ソルジャー、ソニックの力だ!」


と周囲を煽るWattsTowersに視線を向けた背後からソニックは熊襲太鼓で強烈な「Jet」を曲に乗せて放ちまくる。


「うわっ!何だこれ?」


「後ろからF1が突き抜けてくようだ!」


「この男はアメリカでいつもこんな凄い音を鳴らしていたのか?」


「コンコルドの離陸音みてーだ!」


ソニックは熊襲太鼓とドラムを叩きながら


「だから俺はソニックと名付けられたんだ!これは奇跡じゃねー!現実だ!じっくり味わえよボンボン共が!」


と言い放ち、モンテカルロ市街地コースに特大の「Drift」を放ちまくる。その様を見ていたオーディエンス達が


「巨大なタイヤがビュンビュンとモンテカルロの街を音楽に乗って物凄いスピードで走り回ってる!」


「モナコ・グランプリよりスゲー!」


「まるで音のルーレットの中で俺達も回ってるみたいだ!」


「お前化け物か?」


と話しているとソニックが


「ああ!祖国の奴らに化けモンみてーなツラにされたただのヒトだよ!テメーらはどーなんだ?俺は化けモンに見えるかよ?火炎でも食らってみるか?」


と1人1人に「Burst」を放ち身体中から燃え上がらせる。すると


「わあ!今度はペルーダだあ!」


「燃やされちまう!」


と騒然とするが


「燃えんのはオメーらの魂だけだ。安心しろ。五体満足で帰してやるから終わるまで付き合え!」


と言って演奏を続けた。


 こうしてモナコでの初日を終えたソニックだったが、オーディエンス達は一様にびびってしまい、2日目はキャンセルが相次ぎ中止となった。


「何なんだ?このチキン野郎共は?こんな弱い連中だけで国守れんのか?」


と思いながら、名も知らないルチャ・ドールの覆面を手にモナコを去った。その後、そのルチャ・ドールはメキシコで人気が出ない覆面レスラー「ボラ・デ・フエゴ」(スペイン語で火の玉)のものであり、この一件でモナコで有名なメキシコの代表的な覆面レスラーとなっていった。

モナコを調べた所、防犯カメラが多いという事に至り、覆面レスラーのマスクを被って演奏するという構想にしましたが、以前から覆面を被って何処かで演奏するという案は存在しており、このモナコで実現しました。

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